備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

カフェ・オ・レ・ボウル考

2007-11-10 10:01:04 | 陶芸
深夜、ひとり。工房でカフェ・オ・レを飲むことが増えた。

カフェ・オ・レ・ボウルは、その名の通りカフェ・オ・レを飲む為の器。
ホットミルクと濃いコーヒーを別々に作って、器に注いであわせる。

ざっくばらんなお茶や食事の時に飲むのがカフェ・オ・レ。デザートタイムで飲むものではないので、たっぷり沢山。エスプレッソのように香りとその余韻を愉しむタイプではない。

忙しい朝の時間にミルクパンから注ぎやすい様に、ボウルは丼鉢のごとく口径が広く安定良く作ってあるのが一般的。また、厚みがあるのも特徴。


神戸にいた頃、お茶以上ランチ以下の腹具合の時に、喫茶店で、カフェ・オ・レのセットを飲んでいた。今で言うところのカフェ。細い階段を上がったビルの二階。古びた店構えで、カタカタ鳴る木レンガの床、黒光りするカウンターの向こうに、蝶ネクタイにベストの初老のマスターがいた。クロワッサンとカフェ・オ・レがセット。

常連さんに外国人の学生さんもいて、お客さんが少ない時に、パンをビチャビチャに浸して食べていた。このときはクロワッサンではない。本来は子供じみた食べ方とのことで、大人はしない。時間がなく大急ぎで食べる時のやり方。日本人が、「今日はお茶漬けでいいや」というのに似ている。だから、余りおおっぴらに人前ではしない。でも長らく食べ慣れているのだろう。嬉しそうにやっていた。


さて、数年前からシアトル系カフェが進出して、カフェ・ラッテが席巻している。これは、小生の感覚から言うと薄すぎる。サラッとしたお茶の時間にはいいかも知れないが。でもカフェ・オ・レは、限りなくランチに近い腹具合でのお茶。物足りない。まっ、日本でいう「アメリカンコーヒー」のカフェ・オ・レ版か。


随分前に、イタリアンのシェフにスープやサラダの器を依頼された。ソーサー付で作ったのだけれど、その後それを『ソーサー付のカフェ・オ・レ・ボウル』として定番化した。これが便利。備前焼は熱湯を入れると熱過ぎる。両手で抱えて持つカフェ・オ・レ・ボウルとしては最初はツライ。なのでソーサー付。ちょっと冷めてきたら、両手を温めながら飲むという具合。

普通。カフェ・オ・レ・ボウルには、ソーサーは付かない。ソーサー付きは使い勝手を考えての事。もちろんお菓子のお皿にしてもいい感じ。(自画自賛。)

フランス映画を見ていると、最初は手袋をして途中から素手で飲んでいる。
これは当たり前で、カフェに外から入るとまだ体が寒い。体が温まったらコートや手袋を脱ぐ。だから最初は熱い器を手袋のままでボウルを抱える。理にかなった順序。実際にフランスで見たわけではないケド。

家で使うのに、イチイチ始めに手袋はしないので、ソーサー付きでないとツライ。



備前に来てから喫茶店にもカフェにも行く機会が激減した。
また極上のクロワッサンが食べたいな。

「触れなば散らん」という佇まいのクロワッサン。食べる歯先から焼けた皮がパリパリと鳴り……。バターの香りがフワーッとして……、カウンターに蒔いた様に散ったそれを、マスターが満面の笑みで拭いてくれるような……。
うーん悶絶。