備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

ゴマ擂りアイテム

2010-12-18 18:27:41 | 陶芸
食器にようやく取り掛かりました。と言っても人によって仕事の進め方が違うので、スケジュールのどの辺かは……。
まぁ、置いといて…… ┐(-。ー;)┌

食器を作っていると、自然と料理の事を考えています。
本日は『ゴマドレッシングを作る為のドレッシングボウル』です。ドレッシングを作った器ごとテーブルに出せるアイテムですな。
ゴマを擂って、醤油、酒、その他諸々を入れて混ぜて作るゴマドレッシングですが、まずはゴマが擂れる事が必要。となると『すり鉢』の登場です。なんと限定的な発想なんだか。


擂鉢は、かつては『備前擂鉢投げても割れぬ』と言われるぐらい堅牢丈夫な備前名産でしたが、今やすっかりそのお株を他へ譲っています。磁器やプラスチックなどの硬い素材で作られています。備前焼の擂鉢は古備前スタイルのモノしか見かけませんねぇ。
ウチで使っているのは常滑のかな?

備前焼の擂鉢は古くから作られていて、その形に時代変遷が見てとれます。
歴史好きや骨董好きの方々なら、土、櫛目の本数、口や底の作りなどが興味の対象となる部分です。「それらが漏れ無く組み合わさっているか?」が『古備前の擂鉢』の真贋の見極めとなります。
が、これらを逆手にとって、良く出来た古備前『写し』と古備前が混同される場合もありますので、愛陶家の皆様に置かれましてはお気をつけ下さいませ。「本物以上に本物らしいナンチャラ」っていうヤツね。

さておき、備前の擂鉢は、櫛目の無いモノから全面櫛目が入ったモノまでがあります。櫛目が多いほうが当然良く擂れます。櫛目が無いものは『捏ね鉢』としても使っていただろうし、時代が下がると現代の量産品にあるようなシンプルな形のモノになります。もっとも櫛目が無くとも少々は擂れます……。
現代と違って、冷蔵庫が無くやキッチンツールが少ない時代では、片口・ボウル状容器・貯蔵容器(樽・甕)などが登場する場面は多いように思われます。味噌、豆、雑穀などを扱う場面は今よりも多いでしょうし。(現代は購入段階で使い易いように調整されているものも多いので尚更)
そんなこんなで、備前擂鉢は全国流通するブランド品でした。


で、本日は、『本当に擂れる擂鉢』をロクロ挽き。
擂鉢で擂れるのは当り前と思いがちですが、これは現代の擂鉢が優秀な事に他ならない訳でして……。ウチのを見習って、櫛目を見込み全面に入れて、片口にして……。形は、シンプルと桃山風のバージョンを2種類。
重要なのは、他の素材の擂鉢並みにキチンと擂れる事。これ大事。

これでゴマをゴリゴリと。う~~ん、楽しみ。


黙々と作っていると……。

これをもう少し大きくして、チャンコ鍋などで各自の小鉢でゴマを擂って頂く『擂鉢機能付き呑水(とんすい)』もアリかなと……。
呑水の取っ手って何の為にあるのかイマイチ判然としないので、ちょっと可愛い取っ手にして……。

『ゴマ擂りアイテム』が増えそう……。


あぁ、そういえば、縁起を担ぐ人々の間では「すりばち」とは言わずに「あたりばち」と言いますねぇ。
「スルメはアタリメ」「スズリ箱はあたり箱」「梨はアリの実」「終わるはお開き」とか。
「するってぇと差し詰めスリッパなんぞはアタリッパ」とは三遊亭圓生でしたか。

ウチも『あたり鉢』と箱書きするかな。
(箱書きするのか?というツッコミは無しで……)