備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

思い在りて、思い無し

2008-08-05 10:55:20 | 陶芸
ここ最近は、ひたすら削っている作業が続いています。

既に作り始めているものの、ロクロを使っていません。手びねり&削り。作業量に対して仕上がり点数が極端に少ない製作方法です。
作業中はひたすらに同じ動作の繰り返しになるので、自然と自分の内側へと関心が向いていきます。

傍目から見ると一心不乱ですが、心の中は……。『無心』ではなく漠然と取り留めなく湧き上がってくる雑多な発想に、身を任せている感じです。ひとつのテーマを深く考える事もあるし、延々と連想をつなげている時もあります。『思い在りて、思い無し』の状態。

手を動かしながら、湧き上がる連想は、覚醒しながら夢を見ているような感覚で、脈絡の無さと非現実的な浮遊感が面白いものです。視点が自由になり、新しい何かが生まれては消えていきます。


……これは『可逆性』でありながらも、精神分裂病(今は統合失調症)に近い。または幼児がえりか。

アチラに行ってしまって、戻ってこれなくなると世間の尺度によって病名がつきます。現実世界に戻ってきて社会生活が送れるから健常の範囲。
そんな感じで、外側(社会)の『現実』と自分の中の『非現実』とを行き来しています。


こういう作業から見出された『心象』をモチーフに作品を生み出すパターンは、あらゆる分野で多いけれど、大事な事はそれを伝達・翻訳する技量とセンス。工芸では尚更の事。


だから、ヤキモノを作る小生は、ここでは書かないし、書けない。

今は目前のヤキモノを作る事が、自分への至上命令だ。

さぁ、今日も削ろう!(今日は何が去来するだろう?)