備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

ウチの青備前~器中に天は在るか?

2007-12-27 10:37:42 | 陶芸
今月上旬に焚いた窯の作品を磨いたり洗ったりしています。
今回は還元焼成でもあり、いつもの酸化焼成とは一味違った面白さがあります。

一般に鉄分が多いといわれる備前の粘土ですが、鉄分含有率は青磁釉のそれと似たような数値です。原土によって違いがあっても、その程度です。これと焼成条件との組み合わせで、青備前が発色します。
青磁の発色が難しいと聞きますが、青備前も安定させるとなると実に大変です。
今回も、薄青から黒まで様々でした。そのばらつきの許容範囲はイメージの問題。


登り窯では窯焚き一回あたりの『青備前』は、かなり少ない数です。専用の小窯を作ればもっと数を出す事は可能です。どちらが良い悪いではなく、何を目的とするかという意図の問題。今回の窯焚きでは、全般的な還元焼成なので窯出し数が限られています。


「青備前」というと大抵のお客様は、ツルツルと滑らかでキメ細かな仕上がりをイメージされています。これまで青備前(細工物・茶器)は、確かにそのような水簸(スイヒ)土を使って製作されています。緻密な硬質感で上品な雰囲気を持っています。

さて、小生作の『青備前』ですが、水簸土ではなく山土系の粘土での焼成です。
全体に星が出たように白い点が散っています。これが多すぎると、うるさくなる。その分量のコントロールがポイント。

ツルツルした青備前とは印象が異なり、ちょっと緩やかな表情。
家の晩酌には、緊張感を持って対峙する器は疲れる。だから、穏やかさが欲しい。でも、華やかさも欲しい。そんな『青』。

もっともTPO次第では、そういう緊張感ある器も必要。(実際、作っているし)。 今回の『青』のテーマは、それではないという事。


酒器ならば、モノトーンな空間に点在する『星』が酒に揺らぐという愉しみ。
『壷中在天』ならぬ『器中在天』となれば……。

また、山土系は使っていくうちにかなり変化していき、その変化は所有者だけのお楽しみになるという事。「これが俺の青備前」という風に育ててもらえたらなぁ。という期待もあります。


とりあえず、年内はちょっとづつ仕上げです。