いろんなやり方が入り乱れて、大層激動した歴史に残る大会だったと思う。多くのゲームを観たわけではないし、さしあたっての印象に過ぎないもの、恥掻きを承知で以下を皆さんの討論に供したい。叩き台があれば頭も異論も討論もまとめやすいだろうしという趣旨、意図である。決勝戦当日のこととて予断や憶測もいっぱい入った愚考だから、細かい点はとにかく大まかな傾向を討論していただこうという趣旨でもある。
①ここまで一時代をリードしてきたスペインやそのちょっと前までのイタリアなどの、実にあっけない一次リーグ早期敗退。これに入れ替わったようなコスタリカの万人が驚いたベスト8(正に驚異的台頭)は、スペインとは真逆なカウンターサッカーだった。確かに「組織」のヨーロッパが勝って「個人の総合的能力」に頼りがちな南米が敗れたと言えるが、組織と言ってもいろいろある(と、ここの前の討論で教えられた)。組織(的)とは、監督に命じられたやり方に全員が従うという意味だからだ。ドイツを典型とした全員攻撃全員守備も、攻守完全分業チームも、FW一人を守備から外すというやり方でさえ、それが監督戦略に忠実なチーム戦略であるならば、組織的ということになる。
②優勝したドイツと、一度も負けなかったオランダとは、全く違う組織である。前者は、バルサの系譜に入る厳しいコンパクト・プレスとつなぎのサッカー。後者は、守備と攻撃の分業をゲームごとに色々に使い分けたものだが、アルゼンチンもそういう分業組織だったと言える。日本と同じように、世界的個人技を誇るブラジルに組織が見えなかったと観るのは、僕だけではあるまい。コスタリカも非常に組織的であったとは言えるが、堅守速攻チームと言うほかには、どう表現したらよいのか。「このチームの新しい表現者よ出でよ」というところだ。
③いずれにしても、ボール奪取の競り合いが非常に激しく、これが相手よりも劣ったチームが負けた大会だったとは思う。多分近年になく得点が多い大会だったということも、これに関連しているはずだ。高低いずれにしてもコンパクトプレスの強さから、特にショート・カウンターの威力。これらは、バルサ、ドルト、バイエルンの戦略系譜研究に負うところが大きいはずだ。低く構えてさえ、DFラインは上げてそのラインコントロールに長けたチームでなければボール奪取はできにくくなったのではないか。台風の目コスタリカのいずれもフラットな2本のラインコントロールには、非常に鮮やかな印象を持った。あたかも、数年前のモウリーニョ・インテルCL優勝時のバルサ戦2本ラインのような
④この「高低コンパクト陣形から、好ボール奪取・長短カウンター」という戦い方に対して、攻守分業や5バックも含めて堅守チームがまた非常に目立った大会でもあった。オランダ、アルゼンチン、コスタリカ、フランス。詳しく観ないと分からないが、これら堅守チームのほとんどがベタ引きではなかったとは言えないだろうか。バルサ流つなぎ以降の今では、後ろ目で間延びした低DFライン守備というベタ引きでは対抗できなくなったはずなのである。
⑤中でも、優勝したドイツはちょっと別格だったと思う。ブラジル戦はもちろん、対アルゼンチン決勝戦、特にその前半などを筆頭に。最も肝心なゲーム結果である得失点差で観たらダントツだったのではないだろうか。この得失点ともに現れた強さが、バルサを踏襲したドルト、バイエルン流の、キーパーをも含めたコンパクトな全員攻撃全員守備戦略にあることは明らかであろう。かと言って、監督さえよければこれと違う戦い方でも結構強くなっていき、本番でも強豪と互角に戦えると示されたWC大会だったとも思う。ファンハール、サベーラ、ピント、ペケルマン、デシャン、ビルモッツ、フィッツフェルトなどなどのことだ。まるで、これからは戦略はいろいろだとしても時流を押さえた良い監督でなければ、いくら良い選手たちを集めてもよい成績は納められないWC大会になったとは言えないだろうか。近年のスペクタクルサッカーでは兄弟のようであった南ア大会の強豪スペインとオランダとの今の差が、そんなことを示していると思うのだがどうだろう。
追加です。なお、以下の拙稿もご参照願えれば嬉しい。
6/23 随筆 世界サッカーに異変
6/25、26、28 ザックジャパン(167~9) 全体的総括①~③
7/7 僕のベスト4、ベスト2
7/9 ブラジル戦、ドイツの勝因
①ここまで一時代をリードしてきたスペインやそのちょっと前までのイタリアなどの、実にあっけない一次リーグ早期敗退。これに入れ替わったようなコスタリカの万人が驚いたベスト8(正に驚異的台頭)は、スペインとは真逆なカウンターサッカーだった。確かに「組織」のヨーロッパが勝って「個人の総合的能力」に頼りがちな南米が敗れたと言えるが、組織と言ってもいろいろある(と、ここの前の討論で教えられた)。組織(的)とは、監督に命じられたやり方に全員が従うという意味だからだ。ドイツを典型とした全員攻撃全員守備も、攻守完全分業チームも、FW一人を守備から外すというやり方でさえ、それが監督戦略に忠実なチーム戦略であるならば、組織的ということになる。
②優勝したドイツと、一度も負けなかったオランダとは、全く違う組織である。前者は、バルサの系譜に入る厳しいコンパクト・プレスとつなぎのサッカー。後者は、守備と攻撃の分業をゲームごとに色々に使い分けたものだが、アルゼンチンもそういう分業組織だったと言える。日本と同じように、世界的個人技を誇るブラジルに組織が見えなかったと観るのは、僕だけではあるまい。コスタリカも非常に組織的であったとは言えるが、堅守速攻チームと言うほかには、どう表現したらよいのか。「このチームの新しい表現者よ出でよ」というところだ。
③いずれにしても、ボール奪取の競り合いが非常に激しく、これが相手よりも劣ったチームが負けた大会だったとは思う。多分近年になく得点が多い大会だったということも、これに関連しているはずだ。高低いずれにしてもコンパクトプレスの強さから、特にショート・カウンターの威力。これらは、バルサ、ドルト、バイエルンの戦略系譜研究に負うところが大きいはずだ。低く構えてさえ、DFラインは上げてそのラインコントロールに長けたチームでなければボール奪取はできにくくなったのではないか。台風の目コスタリカのいずれもフラットな2本のラインコントロールには、非常に鮮やかな印象を持った。あたかも、数年前のモウリーニョ・インテルCL優勝時のバルサ戦2本ラインのような
④この「高低コンパクト陣形から、好ボール奪取・長短カウンター」という戦い方に対して、攻守分業や5バックも含めて堅守チームがまた非常に目立った大会でもあった。オランダ、アルゼンチン、コスタリカ、フランス。詳しく観ないと分からないが、これら堅守チームのほとんどがベタ引きではなかったとは言えないだろうか。バルサ流つなぎ以降の今では、後ろ目で間延びした低DFライン守備というベタ引きでは対抗できなくなったはずなのである。
⑤中でも、優勝したドイツはちょっと別格だったと思う。ブラジル戦はもちろん、対アルゼンチン決勝戦、特にその前半などを筆頭に。最も肝心なゲーム結果である得失点差で観たらダントツだったのではないだろうか。この得失点ともに現れた強さが、バルサを踏襲したドルト、バイエルン流の、キーパーをも含めたコンパクトな全員攻撃全員守備戦略にあることは明らかであろう。かと言って、監督さえよければこれと違う戦い方でも結構強くなっていき、本番でも強豪と互角に戦えると示されたWC大会だったとも思う。ファンハール、サベーラ、ピント、ペケルマン、デシャン、ビルモッツ、フィッツフェルトなどなどのことだ。まるで、これからは戦略はいろいろだとしても時流を押さえた良い監督でなければ、いくら良い選手たちを集めてもよい成績は納められないWC大会になったとは言えないだろうか。近年のスペクタクルサッカーでは兄弟のようであった南ア大会の強豪スペインとオランダとの今の差が、そんなことを示していると思うのだがどうだろう。
追加です。なお、以下の拙稿もご参照願えれば嬉しい。
6/23 随筆 世界サッカーに異変
6/25、26、28 ザックジャパン(167~9) 全体的総括①~③
7/7 僕のベスト4、ベスト2
7/9 ブラジル戦、ドイツの勝因
「失点しても、取り返せばOK」てな、ザッケJ(と、その取り巻き)は、コンセプトから間違っていた。
予選のアルゼンチンやトーナメントのドイツも、コスタリカや予選のベルギーよりは失点が多いよ。
DFラインアップとは、失点のリスクも冒さないと得点も増えないということね。いつもカウンターを恐れてばかりのギリシャのようなチームは、得点力もないわけだ。
追加はこれ。
上で問題にしたコスタリカについて、ピント監督自身の「チーム特徴の表現」をば、別エントリーへのコメントから転載させていただく。7日のエントリー『「僕のベスト4」、「ベスト2」』に付けたものである。
『 ピントの言葉 (文科系)2014-07-06 20:43:05
コスタリカの監督ピントの言葉も、この大会の性格を現すようで、非常に示唆に富んでいる。同じくサッカーキングから取った。
なお、D組断トツビリを予想されたこのチームがベスト4を前にして1敗もせずに大会から消えるというのは、実に気の毒なことである。WCの歴史に残る驚異的な守備力を示したと思う。
『ピント監督は、同試合と今大会での快進撃を以下のように振り返った。
「苦しいが、満足している。ここに来たとき、誰も私たちを信じていなかった。だがこのワールドカップで、素晴らしい事を成し遂げてきた」
「このトーナメントから去らなければならないが、私たちが立ち向かった強豪たちに、負けることはなかった。この試合でオランダに匹敵すると思ったよ。改善すべきところはあるが、チームは素晴らしい成長を遂げている」
「組織的にプレーできること、良い戦術をもっていること、フットボールをプレーできることを証明できただろう。コスタリカサッカーのポジティブで堂々とした印象を残すことができた。選手達、そして国を誇りに思っている。選手たちは全力を尽くしてくれたよ」 』
前回までのW杯は、確固たる戦術を持っているチームが良い成績を収め、今回は○○な戦術を取ったチームが強かったなどと評価されていました。もちろん今大会も、このエントリーの③や④のように、強かった戦術や有効だった戦術が確かに有り、重要かと思います。
しかし今大会はその戦術以前に「臨機応変さ」が明暗を強く分けたという印象を持っています。相手チームやその出方によって、その時間の点差状況によって、またはコンディションによって器用に戦術をコントロールする術に長けたチームが躍進できた大会だったと。オランダなんて特にそうだったように思います。
エントリー内⑤にある「監督さえよければ」というのも、この「戦術の幅」を持たせられる監督だったかどうかというのが重要な要素になっているとも思います。
こういう視点で見ると、スペインや日本は戦術自体の悪さよりもその幅の狭さ故に結果が出せなかったとも言えるかもしれません。
前回南アフリカでも言われていましたが、ロングボールの精度の向上と活用は、かなりのものです。
ドイツやチリとか、GKから、前線までパスが通りますから。
高い位置からプレッシャーをかければ‥を楽々飛び越して、相手ゴール前で、1対1や2対2を作ってしまう。
引くべき時に、引いたディフェンスの代用品は、無いでしょう。
ここは匿名掲示板ではないことと、荒らし目的の名無しさんが頻繁に書き込んでいることから、名前を空白にして書かれた場合先入観で悪い印象を持たれてしまいます。
お互いに気持ちの良い対話を行うために、ハンドルネームを付けていただけないでしょうか。
本来エントリー主さんが書くことかもしれませんので、横やりで失礼しました。