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ルトガー・ブレグマン著「隷属なき道」の要約  文科系

2022年05月18日 20時14分37秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

 15日のここにごく簡単な要約をしたこの本の、もう少し詳しい要約をします。すべて著者の言葉をつなぎ合わせたものです。よろしく。

 

「現代では栄養失調に苦しむ人の数は、1990年に比べて3分の2以下になった。全世界で、1日2000キロカロリー未満で暮らす人の割合は、1965年には51パーセントだったが、2005年には3パーセントになった。
 中世の世界から見れば現代はユートピアそのものだ。しかし手に入れた世界以上に良い世界を思い描くことができないので、新たな夢を見ることができずにいる。実際、富裕国の人の大半は、子どもたちは親世代より悪い時代を生きることになると信じている」

「1930年、経済学者ケインズは『2030年には人々の労働時間は週15時間になる。・・・』と予言した」
ニクソンは、1969年には、すべての貧困家庭に無条件の収入を保証する法律を成立させようとしていた。例えば家族4人の貧困家庭には、年1600ドル(2016年の貨幣価値に換算すると約1万ドル)の収入を保障するものだった」(文科系注 ニクソンのこのニュースは経済学者なら誰でも知っている有名な話です。法制化あと一歩まで行っていました。)

「第二次世界大戦後も余暇は着実に増え続けたが、1980年代、労働時間の減少傾向が止まる。アメリカでは、むしろ労働時間が増え始めた。個人の労働時間に減少が見られた国々でも、家族単位では、ますます時間に追われるようになっていた」
「週の労働時間が世界で最も少ないオランダの市民でさえ、仕事や残業、介護、教育にかける比重が着実に増えてきた。1985年、これらの活動にかける時間は週に43・6時間だったが、2005年には48・6時間になった」
「そして不変と思われた労働対資本の比率が崩壊した。国民所得の3分の2が労働者の給与になるという状態から、現在の先進工業国では国の富のうち58パーセントしか、給与として労働者に支払われていない。世界が小さくなり、『勝者が独り勝ちする社会』がやってきた」

「1970年には、アメリカの株は平均5年も保持されていた。しかし40年後、平均的な保持期間はわずか5日になった。株の売買のたびに支払いが生じる取引税を課したら、社会的価値をほとんど生み出さない高頻度トレーダーは、瞬間的な株の売買によって儲けることはできなくなる」
「ハーバード大学で行われたある研究は、レーガン時代の減税が、最も優秀な頭脳を、教師や技術者から銀行員や会計士へと変えた、と指摘する。70年代には、ハーバードの男子学生で研究者の道へ進む人は、銀行業界へ進む人の二倍いた。20年後、そのバランスは逆転し、金融業界に就職する人は、研究職に進む人の1・5倍になった」
「結論を言えば、わたしたちはみな貧しくなった。銀行が1ドル儲けるごとに経済の連鎖のどこかで60セントが失われている計算になる。しかし、研究者が1ドル儲けると、5ドル以上の額が、経済に還元される。高額所得者に高い税金を課せば『才能ある個人を、負の外部性を持つ職業から、正の外部性を持つ職業に再配分』できる。税金を高くすれば、有益な仕事をする人が増える」

「テクノロジーの恩恵を手放したくないのであれば、残る選択肢はただ一つ、再分配だ。金銭、時間、課税、そしてロボットも再分配する。ベーシックインカム(金銭)と労働時間の短縮(時間)はその具体的な方法なのだ

「国境は差別をもたらす唯一最大の原因である。2009年、信用危機が勢いを増していたときにゴールドマン・サックスが従業員に支払ったボーナスは、世界で最も貧しい2億2400万人の収入の合計に等しかった。そして、地球で最も豊かなわずか62人が、35億人の総資産より多い富を所有しているのだ」

「アイデアは、どれほど途方もないものであっても、世界を変えてきたし、再び変えるだろう。『実際』、とケインズは記した。『アイデアのほかに世界を支配するものはほとんどない』」

 そして、最終章『「負け犬の社会主義者」が忘れていること』の冒頭が、こんな言葉でまとめられていました。
「この本で提案したのは、大きな路線変更だ。奴隷制度の廃止、女性の解放も、唱えられた当初は、正気の沙汰とは考えられていなかった。そうした『大きな政治』を左派は思い出し、右派も同調する変革へと進むべきだ」


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2 コメント

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社会主義がお嫌い? (文科系)
2022-05-21 02:58:43
 僕のエントリーは、マイクロソフト・ビーイングの検索面にほとんどすべて紹介されて来たが、このエントリーについてはそれがなかった。マイクロソフトかグーグルの検閲に引っかかったのだろう。社会主義思想の勧めがお気に喰わなかったのだろうか??
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株主利益最大化方針 (文科系)
2022-05-23 13:37:44
 ここに書かれた内容こそ、標記、株主利益最大化方針が「国境を越えて」世界を覆い尽くしてきたということだ。世界の物作りを株価資本主義、つまり銀行・ファンド資本主義が覆い尽くし、投資した会社の株価を高めるべく賃金がどんどん押し下げられ、全体として不安定労働者や若者失業者が増えて、株価に相当する供給の側が一般消費に相当する労働者よりも大きくなりすぎていて、これでは景気など悪くなるばかりだろう。株価はバブルを作るしかなくなって、住宅バブル、リーマンショックも必然なのである。

 こうして米中対立とは、米銀行が中国関連物作り諸国を食い尽くすかどうかという問題なのだとも言える。株価が本当に世界を覆い尽くせば、今度は「人間よりもロボットの方が・・」という問題さえ人類史の焦点になってくるのではないか。

 これらの問題は、日本だけ見ていては足をすくわれるだけである。だから、各国に流行っている右翼ポピュリズムは米銀行にとっては好都合な傾向と言えるのだ。自国だけ見ていて、アメリカの戦略を見ていないからである。
 さて、アメリカでさえ株主資本主義に反省が始まっているが、それは表面だけ。言わば世界相手の偽装なのだと思う。こういう偽装をしなければ、中国に負けるのだから・・・物作り国が外国資本を一定規制していれば、そして、そのもの作り諸国が全体として進んでいけば、アメリカは負ける。これは、米中どちらが好きかとか、どちらに賛成かとか言う問題ではない。
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