紹介を受けた病院で改めて生体検査をする。
「やはり悪性です」
その後の入院、手術、リハビリ等で約二ヶ月間を病院で過ごした。
多少の言語障害が残った。特に五十音の「ざ行」と「だ行」の発音が上手くできない。
唾液の量が少なくなった、そのため話し難い、食べ難い、その他いろいろ---。
最も困ったのは、今でもそうだが香辛料や刺激物(塩、山葵、生姜等の他酸っぱいもの)に敏感に反応し、頭や額に汗をかき始めるのが食事中に解る。
退院2ヵ月後、春の暖かい日に、日課にしていた散歩の途中、「寿司」の看板に出合い思わず店に飛び込み、長い間食べていないなと考えながら「にぎり」を注文した。
目の前に運ばれてくる間、久しぶりの「寿司」に胸もワクワクしていた。
一個目のトロを食べ終わるころ身体の変調に気が付いた。
噴出さんばかりの汗が額から流れ落ちてくる。
人間は何歳になっても初めて!と言う経験はするものだなとしみじみと思う。
下側の歯の一部のブリッジ(入れ歯)の調子がいま一つシックリいっていなかったから、キチンとした新しいものを作ろうと思い、事務所の二つ隣のビルの歯科医院に行った。
日を置いて二度行っても、なんだか歯茎の内側のむず痒い感触がなかなか取れず、
私は「藪医者!」って冗談を言い、医師は「念のためこの赤味がかった湿疹みたいなモノを調べましょう」。
医師の出身大学の病院を紹介され生体検査。
一週間後「悪性です、口腔底癌です」
すぐに精密検査をやりましょうと、医師は言う。仮に悪性腫瘍だったとしても当病院は専門チームがありますから---。
私には掛かりつけの病院があったから、この経緯の報告と今後の相談をした。
それは突然だった。