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(野葡萄/東慶寺)
紫苑、酔芙蓉、不如帰などの蕾が一斉に開き始めた。
境内の草花をボーと眺めていた。ここはいつも丁寧に手入れされている。東慶寺の参道の奥まった所にある切り株の椅子に座っていた。どの花からなのか、微かに薄い甘さの香りが漂ってくる。
現役を退いてから早8年。ストレスを全く感じない日々。雲・波や太陽や月を眺め、海を渡ってくる風を身に受け、また樹木・草花を観る---
今、こんな穏やかな心持で自然の営みだけを相手にする生活。これほどの素敵な時間が待っていようとは想像もつかなかった。
ふと開高健さんのエッセイ(だったと思う)が頭を過った。
正確にはその文章や言葉を記憶していないが、夢中で前へ!前へ!と突き進むだけで、振り返ることが無かった現役のある時、ハッと大事な何かを気付かされた言葉だった。
『パリの空港で一人の旅人が非常に疲れた表情でロビーの椅子に腰を下ろしている。空港の管理人が「どうされました?」
旅人は「身体は到着したのですが、心が到着しないのです。ここで心の到着を待っているのです」
僕らはあらゆる事に追われて、前に進んでいるけど、本当に心は付いてきているのだろうか。時にはトランクに腰を下ろして心の到着をお待ちになったら—』
今、理解できる。随分と長い月日を要したけど。
考えや行動とココロは完全に一つになった。