海側生活

「今さら」ではなく「今から」

ココロ変わり

2019年02月12日 | 鎌倉散策

(浄智寺/鎌倉)
目にした瞬間、ビクッと弾かれたように自分の気持ちまで奪われた。

毎月の勉強会に提出する作品が今月も定数に足りないと自覚しながら、何か感動を覚えるような瞬間に出会いたいと、北鎌倉界隈を歩いていた12月のある日。そこは見慣れたれた風景のはずだった。総門の奥に古びた石段が遥か先の方まで続いている。ここは鎌倉禅林の黄金時代に創建された浄智寺。仏殿の脇にそびえる高野槇は鎌倉随一の巨木と言われ、仏殿前の佰真や山門横には高々と枝を伸ばして春には見事な美しさを見せてくれる立彼岸桜、更に奥には白雲木があり、五月になると葉陰に白く群がり咲く花を観賞できる。裏庭には竹林や小径を辿って進むと岩壁をうがった深い横井戸や古い五輪塔群がある。洞門を抜けた洞窟には鎌倉七福神の一つに数えられる布袋尊も祀られている。一瞬小さな別天地に身を置いている想いに包まれる幽寂境である。

しかしその瞬間は見慣れた風景とは違った。今まで目にしたことが無いような色鮮やかな紅葉・黄葉が目に飛び込んできた。夢中で階段の途中まで歩を進め、この感動をどんな風に切り撮ろうかと考えた。太陽はほぼ正面に位置している。ファインダーを覗きながら自分の立つ位置を微妙に右に左に、また前に後ろにと構図を決めている間にも木漏れ日がファインダーに差し込んでくる。 

シャッターを押しながら想った。
秋と言う字の下に心と付けて愁と読ませるのは、誰がそうしたのか。心憎いほど良く考えたものだ。もの想う人は季節の移り変わりを敏感に感じ易いだろうし、中でも秋の気配が立ち込める様には、人一倍しみじみと感じるだろうと。また、人は季節や天候によって心が移ろうし、色や形によっても意思が変わったりする。人の言葉によっても気が変わるものだ。
この瞬間に紅葉・黄葉達の声が聞こえてくるようだった。「今日の、この時間が我々は一番煌めいています。しかし、これ以上は赤くは染まらない、染められないと決めました」。
久し振りに気持ちが昂る経験だった。

この時の一枚の写真が、20回目となる写真展(2/23~27)の案内状やポスターに採用された。鎌倉芸術館のギャラリーには120点を超える作品が展示される。

写真のタイトルは『ココロ変わり』と名付けた。



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1 コメント

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無常だから美しい (宮本靖夫)
2019-02-14 12:30:02

  錦秋や無常の時を肯へり    峨々

素敵な写真ですね。特に手前の二本の木が効いていますね。今は冬ですが、この写真にあわせて詠んでみました。どんなに美しい景色も、人も、物も全て移り変わる無常の中にある。そんな気持ちを詠んでみました。美しい景色の中に居れば居るほど、不安を感じるのが人間でしょうか。

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