逗子・鎌倉と言うと初夏から夏のイメージがあるがなぜだろう。
逗子・鎌倉は海に向かって開けているからだと思う。
古い歴史を秘めているくせにピカピカと輝いているのはこのせいだ。
関東で一番早い海開きをして早4週間が過ぎた海岸には、思い思いの海の家とカラフルなパラソルと数え切れない人達が小さな波の向こう側に、遠目にも鮮明に飛び込んで来る。一夏で逗子海岸が20万人、材木座海岸が40万人を超す人出があるそうだ。
等と考えながらモーターボートを走らせていると、漁師のブイが正面に近づいてきた。この辺りでの蛸漁は網籠で獲る。沈めた網籠を引き上げるためのロープの目印にブイを浮かべている。ところがブイと言ってもそれは一見ブイには見えない。今正面に近づいてくるのはペットボトルを二個結び合わせたものだ。知らない人が見たらとてもブイには見えない。しかしその下には海底の蛸網に繋がるロープが伸びている。
太陽がやや西に傾きかけている。
太陽はこの時期は富士山を通り越して遥か丹沢に沈むが、まだ落日の色を纏わぬ前の、白いままの光が逆行となって一体を輝かしている。それに向ってモーターボートを進めるとキラキラと光が目に飛び込んでくる。
やがて空は今日も夕焼けに染まるだろう。黄金色、銀鼠・朱色、紅色、茜色・藤色、杜若色-----そして墨。
思わず思う。これらを一枚ずつ鍋から湯葉を掬うみたいに剥がし取り、切り取った夕焼けで、絵が描けたらどんなにステキだろう。人(自分)の力では描ききれない様々な色々、自然が創り出す神々しいばかりの光の帯。
このままキラキラと輝く光を追って、どこまでも真っ直ぐモーターボートを走らせたい衝動を抑えて停止させ、そしてUターンした。
今日も海側生活を満喫し、ベッドに身体を横たえる時、心のキャンパスにどんな絵を描ききれるだろう。
明日もピカピカと輝いていたい。