都心での用事を午前中に済ませ、もっと早く足を運びたかった「マネ展」に出掛けた。
エドゥアール・マネは、後に印象派と呼ばれる画家達だけでなく、後世の芸術家達に決定的な影響を与えた、近代絵画史上もっとも重要な画家の一人と、中学生程度の知識しかなかった。
会場は丸の内の「三菱一号館美術館」だ。
地下鉄で最寄りの二重橋駅を降りて会場に向う道すがら、何か違う、他の美術館へ向う雰囲気と違うなと感じ始めた。ここは日本を代表するオフィス街の真ん中だ。高層ビル群を左右に見ながら着くと、周囲に比べビルは低く、造りは外観も内装も何となくレトロ調だ。
館内は、丸の内に勤務している人達ではない一般の人達で大変混雑している。
11室の大小の部屋には、マネの80点余りの油彩、素描、版画などが、展示されていた。
明快な色彩、立体感や遠近感の表現を抑えた平面的な処理などは、素人の自分にもそれまでの絵画との違いが明確に分かる。
マネの家族や友人達の作品等も展示され、又解説が加えられていて、マネが活動した背景が理解し易く構成されていた。
自分が眼にしたかった「笛を吹く少年」も見た。中でも「すみれの花をつけたベルト・モリゾ」は、男を吸い込む様な深い眼差しや唇、そして白い面長の顔に溢れるあどけなさに改めて見入ってしまった。そして気が付けば、この絵の前に30分以上も立ちすくしていた。
それにしても三菱と言う日本を代表する企業連合の底力を見せ付けられたような気がした。
普通の企業ならば当然、ここにはオフィスビルを建設し賃貸したと思う。
聞けば、『今から120年前に竣工した丸の内で最初のオフィスビルを忠実に復元した「三菱一号館」は、本格的な美術館として活用し、「文化芸術の中核施設」として丸の内地区の文化機能の強化を図っていきます。』との事。
トップを行く企業の誇りか、或いは宿命か又は時代が求めたのか、何れにせよビジネスの中締めをした自分にとって、久し振りに“企業とは”を考えさせられる時間でもあった。