海側生活

「今さら」ではなく「今から」

“避暑地”の想い

2012年08月27日 | 海側生活

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                 (都心の夜明け/病室から)

今日も酷暑!と天気予報がテレビから流れている。

お盆に入ってこの二週間、まるでどこかの避暑地に居るかの様な、全く暑さ知らずの環境に身を置いた。
室温は一日中26.5度に設定されていた。食事も三食共、定時にベッド側の小さなテーブルまで運ばれてくる。後片付けも必要が無い。また朝な夕なに二十歳代の女性が、優しそうな声で名前を呼びながら10回ぐらい部屋に入ってくる。

思えば手術から五年が経過した今年の初め頃から、皆と同じように活動し、食べ、飲み、寝てとごく普通の生活をしてきた。
身体内部にハンデがある事を全く意識しない生活をしてきた。自分の身体は消化器が普通ではなかったのだ。特にお酒には要注意だったのに---。

10階の病室の窓から外を見ると真っ白な入道雲がビル群の上を南から北へとユックリ流れている。しかし鴎やトンビの姿は見えない。鳴き声も聞こえてこない。
改めて海面がキラキラと光る海側生活に思いを馳せる。

検査の結果は驚くほど異常な数値が出ていた。瞬間考えた。もしこのままこれらの数値が正常に戻らなかったらと。
が、ほぼ正常に戻った。

今、改めて思う。
“その時”の覚悟は五年前に出来ていたが、その覚悟の地図の描き方が上手くなかったと。また変化した事も随分とある、
覚悟の地図を描き直したい。

これからは更に自分の「我がまま法則」に素直に従い、美味しいものを食べ、直感で全てを判断し、会いたい人に会い、行きたい所に行く、を徹底しよう。

この二週間は身体だけではなく、ココロまでまさに肝を冷やした時間だった。
人は繰り返し肝を冷やしながら、“その時”を迎えるのだろうか。

運命はいつも唐突に扉を叩くから。


甘い誘惑

2012年08月06日 | 思い出した

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                         (報国寺/鎌倉)

今日まで長い間、男として生きてきたが、思い起こせば、異性からのまたビジネス面でも「甘い」誘惑には負けそうになったこともあるが、スイーツの「甘さ」の誘惑に負ける事はなかった。

最近はHbA1cや血糖値がやや高い数値を表し、主治医からも栄養指導を受けている。「甘い」ものは、口にしないようにはしているが、それなのに何がキッカケだったのか、最近はその誘惑に負けることが多い。

友人が遊びに来た時の手土産が菓子だったりすると、困ったなと瞬間戸惑いながらも、ココロは喜び、口に運ぶ事を想像しニンマリとしている。

今日も午前中から汗が滲み出てくる。わざわざカキ氷を食べに出かけた。

その海の側の葉山の店は60年以上も続いている氷屋だと言う。看板も無いから、歩いて行っても通り過ぎてしまいそうな小さな店だ。エアコンも無い外気に接した小さな部屋の長椅子に座って順番を待つ。オジイちゃんとオバアちゃん2人で切り盛りしている。二人とも腰が曲がり、立ち仕事が辛そうだ。壁に背中をもたれ掛けながらユックリと注文をこなしている。少し耳も遠そうだ。

氷そのものが美味い、水道水の薬品の匂いや冷蔵庫の独特の臭さも無い。
シロップに練乳、それに小豆が器の底と氷の上にコンモリと乗っけてあれば言う事なし。器に高く盛られた氷を落とさないように上から少しずつソッとスプーンで掬う。

半分も食べないうちに、コメカミ辺りがジーンとしてくる、やがてその奥の頭の中がズキーンと痛くなる。そのズキーンが治まるまで間を置かないと次の氷を口に運ぶ事が出来ない。痛くなったら残せば良いものを、食べ残すことが出来ない。
『食べ物は残すな』との躾が子供の頃から、この身には刷り込まれているせいか。ズキーンが治まる間、ふと親の言葉が蘇った。今思えばただの貧乏性なのかも知れない---。

長椅子の隣で黙々と食べていた少年達の日焼けした額からは、光っていた汗も、すっかり引いてしまっていた。

こんな「甘さ」の誘惑なら毎日でも負けたい。


トビウオの先導

2012年08月02日 | 魚釣り・魚

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                            (葉山沖)

海原は開放感が抜群だ。

猛暑予報の中、陽が昇ると同時に出港し、釣りポイントの城ヶ島の南辺りに向かう。今日の狙いは鯵だ。

三浦半島に沿って船は南へ走る。風も無く波も無い。まるでどこか高原の広い湖を走っているように海面は穏やかだ。
気温の急激な上昇のためだろう、遠く半島には一面に靄が掛かり、浮いている孤島のようだ。逆光になった半島の海岸沿いに点在している建物も、まるでサン・マロ湾上に浮かぶ小島に築かれた修道院のモン・サン=ミシェルのような雰囲気でシルエットになり、靄の中に浮かび上がっている。遥か正面には小さく伊豆大島も目に入ってきた。
船の進行方向を眺めていると、時折トビウオが近づく船を導くかのように斜め前方に飛び去っていく。水を分けて20ノットで進む船体の先頭からは飛沫が左右にほとばしり、右側の飛沫には小さな虹が立ち、すぐ消えては、またすぐ立っている。まるで昼間の花火みたいだ。

日中になればこの海域はヨットやクルーザーで賑やかに彩られる。

潮の流れが極端に早い。150gの錘を付けているのに、横流しに仕掛けと一緒に潮の流れに持って行かれる。海底が掴み難い、電動リールの糸は船長が言う水深よりも50%以上も多く出て行く。やっと海底に着いてもすぐ錘は浮き上がってしまっているようだ。タナが取れない。

悪戦苦闘しながら、用意した二本の飲料水が空になる頃、黒い背びれを水面に出した二頭のイルカが遊泳しているかのようにユックリと船縁近くを湾内方向へ通って行った。

船長は言う。
『この時期、速い潮流が相模湾内に流れ込んでくる。この速い流れに乗って様々な魚達もやって来る。イナダやカツオ、更にワラサ、メジマグロなどが』と。

この流れを待っていた漁業関係者は多い。

ここには今日、狙った釣果がボウズだった自分がいる。
しかし心は十分に満たされ、生きている実感に包まれている。