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(彼岸花/宝戒寺)
小料理屋の戸口に“鍋物始めました”なんて張り紙がしてあると、真っ直ぐ家に向かうつもりが、つい暖簾をくぐり、ガラス戸を開け、カウンター席に座ることになる。
暑くも寒くもない。好きな魚や野菜を鍋から取り皿に取り、口に運ぶ。
今年もあと三か月。日が長かった時と、日が短くなった今も、一日は同じようにあっという間に過ぎてゆく。差し迫ったことは何もないのに、なぜだかあたふたと時間に追われている感覚が付いて回っている。
昼間のカメラ片手の散策を思い出す。
秋の寺の境内には、萩、藤袴、彼岸花、秋明菊やコスモスなどや、その傍らには名前すらまだ知らない小さな花々が様々な色して方々に咲き誇っている。春と違うのは赤、黒、茶色や青色の実が野イチゴみたいに彩を添えていることだ。
また小さな花々をしゃがみ込み見ると、なんだか切なさと可愛らしさが入り混ざり、小さな花でも満開の一瞬を永遠の美に変えている。それにしても今日の散策は、まるで絵本のページをめくるたびに楽しい世界に入って行くような幼い頃の感覚を持った。
鍋の具が空っぽになる頃、雑炊を作ってもらうよう頼んだ。
お腹が夕食にちょうどよくなった頃、昼間の歩き疲れを背中に感じた。
明日も又、長くなった自分の影を踏みながら進む方向には何があるのだろう。
静かな夜だ。