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出展作品「幕開け」/光明寺
「苦あれば楽あり」とか「浮世の苦楽は壁一重」とかいう無責任な諺があるが、人生がそんなに甘いもので無いことは、長く人間をやっていると誰だって思い知らされる。
不幸はいつもまとめてやってくる。
「検査の結果、悪性でした」と医師に告げられた瞬間、血の気が引き思考も混乱した九年前。手術前後の3か月間の病院生活から解放され、手術の後遺症と味覚障害は依然として強く残っていたものの、ホッとする時間も持てる日常生活を送り始めた。ところが、どうやら舌も回りほとんど普通に話せるようになった、手術から一年後に前とは種類の違う次の癌の発見があった。生活の全ての計画変更をせざるをえない突然の不幸な出来事だった。そして全てを覚悟した---。
相次ぐ不幸に見舞われて、もうこれ以上は悪くはならないだろう、なんて油断していると、どっこい本番はその後だったりする。どうやら幸福の天井が無い代わりに、不幸にも底は無いらしい。
その日は恒例の写真展の最終日だった。朝から冷たい風は吹いていたが晴れていた。自分も2点を出展していた。
会場に入る前に、ある小物を買うべく小町通りを歩いていたら、通りの端に佇んでいるオバァちゃんに呼び止められた。漬物屋さんの店の場所を知りたいらしい。指差しながらその店を説明したら、オバァちゃんは右手に抱えていたバッグを左手に持ち替え、バッグの中を覗き込み右手で何かを探している。「ハイ、オニィちゃん、ありがとう!」と光る紙に包まれた指先ぐらいの大きさのチョコレートを一個手渡された。街頭でモノを貰ったのは初めてだ。オバァちゃんのやや早歩きになった後ろ姿を見送りながら、何故だかホッコリと幸せな気持ちになった。
駅近くに戻りアジフライのランチを摂った。ビル内の10店ほどの店が春のイベントを偶々やっていた。なんと抽選で、鎌倉では有名な料理店のディナー券が当たった。何というラッキー。
写真展には1500人を超える来場者があった。プロの作品30点の他、愛好者の出展作品は100点。来場者に100点の内、好きな写真3点の人気投票をお願いした。
驚いた!自分の作品『幕開け』が第一位だった。
何故だか幸福も団体でやって来るらしい。
しかも突然に!