((チャンス到来/ベランダから)
パソコンに向かっている時や新聞を読む時は、好きなクラシック音楽をかけている。
音を感じると五感が途端に動き始める。目は小さな文字が見え難くなり、困る時もあるが、耳はいたって健康らしい。
七時に朝食を摂る為、六時に起床。起きたら先ず、寝ぼけ眼のまま、ベランダにチェアーを持ち出し、緑茶を飲みながら海を眺め、目を閉じる。海からは様々な音が聞こえてくる。岸壁に打ち寄せる強い波の音、小船の引き波が停泊している船にぶつかる優しい音が心地良い。海鳥達の賑やかな鳴き声が港中に響く、彼等は特に早朝は元気だ。その中に混じってひときわトーンが高いトンビの声に眠気を覚まされる。車の音や人の声は全く聞こえない。その日の天候により、それぞれの音の聞こえ方が違う。
早くも網を上げ港に戻ってくる船もある。エンジンの音は船によって皆違う。目を閉じると、とたんに耳がイキイキと働き始める。誰の船かもエンジンの響きで分かる。その船のエンジンの音だけに耳を澄ますと、今日の漁の収穫の程度が分かる。
やがて一段と多い大きな音を響かせ釣り船が出港する。この起床してからの30分間は、一日の始まりの自分だけの楽しみの時間でもある。
また電車の中では大抵は目を瞑り、耳に入ってくる人の話を聞いている。この時間も「耳の訓練」だ。人間観察にもちょうど良い。
穏やかな声、せっかちな声、甘えたような声、トゲトゲしい声-----。
「丸顔で太った人だろうナ」顔や姿を想像する。性格まで考えたりする。そっと目を開けると、まるっきり違っていることもあるが、ほぼ想像通りのこともある。
威張りたがっている人、弁解している人、気取っている人、あるいは職場の上下関係などは声だけですぐ分かる。生まれつき目が不自由な人は、もっと正確にそして微妙に聞き分けているに違いない。
目を瞑ってテレビを見ると、生活の一部になっているこの機械が、なんとも野蛮な音を流し続けていることに改めて気が付く。それにキャスターといわれる人達が、いかに下手な芝居をしているかもよく分かる。
それに政治討論会なども「耳の訓練」にピッタリだ。