![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/34/23/700216fd533907d32d774897d07d278e.jpg)
(建長寺にて)
今日も鶴丘八幡宮の境内には和服姿の女性がチラホラと目に付く。
境内には、鳥居や建物は魔よけの朱色が多く使われ、それらを囲む常緑樹を主にした木賊色(とくさいろ)の樹木、長い参道や本殿に上る階段は錫色(すずいろ)の石畳みが---
神社の雰囲気と環境には和服姿は良く似合う。正に一幅の絵画を見るように感じ、思わず足を留め魅入る瞬間がある。
真夏の浴衣姿も今年は多かった。
しかし、あの和服の色やデザインは何とかならないものなのか。自分のイメージでは和服姿は境内でも風景にシットリと溶け込み、近寄らないと女性の存在すら気が付かないような、もっとシックなものだろう!って思い込みがあった。
若い女たちが身に付けている和服は、白地にイエロー、ピンク、グリーン、ブルーなどのプリント柄だ。まるで熱帯魚が群れをなして参道や境内を回遊しているようだ。中には人力車に乗った熱帯魚もいる。レンタル着物だから貸す側にも借りる側にも限度があるのかもしれない。またアニメや漫画などの影響か、外国人の女も同じようなカラフルな和服を身に付けている。きっと彼女たちは、きっとこれらが日本の伝統的な文化や色だと思い込んでいるに違いない。浴衣を海外ドラマや映画などでガウン代わりとして使用されている様子は以前より多く見る。
そう言えば、自分もそんな色使いのパジャマを着ていたことがある。しかし、ここ数年の様々な災害時にパジャマ姿のまま外に出たシーンを度々テレビで見た。それ以来、自分の身に置き換えて、万が一の場合でも、さすがにこの色使いのパジャマで人前には出ていけないと思い着るのは止めた。
また、カメラやプリンターでも 色の名前を見ると「シアン」「マゼンタ」・・・とある。なんか馴染めない。この色は日本では何色というのだろう?藍と赤紫色?
日本固有の伝統的な色名称は千百余色あると言う。
四季の移ろいの中に美の心を生み出した様々な伝統色。日本では古来より暮らしの中に多彩な色合いを取り入れ、繊細な色の世界を見出し、その豊かな情趣を愛でてきた。それらは多くの絵画、染織物、陶芸、詩歌、文学として、生活や文化の中に深く息づいている。例えば、平安の女性達の聡明で繊細な感性が産み出した襲(かさね)装束の配色美、武家社会に見られる極彩色に満ちたきらびやかな彩、山紫水明との調和を求めた閑寂な風流、そして、侘び・寂びの世界などなど。
歴史の流れの中でつけられた和の色は、名前も美しく風雅だ。
しかし女たちが特別な時を除いて和服を着なくなった現代は、日本語と同じように、日本の色の名も滅びてしまうに違いない。
今朝の空気はいつになく冷たかった。
きっと、夕焼け雲が茜色に照り映えるに違いない。