手術直後5日間は集中治療室にいた。
今思い出しても例えようの無い何とも言えない感覚の5日間だった。
体の自由が利かないし節々が痛い、上手く口も利けなくて自分の意思が伝えられない、時間がわからない、いつも眠っているような、起きているようなボーとした感覚。
あれは幻聴だった。
どこからともなく音楽が流れてくる。微かだが男達の声だ、聞き覚えのある曲だ。
側に居るものに聞いた。
「聞こえてくるあの曲は何の曲だった?」
「---何にも音楽は聞こえません---」
「良く聞いてよ、微かに聞こえてくるでしょう!」
「-----」
幻覚もあった。
見上げる天井の格子が微かに左右に揺れている、ある時は上下に揺れる。
何度見ても動いている。どうして動いているのかと思わず聞いた事もあった。
4日目だったと思うが、ある検査のためベッドから起こされ車椅子に乗ろうとした時、意識を失い倒れた、二度も。
耳元で自分の名を呼ぶ医師の大きな声で我に返った。
周りには医師が2人と、看護師3人が自分をジッと見ていた。
覚悟しているとは言え、今まで経験の無い例えようの無い不安が頭を始めて過ぎった。