今日は大寒、朝から非常に寒かったです。これから実家に帰るわけですが、その前に思いっきり冷ややかな音楽を聴こうというわけで、本日はこれを――
■Chick Corea Piano Improvisations Vol.1 (ECM)
チック・コリアが1970年夏頃にマイルスのバンドを辞め、リターン・トゥ・フォーエバーを結成して大ブレイクするまでの間について、今日ではあまり取上げられることがありませんが、実はジャズ・マスコミではけっこう注目を集めていました。
その主なところはフリー派の黒人サックス奏者であるアンソニー・ブラクストンと組んだ過激なバンド「サークル」での活動や、そのリズム隊だったデイブ・ホランド(b)、バリー・アルトシュル(ds) とのトリオでの欧州巡業等々、それなりに積極的な演奏を聞かせていたのです。
もちろん当時製作されたアルバムはジャズ喫茶でも頻繁に鳴っていましたが、その中で特に人気があったのが、今回ご紹介したソロ・ピアノによる作品です。
これは1971年4月にノルウェーのオスロで吹き込まれたもので、北欧というイメージどおりの冷たい清々しさに満ちた仕上がりになっています。
A面に収められた6曲は小品ではありますが、いずれもチックのルーツであるラテン色、あるいはクラシックや現代音楽、そしてロックやフォークの感覚までもが自在に取り込まれた自由度の高い演奏が魅力です。中でも「Sometime Ago」は後のリターン・トゥ・フォーエバーでもバンド・バージョンとして再演する人気名曲です。
B面は「8つの絵の組曲」と題されているとおり、これも短い8曲が積み重ねられていますが、連続して聴いているうちに、何ともいえない静謐な気分になり、同時に不思議な熱気に包まれている自分に気づかされるという名演です。
フュージョン以前というか、1970年代のジャズ喫茶では、こうしたソロ・ピアノのブームがあり、チックの他にもビル・エバンス、マッコイ・タイナー、キース・ジャレット等々、人気ピアニストならば必須の科目が、それでした。逆に言えば、ソロ・ピアノ・アルバムを作れない者は失格という雰囲気さえあったのです。
で、そのブームの中で特に高い評価と人気を得ていたのが、このアルバムというわけです。ちなみにこれには「Vol.2」もありますが、そちらはフリーと現代音楽色が強いので純ジャズ・ファンには人気薄でした。ただし、あえてそういう作品を作ってしまうのが、如何にもチック・コリアという感じが、私にはするのです。
今日ではこんなアルバムがジャズ喫茶で鳴ることも滅多に無かろうと思いますが、ジャズ喫茶に通われている皆様ならば、1度はリクエストしてみて下さい。A面がオススメです。ちなみにB面は自宅向きでしょうね♪