OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

止められない楽しさ

2006-01-08 16:13:13 | Weblog

もう、やめろっ! と言われても、止めたくないほど雪ばっかりです。おまけに明日は緊急の仕事で、物凄い山奥に行かなければなりません。この雪で行けるのかなぁ……。

まあ、その話は明日ということで、本日はこれで楽しみます――

Cookin' ! / Zoot Sims (Fontana)

ズート・シムスは白人テナーサックスの雄として、スタン・ゲッツと人気&実力を二分する存在ですが、共にスイング時代の黒人テナー奏者のレスター・ヤングが生み出した歌心満点の流麗なスタイルを源にしていながら、ゲッツはクール派、ズートは和み派というところでしょうか。

しかもゲッツがジャズ史に屹立する名演・名盤を多く残しているのに対し、ズートは名演があってもジャズの歴史をどうのこうのという意義ある名盤は残していません。ただし、日常的にジャズファンが好む傑作盤は数多く発表しており、今回のアルバムもそのひとつです。

演奏メンバーはズート・シムス(ts) をリーダーに、スタン・トレイシー(p) 、ケニー・ナッパー(b)、ジャッキー・ドゥーガン(ds) という、所謂ワンホーン物です。ちなみにリズム隊は、この録音が行われたロンドンのライブハウス「ロニー・スコット・クラブ」を根城とするトリオで、つまりズートがテナー1本サラシに巻いて~、というか単身渡英して臨んだセッションというわけです。

録音年月日は1961年11月13~15日で、ズートのファンならば先刻ご承知のように、この時期のズートは絶好調で、名演を数多く残していた全盛期! ここでの演奏も悪いはずがありません。

まずA面はズートが十八番のスタンダード「Sompin' At The Savoy」でスタート、ノッケから安らぎに満ちた歌心満点の吹奏を聴かせます。特にソフトなテーマの処理からブレイクを挟んでふくよかにドライブしていくアドリブ・パートは見事ですし、いささか硬いノリのリズム隊をリードして行くがごときグルーヴは最高です。

続く2曲目もお馴染みのスタンダード「Love For Sale」ですが、定番のラテン・リズムの入った展開を逆手にとって、アップテンポで豪快にスイングしていくズートにはイギリスのファンも吃驚でしょう。リズム隊が完全に置き去りにされそうで、それゆえに懸命になっているところが、ジャズならではのスリルと興奮を呼びます。ただしズートはワルノリが過ぎたか、途中から投げやりなブローに突入するの減点だと思います。まあ、それもジャズですが……♪ それゆえに演奏はフェイドアウトして終わります。

しかしAラスの「Somekkbody Loves Me」は違います。この曲も有名スタンダードにしてズートの十八番とあって、いつも以上に豪快にドライブしていながら、ツボを外していません。リズム隊もかなりコナレタ演奏になっています。ただしスタン・トレイシーのピアノは、ここまで常にセロニアス・モンクの影響下にあるようなブツギレのタテノリばかりで残念……。まあ、それが持ち味なんでしょうが、なんとなく素直ではありませんねぇ。

B面に入っては、まず初っ端の「Gone With The Wind」が快演です。このソフトタッチで豪快にスイングするテーマ吹奏は、アンバランスのバランスというか、ミスマッチの極みを上手く昇華した名人芸♪ これがズートの魅力だと思います。もちろんアドリブ・パートも楽しい歌心に満ちています。リズム隊もズートのやり口が分かってきたようで、アメリカのジャズメンでは出せないような不思議なスイング感で楽しませてくれます。

そして続くは、お待ちかねの人気曲「枯葉」です。もちろん期待を裏切らないのがズートです。ミディアム・テンポで、こちらが望んでいるようにテーマを吹き、アドリブ・パートも美メロの嵐♪ テナーサックスという楽器の魅力であるサブ・トーンの囁き、つまり、ふすすすすす~、という響きもたっぷり聞かれますし、泣きのフレーズ、安らぎの溜息、魂の咆哮……、当にズート・シムスここにありという名演です。

こうしてアルバムは大団円、このクラブのオーナーである英国ジャズ界屈指のテナー奏者であるロニー・スコット、その盟友であるジミー・デューカー(tp) が加わってのブルース・ジャム「Desperation」が猛スピードで演じられます。もちろん全員熱演ですが、最後にソロをとるズートが実力と貫禄の見せつけるのは当然で、まったく4分に満たない演奏が惜しまれるカッコ良さです!

ということで、これは荒っぽい中にも楽しくスイングするズート・シムスを徹頭徹尾楽しめる作品です。巷では名盤扱いではありませんが、機会があれば聴いてみて下さいませ♪ ジャケ写からリンクしてあります。

コメント
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