OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

キャバレームード万歳♪

2006-01-22 17:18:43 | Weblog

昔の日活アクション映画に付物なのがキャバレーです。

その経営者は悪玉で、美人マダムはボスの囲われ者ですが、もちろん浮気をしたり、過去に好きな男がいて、子供とも生き別れになっているという設定がほとんどです。

そして、そこへ流れてくるのが、これも訳有りのグラマー・ダンサーで、もちろん店ではセクシーに踊ります♪

というように、私はそういう昭和30年代後半から40年代前半にかけてのキャバレーの雰囲気が大好きで、映画の中には当時の本物のジャズメンが登場したり、役者であってもそれなりのムードで楽器を操っています。

まあ、ジャズ全盛期の日本でも、大方の仕事はそんなもんだったのかも知れません。あまり真剣にモダンジャズに取り組んでいるとホサれるという実態は、やはり日活映画の「銀座の恋の物語」でジェリー藤尾が演じるピアニストがその見本でしょうか……。

ということで、本日はキャバレー・ムードのこの1枚を――

Diz Big Band / Dizzy Gillespie (Verve)

ディジー・ガレスピーはチャーリー・パーカーと共にモダンジャズを創出した偉大なる天才トランペッターですが、ビバップのエキセントリックな面とは裏腹に明るく楽しい演奏も心がけていた芸能人的なところがある人です。

それ故に当時から、ガチガチのジャズ・ファンからは軽く見られていたらしいのですが、音楽の素晴らしさを追求していた点では、誰よりも高く評価されるべき天才だと、私は思います。

そのガレスピーが常に奮闘していたのがビックバンド経営で、もちろん自分が主役としてド派手な演奏を目指していたと思われますが、雇い入れるメンバーは俊英揃いで、例えばその中からリー・モーガン(tp)、ベニー・ゴルソン(ts)、ウィントン・ケリー(p)、チャーリー・パーシップ(ds) 等々、多くの人気者が1950年代後半からのハードバップ期に大活躍していったのは、ご存知のとおりです。

ただしガレスピーのビックバンド自体は経営難が続き、何度かの結成・解散を繰返しており、その度に優れた演奏を残してはいるものの、現実は本当に厳しいというところです。このアルバムは恐らくレコーディング用に編成された臨時のビックバンドによるものでしょうが、その内容は素晴らしい限りです。

まずA面はディジー・ガレスピー(tp) を主役に、ウィントン・ケリー(p)、パーシー・ヒース(b)、ジミー・クロフォード(ds) というリズム隊、そしてホーン隊とストリングが加わった、当時としては進歩的なアレンジと下世話な部分が絶妙に混合された演奏になっています。ちなみにアレンジは鬼才ジョニー・リチャーズで、録音は1954年9月16日です。

収録4曲の内、特に私が好きなのは「O Solow」で、下世話なラテン・リズムとノーテンキな内にも一抹の哀愁が漂うガレスピーの歌、陽気なウィントン・ケリーの弾けるピアノ、ジョニー・リチャーズのふくよかなアレンジが渾然一体となった魅惑の演奏が聴かれます。これをバックに白木マリが踊りながら登場という、当に日活映画キャバレー・シーンを彷彿させるものがあるのですから、もう、たまりません。もちろんガレスピーのトランペットも激しく咆哮しています。

他にも優雅なストリングスに彩られた中でガレスピーのトランペットが優しく歌う「Roses Of Picardy」や「Silhouette」は、なんとなくハリウッドそのものという感じまでします。しかし、かなり野心的なアレンジが施された「Can You Recall ?」は、ガレスピーが緊張しすぎというか、賛否両論別れるところでしょうか……。

さてB面は、A面録音の前日である1954年9月15日の演奏が4曲、収録されていますが、こちらは常日頃からバンド・メンバーを中心としたビバップ・ビックバンドが熱く激しく燃えています。その中にはクインシー・ジョーンズ(tp)、J.J.ジョンソン(tb)、ハンク・モブレー(ts)、ラッキー・トンプソン(ts) という、後年の大スターも含まれていますが、主役はあくまでもガレスピーという展開になっています。ちなみにリズム隊はウェイド・レグ(p)、ルー・バニック(b)、チャーリー・パーシップ(ds) という当時のレギュラーで、アレンジはジャズからR&B、ダンス音楽全般を手広くこなすベテランのバスター・ハーディングが担当しています。

まず「Cool Eyes」はグルーヴィな雰囲気が横溢した迫力のハードバップで、厚みがあってキレ味鋭いバンドのリフに支えられて、初っ端からガレスピーがお得意のハイノート、急速フレーズを連発して熱く盛り上げていきます。途中のテナー・ソロはラッキー・トンプソン、トロンボーン・ソロはJ.J.ジョンソンと思われますが、そんなことに拘るよりも、とにかくド迫力のバンド・アンサンブルに圧倒されること必至のカッコイイ名演です。

続く「Confusion」はミディアムテンポで重厚にスイングするダンス曲で、これも白木マリが踊ってくれそうな雰囲気が満点です。バンド・アンサンブルとリズム隊のノリが本当に絶品なのです♪

そして「Pile Driver」は快適なハードバップ・ブルースで、ガレスピーもお得意の展開とあってA面でやや感じられた戸惑いが全くありません。お約束のフレーズを交えつつも荒っぽく突進するところは痛快です。ただ、少~しバンド・アンサンブルが遠慮気味なのが惜しまれます。

しかしオーラスの「Hob Nail Special」では、そのあたりも含めて全員が痛快なノリを披露しています。ただし演奏時間が短めなのが残念ですが……。

ということで、こういうのを聴くと、やっぱりジャズはフルバンだぁ! 思ったりします。まあ、このあたりは私の節操の無さが全開するところではありますが……。願わくばジャズ喫茶の大音量システムで聴いていただければ、その魅力は余すことなく堪能出来るという名盤だと思います。

ちなみにリクエストはB面がオススメですし、愕くなかれ、これが世界初CD化として現在、日本盤が復刻中ですよ♪ 例によってジャケ写からネタ元へリンクしてあります。

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする