OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

春よ、こいっ

2006-01-15 17:55:58 | Weblog

今日は春のような暖かさでしたね。う~ん、今度は雪崩が心配でもありますが、赴任地に戻る道すがらでは大丈夫でした。春よこいっ、という気分では、この1枚でしょう――

Chet Baker Ouarter (Pacific Jazz)

ジャズはあくまでも個人芸ですが、やはり気の合う相棒がいた方が良い仕事が出来るのは、一般社会と同じだと思います。

今回の主役、チェット・ベイカーは1950年代に一番人気の白人トランペッターでしたが、その位置をキープ出来たのも、もちろん自分の実力ゆえの事ではありますが、スターダムにのし上がったのはジェリー・マリガン(bs) と組んでいた素晴らしいカルテットでの大ブレイク、そしてその後、独立してからラス・フリーマン(p) を参謀格にして活動した時期という、つまり素晴らしい相方の存在が無視出来ません。

このアルバムはそのラス・フリーマンと組んで作られた作品で、LP盤ではありますが、10インチ・サイズ=約25センチの直径をもつ、現代の30センチ盤にくらべて、すこし小さい形態になっています。当然、収録時間も短いわけですが、今となっては、それも含めてマニア心を刺激するブツになっています。

そしてジャケットも内容も素晴らしいのですから、たまりません。

メンバーはチェット・ベイカー(tp) とラス・フリーマン(p) を中心に、ボブ・ホイットロック(b)&ボビー・ホワイト(ds)、カーソン・スミス(b)&ラリー・バンカー(ds) というリズム隊の組み合わせが曲によって変わります。ちなみに録音は1953年7月です。

まずA面は本当にロマンチックな「Isn't It Romantic」でスタート、やさしく素直にテーマを吹奏するチェット・ベイカーに続いてラス・フリーマンが正統派ビバップ・ピアノを聴かせますが、エキセントリックでは無く、歌心を存分に発揮しています。もちろんチェット・ベイカーのアドリブパートも素敵ですが、やや危ない場面があるのはご愛嬌です♪

2曲目はややテンポアップし、ラテンリズムも交えた「Maid In Mexico」が軽快に演じられます。そしてアドリブ・パートでは強靭な4ビートにチェンジしたバンド全員が楽しくスイングしていく仕上がりです。

しかし3曲目の有名スタンダート「Imagination」は、スローな展開の中に甘さと厳しさを巧に同居させたチェット・ベイカーの一人舞台の、と言いたいところですが、実はバックをつけるラス・フリーマンのピアノが絶妙です。それがあってこそ、ハスキーに歌心を展開させていくチェット・ベイカーが輝いているのでした。素晴らしい……♪

そしてA面ラストは、溌剌とした「This Time The Dream's On Me」で、爽やかに疾走するチェット・ベイカーに対し、テンションの高いプレイで応戦するラス・フリーマンが、続く2人の掛け合いをエキサイトさせていきます。これがジャズですねっ♪

ちなみにここまでの演奏はすべて3分以内、つまりSP企画のレコーディングですが、ジャズの素晴らしさは、演奏時間の長さに比例していないという実例です。

でB面は白人ハードバップの先駆け的な「The Lamp Is Low」です。何しろテーマが終わってアドリブ・パートに入るやいなや、リズム隊が突如として躍動し、チェット・ベイカーがノセられて行きますし、ラス・フリーマンのピアノ・ソロも終りが見つからず、途中からチェット・ベイカーがテーマを吹奏して絡んでいくあたりは、スリル満点です。もっともこれは、最初からアレンジされた部分かもしれませんが、全く上手いです♪

続く「Russ Job」はタイトルどおり、ラス・フリーマンのオリジナルが軽快に演じられますが、これは多分、有名スタンダードの「All The Things You Are」の改作かと思われます。それにしても、この演奏の素晴らしさはどうでしょう! 歌心とハードなジャズ魂を両立させるチェット・ベイカー、そしてこれもビバップの真髄をスマートに解釈したラス・フリーマンのセンスが一体となった名演だと思います。

それは3曲目の「Easy To Love」でも同様に、強烈にスイングしていながら愁いを含んだチェット・ベイカーが最高です♪ 対するラス・フリーマンもややエキセントリックなフレーズを繰り出して応戦していますし、これも素晴らしい名演になっています。ラスト・テーマを変奏していくあたりも素敵です。

オーラスは、またまたラス・フリーマンのオリジナル「Batter Up」で、これが迫力のハードバップになっています。というか、あくまで白人的なスマートさがあってのハードバップなんですが、チェット・ベイカーとラス・フリーマンのユニゾンと絡みで演奏されるテーマのスピード感と意外に粘るリズム隊の妙味が、まず、あって、アドリブ・パートの自由度の高さがジャズの醍醐味に直結していくのです。まさにこの時期のウエストコースト・ジャズのひとつの高みに達している演奏だと思います。

ということで、これは大コレクターズ・アイテムにして必聴の名演集です。これらの演奏は、後に様々なタイトルの30センチLP盤に纏められ、また今日でもCD化されていると思われますので、機会があればぜひとも聴いていただきとうございます。

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