OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

疲れたっていいじゃないか

2006-01-06 17:24:22 | Weblog

こんな雪なのに新年会だとぉ~! おまえら、よく疲れないねぇ……。

ということで、疲れない人には疲れるアルバムを――

Another Day / Oscar Peterson (MPS)

突進力では誰にも負けないピアニストがオスカー・ピーターソンでしょう。驚異のテクニックに支えられた物凄いドライブ感と天性のスイング魂! それが思う存分発揮されたのが、このアルバムです。

ただし、それゆえに聴きとおすと、疲れます!

まずA面ド頭の「Blues For Martha」からガンガン飛ばしてます。イントロの高速両手同時弾きから強引なテーマの弾奏、そして硬質なブルース魂の開陳と続くあたりで、聴いているこちらは圧倒されます。

このアルバムでの共演メンバーはジョージ・ムラツ(b) とレイ・プライス(ds) という、どちらかと言えば平素は繊細派の2人ですが、ここではヒーターソンの豪快極まりないノリに振り回される格好で爆発しています。

とにかく破壊力満点の演奏!

それは2曲目の「Greensleeves」でも変わりなく、お馴染みの愛らしいメロディがグリグリと陵辱されていく感じです。実際、ピーターソンはかなり突っ込んだフレーズを多用していますし、また、それと対照的に繊細な美メロも散りばめていきますが、それが入れたり出したり状態で……♪

そして3曲目の「I'm Old Fashioned」はピーターソン・トリオではお約束のメカニカルなバカノリ大会♪ こういう演奏はアドリブの華麗さばかりではなく、実は緻密なアレンジがしてあるらしく、それはピーターソン自身が己のテクニックを基に作り出しているものなので、このトリオに加わる共演者は物凄いテクニックと音楽性を要求されるわけです。ここではジョージ・ムラツの流れを損なわないベースソロと隙間を完璧に埋めながらスイングしていくレイ・プライスのドラムスに、それが証明されています。

そのあたりはA面ラストの「All The Things You Are」におけるボサノバ・アレンジにも顕著で、このアルバムの中では比較的安らぎのある演奏が、三位一体で仕上げられていく様が楽しめます。

ところがB面に入ると、またまた強烈なスイング大会! 有名スタンダードの「Too Close For Comfort」が猛烈なドライブ感を伴って演奏されます。それは全く息つく暇もないほどのアドリブとリズムの洪水に満たされており、聴いていて完全に疲れます。

ピーターソンもピアノを弾きつつ、アドリブ・メロディを口ずさむ人ですが、全くそのとおりに指が動いているという物凄さですし、レイ・プライスのヤケクソ気味のドラムスも笑えます。あぁ、このトリオは何処へ向かっているのでしょうか……。

その答えが、続く「The Jamfs Are Coming」です。曲調はゴスペル色が濃厚ですから、ゆったりしたタメ、ここぞで爆発するグリッサンド、さらに破壊的なブロック・コード弾きというピーターソンの至芸がたっぷり満喫出来ますし、もちろん随所に超高速フレーズが強引に挿入されていきます。

脇を固めるジョージ・ムラツ&レイ・プライスも、そのあたりを汲んで健闘している様が、何ともジャズそのものだと思います。

そしてB面3曲目は、お待ちかねのスロー物という「It Never Entered My Mind」が、流麗に演じられますが、もちろんピーターソンのことですから、ダイナミックなノリと繊細極まりないピアニズムがたっぷりです♪ ただし後半から入るベースとドラムスは、やや戸惑い気味なのが残念です。

こうして辿り着いたオーラスの「Carolina Shout」は、再び明るく激しい大スイングのブルースです。この曲は古いジャズというか、ブギウギがオリジナルなので、ピーターソンもそのあたりのノリとフレーズを随所に入れ込んで自らが楽しんでいる雰囲気なのが素敵です。う~ん、それにしてもピーターソンの恐ろしさ! 全く疲れを知らないこの演奏スタイルは人間国宝でしょう。

ちなみに、この録音は1970年11月とされており、おそらくピーターソンが最も突進していた時期だと思います。ですから、聴いていて疲れること、請け合いです。体調が良い時に聴くことをオススメ致します。

コメント
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