OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

定番外

2006-01-02 17:21:02 | Weblog

昨日、今日と、雪国にしては穏やかな天気でした。お正月に映画はつきものということで、映画館にも行きました。後は炬燵で食っちゃ寝大会が定番でしょうか?

ということで、何の脈絡も無いのが本日の1枚です――

Grant Green First Session (Blue Note)

ジャズは20世紀のアメリカが産み落とした偉大な文化ですが、これは21世紀になって発表された、未発表録音集です。

主役のグラント・グリーンは1960年代のブルーノート・レーベルではバリバリの看板だった黒人ギタリストで、主に単音弾きで紡ぎ出されるハードで黒っぽいフィーリングとメロウでソウルフルな歌心が人気の秘密でした。

その前のキャリアは、主にアメリカ中西部あたりのR&Bバンドを主要な活動範囲としていたようですが、やはり実力があったのでしょう、1960年秋頃にニューヨークに出てくると忽ちブルーノートと契約が成立しています。ちなみにこれは、同じブルーノートの人気アルトサックス奏者であるルー・ドナルドソンの推薦だったとか、おそらく当時は自己のバンドに入れていたものと思われます。

で、最初に発売されたのが「Grant's First Stand」というアルバムでしたが、実はそれ以前に行われていたリーダー・セッションが、この音源です。

メンバーはグラント・グリーン(g) 以下、ウィントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) という今では夢の組合せ♪ 録音は1960年11月16日となっています。

しかし、実はこれが???の連続です。

まず1曲目の「He's A Real Gone Guy」は、ハードバップではお約束のリフを流用したゴスペル調の演奏ですが、リズム隊の煽りも虚しく、グラント・グリーンの意気ごみが空回りというか、全く調子が出ていません。特にケリーのソロが終わってからのパートでは、ほとんどどうやって弾いていいのか自問自答しているかのようです。

2曲はオリジナルのスローブルース「Seepin'」ですが、本来得意なはずのこうした場面でも、自分を見失ったグラント・グリーンには???です。しかしそれをカバーしようと奮闘するリズム隊は流石です。特にポール・チェンバースは絶妙のサポート♪ ただしここではケリーがちょっと……。

しかし3曲目の「Just Friend」は最初から軽快な雰囲気で良くスイングしています。もっともこれはリズム隊の話で、グラント・グリーンはそれについていくのがやっという、本末転倒なノリが面白いところです。しかし、ここで聴かれるアタックの強いピッキングによる流麗なフレーズ展開は、ちょっと真似出来ないものがありますし、もちろんケリーは◎

4曲目の「Grant's First Stand」は実質的なデビュー盤のタイトルにもなったグラント・グリーンのオリジナルで、ここでの初演もなかなか魅力的です。特にリズム隊の躍動感は最高で、演奏を楽しんでいるのでしょう。縺れ気味のグラント・グリーンではありますが、それ故に憎めない仕上がりになっています。3分48秒目からは、ようやく十八番の針飛び連続フレーズが飛び出します。やはりこれが出ないとグラント・グリーンとは言えません! 後で煽るフィリー・ジョーも絶妙で、特にケリーのピアノソロのバックでの尻叩きがたまりません♪

こうしてようやく調子が出てきたセッションの最後が、快適なテンポで演じられるブルースの「Sonnymoon For Two」です。ただしここに来ても、グラント・グリーンには後年のような執拗なノリが感じられません。バックのリズム隊に助けられている雰囲気がミエミエです。それがために堪忍袋の緒がブチ切れ状態のフィリー・ジョーの投げやりなドラミングが、かえって魅力的になっているほどです。もちろんケリーも右倣えというか、怒りのコード弾きさえやる始末です。まあ、そういうところがジャズの面白いところですね♪

ということで、これはリアルタイムで出せなかった理由が誰でも分かるセッションです。恐らくグラント・グリーンには何らかの事情があって本領発揮出来なかったのでしょう。なにしろ相手が、当時のマイルス・デイビスのバンドで活躍していた超一流のリズム隊ですから、ガチガチに緊張でもしていたのでしょうか?

そのあたりを汲んでのことでしょうか、結局、グラント・グリーンのデビュー盤のセッションは仕切りなおしとなり、それは恐らく常に演奏していたような、オルガンとドラムスの組合せになっています。

で、このアルバムには、その屈辱からおよそ1年後にあたり1961年10月27日のセッションから未発表だった曲が収められています。メンバーはソニー・クラーク、ブッチ・ウォーレン、ビリー・ヒギンスというリズム隊をバックしており、演奏するのはモダンジャズの定番曲「Woody 'n' You」で、それを2テイクやっていますが、これが快調そのもの! とても残り物とは思えないほどです。

ということで、万人にはオススメ出来ない作品ですが、まあ、ジャズの奥深いところを楽しむには最適なブツです。度々引き合いに出しているグラント・グリーンのデビュー盤「Grant's First Stand」と比較する、ちょっとイヤラシイ楽しみ方もありますね。

コメント
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