OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

熱くて安らぐこの1枚

2006-01-26 16:22:09 | Weblog

今日は地吹雪の中で車のキーを落としてしまい、雪の中を這いずりまわること15分近く……、ようやく発見して事なきを得ましたが、ウルトラセブンの中のエピソード「零下140℃の対決」でモロボシダンがウルトラアイを雪の中に落として探し回る気持ち、分かりましたよ……。

ということで、本日は温かく、熱いコルトレーンを――

Settin' The Pace / John Coltrane (Prestige)

私がコルトレーンのウラ名盤と信じて疑わないのが、このアルバムです。

メンバーはレッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、アート・テイラー(ds) というお馴染みの面々をバックに従えたコルトレーンのワン・ホーン編成で、録音は1958年3月26日! ということは、この直後にマイルス・デイビスの名盤「マイルストーンズ(Sony)」が吹き込まれ、さらに1年後には、畢生の大傑作「ジャスアント・ステップス(Atlantic)」が製作されるという、当に上昇期の勢いに突き動かされていた時期を捉えているわけです。

しかもその内容には、けっして前衛的なところが無く、スタンダードを材料にハードバップの枠組みの中でやる事を徹底してやった雰囲気なのです。もっともこれは今の耳で聴いての話で、当時はこれでも相当に破天荒なところがあったと思われます。

その所為かA面1曲目には意表をついてスローナンバーが収録されており、その「I See Your Face Before Me」が非常に素晴らしい出来! ダークな音色でソフトにテーマを吹奏するコルトレーンは、時折「ふすすすすす~」というテナーサックスの魅力ここにありという必殺のサブトーンを織り交ぜてアドリブパートに滑り込んでいくのです。そして、もちろんそこでも元メロディを上手く活かしたコルトレーン流の泣きのフレーズをたっぷりと聞かせてくれるのです。

また続くレッド・ガーランドが最初からブロックコード弾きで、これまたソフトな情感を表現していきます。ただしポール・チェンバースのアルコ弾きは??? しかしその地獄があるからこそ、ラストテーマを吹奏するコルトレーンが一層輝くという本末転倒な輝きが素晴らしいわけですが♪ ちなみに終わり方はマイルス・デイビスのバンドでは定番のもっていき方で、これはガーランド自身も参加したマイルスのリーダー盤「ザ・ミュージングス(Prestige)」の同曲でも聞かれますので比較するのも一興です。

2曲目の「If There Is Someone Lovelier Than You」はあまり馴染みのないスタンダード曲ですが、ミディアムテンポで演じられるこれが、全くコルトレーンのアドリブフレーズを活かすためにあるような曲調! いろいろな後日談によれば、プレスティッジのコルトレーンのレコーディングではレッド・ガーランドが曲目を決めていたらしいので、おそらくこれもそのひとつだろうと思います。もちろん出来は最高♪ 快適なテンポの中で圧巻のブレイクと如何にもコルトレーンらしいウネウネとした高速フレーズ、さらにリズム隊とのコンビネーションで生み出されるハードバップのグルーヴが渦巻いています。

B面は幾何学的なテーマが印象的なジャッキー・マクリーン(as) の有名オリジナル「Little Melonae」でスタートしますが、前半はリズム隊の見せ場になっており、珍しくレッド・ガーランドがモンク風のフレーズを出したり、またポール・チェンバースも意図的に変態ウォーキングを聞かせていますので、けっこうイライラさせられます。

しかしお待ちかねのコルトレーンが登場すると、それが一転、暗黒面で炸裂するフォースの威力というか、屹立するダースベイダーのような迫力のアドリブが展開されていくのです。もちろんそれは所謂シーツ・オブ・サウンドと呼ばれる音の洪水! あまりの凄さにレッド・ガーランドは途中でピアノ伴奏を止めてしまうところもあります。

そしてオーラスは急速テンポの「Rise 'n' Shine」です♪ なにしろ、いきなりテーマを吹奏したコルトレーンが、全く自分勝手にアドリブに突入していくスピード感が圧巻です。もちろんそれに動じることのないリズム隊も流石で、特にアート・テイラーは独自のシンバルの美学を聴かせます。う~ん、それにしてもコルトレーン! 実は久々に聴きましたが、そのアドリブフレーズがスケール練習になっていないのは驚異的です。ちゃんと自分なりの歌心を、吹きまくるフレーズに託しているのですねぇ~♪

こうして演奏は大団円でコルトレーン対リズム隊という対決の構図を提示して、大興奮のうちに終了しますが、そのわりと整合性のある展開がお約束になっておらずにスリル満点というところが、勢いというものでしょうか。

という4曲が収められたこのアルバムは、発売されたのが録音から3年以上を経た1961年末だったと言われています。これはもちろんプレスティッジお得意の商方で、その頃にはジャズ界をリードする存在になっていたコルトレーンの人気に便乗したというわけですが、このアルバムにはすでに当時の勢いの端緒が記録されているのですから、批判の対象にはならないはずだと思います。

闇雲にハードでは無いし、かと言って事なかれの製作でもないので、ジャズ喫茶はもちろん家庭でも楽しめる、これは不朽の名盤ではないでしょうか。

あぁ、今日はコーヒーが旨い♪

コメント
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