OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

やるしか、無い!

2006-01-01 17:04:30 | Weblog

謹賀新年、とにかく今年も続けますよ。まずはジャズらしいジャズということで――

The Moontrane / Woody Shaw (Muse)

何時ごろからでしょう、一生懸命な人を見て笑う風潮が出来たのは……?

はっきり言って、悲しい行いですが、そうしないと格好がつかない時と場所があるのも、また事実です……。

しかしそういうところに真っ向からぶつかっていったのが、ウディ・ショウという黒人トランペッターです。この人は1960年代後半から頭角を現し、そのスタイルは熱血・直球勝負のバリバリ王道ジャズで、当時、新主流派と呼ばれたモード~フリースタイルを基調とした演奏を得意としていました。

その姿勢は1970年代に入っても変わらず、折りしもジャズロック~フュージョンスタイルが流行していたその時期にも、自己の信念を揺るがすことがありませんでした。つまり世渡りが下手な頑固者で、当然、経済的にも恵まれていたとはいえないようです。

しかし実はジャズ者は、そういうウディ・ショウが大好きで、一般的には売れなくとも、ジャズ喫茶の人気盤は多数作っており、このアルバムはそうした1枚です。

録音は1974年12月、メンバーはウディ・ショウ(tp)、スティーブ・ターレー(tb)、エイゾー・ローレンス(ts,ss)、アラン・ガムス(p)、セシル・マクビー(b)、バスター・ウイリアムス(b)、ビクター・ルイズ(ds)、ギレルミ・フランコ(per)、トニー・ウォーターズ(per) が、曲によって入れ替われながら参加しており、もちろん全員が、当時メキメキと売り出し中だった若手・中堅の猛者達です。

まずA面1曲目は、これが出ないと収まらないというウディ・ショウ十八番のオリジナル「The Moontrane」で、カッコ良いテーマの新鮮な響きが何とも魅力的♪ それがラテンリズムとロックのビートを内包していながら、バリバリの4ビートで演奏されるのですから、もう最高です。初めて聴いた瞬間から完全に虜になること請け合いです。

もちろんアドリブパートも強烈で、いきなりウディ・ショウの熱血トランペットが全開! バックをつけるアラン・ガムスのピアノのコードも、如何にも新主流派という響きで、こういう雰囲気がモロに昭和40年代後半のジャズ喫茶です。そして続くエイゾー・ローレンスは、少しいイナタイというかコルトレーンへの憧れを吐露したソロに終始します。さらに素晴らしいのがアラン・ガムスのピアノソロで、基本はマッコイ・タイナーなんですが、和声の積み重ねにビル・エバンスが入っていたりして、グッときます。またリズム隊のビクター・ルイズとバスター・ウイリアムスも熱演という、完璧にジャズ者の心を鷲掴みにする演奏です。

その勢いは2曲目の「Are They Only Dreams」に受け継がれ、ボサノバ風の穏やか進行の裏側で熱い熱気が蠢きます。思えばこういう曲を聴きながら、心地良く半分居眠り出来たのが、当時のジャズ喫茶でした。フランコ&ウォーターズ組のパーカッションが絶妙のアクセントになっていますし、バスター・ウイリアムスのベースが繊細で良い仕事をしています。

その夢現をぶち破ってくれるのがA面ラストの「Tapscott's Blues」で、ノッケから全員が怒りに満ちた全力疾走の演奏を展開しています。特にビクター・ルイズのドラムスは全篇でソロを演じているからのような大爆発状態! それに煽られてエイゾー・ローレンスが苦しそうにもがきながら心情吐露すれば、ウディ・ショウも最初っから魂の雄たけび! 続くスティーブ・ターレーも地底怪獣のように蠢きます。う~ん、それにしてもビクター・ルイズ! こんなに叩いていいのか!? カッコ良いバックのリフもぶっ飛ぶというド迫力です。そんな中で冷静なのが、ここでベースを担当しているセシル・マクビーで、全く的確な演奏には降伏、思わずボリュームを上げてしまいます♪

ちなみにこの曲はCD時代になって追加された別テイクの方が、尚一層、暴虐的なので、ぜひとも聞き比べして下さい。圧倒されます。

B面に移っては、1曲目の「Sanyas」がアフリカの大自然を思わせる雄大な演奏になっています。当時はこういう曲調がモロジャズでは欠かせない定番で、そこにラテンやロックのビートを入れ込んで長々と演奏を展開していかなければ、聴き手を満足させることが出来なかったのです。おそらく新しいジャズ・ファンはヘヴィだと感じるかもしれません。

肝心のここでの演奏は、作曲者であるスティーブ・ターレーのトロンボーン・ソロが脂っこく、主役のウディ・ショウは苦しみながらのアドリブになりますが、それがかえって結果オーライになっているという、当に当時のジャズ・シーンの縮図的なものが聴かれます。

この「苦しんで」という部分がジャズの真摯なものと受け取られていたのが、当時の流行でした。そしてそれが飽きられてというか、嫌われたところからフュージョンが人気を集めていくのでした。

で、オーラスの「Katrina Ballerina」は、仄かな哀愁が漂うテーマが魅力的です。そしてそのあたりをアドリブで存分に活かすのがウディ・ショウの魅力でもあり、激情と泣きのフレーズを上手く散りばめてソロを展開しています。続くエイゾー・ローレンスはソプラノサックで、これまた歌心のある展開を狙いますが、やや中途半端か……? ちなみにこの人は、この後にフュージョンに走ってショボいアルバムを作り、いつしか愛想をつかされてしまいました。むしろここでのメロー感覚では、アラン・ガムスのエレピの方が上という雰囲気です。

ということで、当時=1970年代後半のジャズ喫茶では、このアルバムのA面がヒットしていました。もちろんウディ・ショウは、この後も同じ路線でアルバムを発表していき、ようやく大手のCBSに認められて契約するものの、結局大きなヒットは出せずじまい……。悲運のうちに40代で事故死しています。

しかしそのジャズ魂は、何時の時代も不滅だと思います。それはこの作品を聴いていただければ納得されるはずです。本物のジャズとしては激オススメの1枚です。

ただし残念ながら、現在は廃盤状態……。ジャズ喫茶でリクエストするならA面です。

コメント
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