棚からぼた餅--岩淵龍王丸

信州の山郷での暮らしと、絵本と無縁になってしまった大人に向けた創作絵本や、芸術活動をお話します。

忘れた色

2014-07-18 08:54:37 | 山郷の暮し
画家にはその画家だけが観える風景があります。
この風景は必ずしも「風景画」と呼ばれるジャンルのことではなく、
世界または時空とでも言い換えましょう。
その世界を描きだすのに、色は命のようなものです。
その色は描こうとする対象物の色もありますが、
現実にはそこに見えない、いわば心の中の色があります。
たとえば、「あのときのアノ空の色」だとか「薄汚れたあの露地の空気だ」
などと、具体的なイメージでありながら、現実に作り出せなくなってしまった色があります。
技術的にはどうにもなるのですが、肝心要の精神的なエキスを忘れてしまったのです。

ばくとして「アノ時のアノ色なんだ」と思い起こせるのですが、
ナニカその色にまつわるエキスの様なものがたりないのです。
それは色の組み合わせに微妙に違いが出てしまい「ナニカが違う」とかんじてしまいます。
以前の習作を取り出してみるのですが、単体に其の色が調合できてもチガウのです。
いまひとつ精神的なウラズケがなく、納得のいく色の組み合わせが
できないのです。
それは、作品の意図を左右するほどのことでもなく、製作中の精神的なことともいえます。

蛇足ですが「どうしてもコレダ」ということは何も画家ばかりではなく、
知り合いの音楽プロデュースの方は「アル音」にこだわり、
ココの音はバリ島できいた蛙の声でなくてはと、録音に出かけたそうです。
そのようなことは珍しくなく、人はどうでもよく自分が納得できなくてはならないのです。
其の時そのときの想いが、芸術家の財産なのです。
芸術家というのはまことにやっかいな人種なのです。

写真は「輝くもの」
完成はしているのですが、青色は秋のヨーロッパの空、しかもアノ部分の色をイメージしているのですが・・。

ryusun

つぶやき

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子供たちに向けたというより、内なるものを呼び覚ます大人への絵本