棚からぼた餅--岩淵龍王丸

信州の山郷での暮らしと、絵本と無縁になってしまった大人に向けた創作絵本や、芸術活動をお話します。

井上ひさし著「一週間」を読む

2013-01-12 09:31:06 | 山郷の暮し
正月は(いつもお正月なんですが・・・)しっかり読書をしようと、年暮れに図書館から借りてきた本が 井上ひさし著「一週間」。
氏が亡くなられた後に単行本として2010年に発行されたもの。まさに最後の著書である。
あらすじを語るにはあまりにも複雑かつ重い内容で、私の表現力ではとても無理。読んでいただくのが一番だが、ロシアの強制収容所で、語学が達者な主人公が巻き起こす事々だ。

満州を侵略した関東軍は終戦後に、シベリヤの強制収容所に送り込まれてしまった。
そこにはロシアと日本との間に密約があった、というのだ。
ロシアはドイツとの戦争で多くの男を失い、労働力がたりなかった。
そこで目を付けたのが、敗戦後帰国できないでいる関東軍だ(満州には50万人とも 70万人とも。
また、日本でも敗戦で疲弊している段階で、50万人を超え兵隊が一気に帰国されてもこまる。
そこで両政府の思惑があった。
そのけっか語りつくせない、闇に消されてしまった、悲劇的なロシア強制収容所での犠牲者を生み出したのだ。

文中に「シベリヤの強制収容所には、まだ、旧軍組織(関東軍)がそっくり温存されていて、依然として旧軍の将校や下士官が巾をきかせている」
食糧などかれらがピンハネをしていた、というのである。
さらに、驚くべき事々が主人公によって暴露されていきます。
井上ひさし氏独特の洒脱で軽妙な文は、ことの重さを感じさせませんが、際限なく広がる闇を切り開かんとしている物語なのです。
まさに、闇にほおむられていた終戦時のロシアと日本政府の政治外交史だ。

ryusun

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