棚からぼた餅--岩淵龍王丸

信州の山郷での暮らしと、絵本と無縁になってしまった大人に向けた創作絵本や、芸術活動をお話します。

2--棚からぼた餅

2007-12-15 15:10:52 | Weblog
 昨日に続き、雪雲空を背色に、すずめくらいの小鳥が2・30羽、塊となって右左すごい速さで飛び回っています。たぶん、虫を追いかけているのでしょうか。
すっかり冬山の姿になってしまったアルプスの山々は、今日は濃い灰色に塗りつぶされています。雪降りになるのかと思いましたが、薄日が差してきました。まだ、冬タイヤに交換してないので、明日にでも・・・。いや、明日は新蕎麦宴会だった。またまた、浴びるほど飲むであろう。二日酔いになる前に・・。

2----棚からぼた餅

 お話は、信州にあるたいそう繁盛している神社でして、暮れから正月は大変な交通渋滞になってしまいます。
お年寄りたちを押し分け、゛この世は天国、こおれたちのものよ゛とばかり若い連中がおしよせます。
どうみたって゛神頼み゛とは無縁に思えるのですが、お悩み多き歳なんでしょう。
お悩みのことを探るよりも、どうしてこんなに繁盛する神社なのか、その秘訣はなんなのか知りたくなったのでございます。

 表看板には「総願望成就・願望即決解決・現世謳歌約束」
つまり、あらゆる願い事がかない、それも、1年3年後というのでなく、後ろを振り向いたとたんにOK。この世は、楽しむためにある。ということでしょうか。
なんともけっこうなことなのですが。
 この神社のセイリング・ポイントは、コンピーター占いと宝くじ占い・メール占い。すべてハイテクによるもの。
 とくに有名なのが、宝くじ占いで、当選者がでてより、神社は馬鹿あたり。
境内に「売り場」を設ければ、行列ができる。購入者が多ければ当選率も高くなり、確立も高くなるのはあたりまえ。
ホクホク顔の宮司さんにそのへんのお話を承っているうちに、なんだか馬鹿馬鹿しくなってきてしまいました。
 と、グッチてもしかたありませんがこの神社は、30年ほど前までは、山村の小さな神社だったのです。
それが、高速道路のインターができ、村はリゾート地として大開発。
昔は難儀したであろう峠道は立派になり、自動車の販売店か、パチンコ店かと間違えてしまうような、派手な幟旗が並んでいるところがございます。
神社の象徴である「鳥居」がデーーーンと、あらゆるものより一層ハデニ、黄金色に輝いております。
そこには、金箔額の「扁額」には--棚牡丹神社--と、墨痕鮮やかに書かれております。
「なんだか、バチンコ台のイメージじゃあねえか」とお思いでしょう。そうーー、まったくそのとうりで、自分がパチンコ玉になってしまった気分になり、あっちこっちぶつかりながら奥の院へとまいります。
 チーンジャラジラと玉が飛び出してくるわけではありませんが、願かけ成就のお礼報告が、電子掲示板にギラギラときらめいております。
特別御宣託、ご利益強大コーナーは、当然特別料金。
 と、まーー説明は尽きないのですが、肝心の「ご神体」となると、これがよくわかりません。
わからないのが神様だ。といえばそのとうりなのですが、ともかく、その神様の正体をしりたくなりました。それが、このお話なんですが・・・。

 昔々、といったとたんに読む気が失せてしまったでしょうが、宮司さんがおしゃったそんなむかしでなわく、じいちゃんの・・、イヤ、モウチョト昔のことでして。

 そそりたつ山々に囲まれた村は、里に出るまでたった一本の山道しかありませんでした。
村の入り口近くに、鼻息でもぶっ倒れてしまいそうな「ホコラ」がありました。
ぶらさがっている「扁額」には--道祖神--とようやくよむことができます。
 「道祖神」となりますと、かずある神様の中でも、最も親しく頼みやすい身近な神様で、人気ナンバーワンでございます。
縁結び・家内安全・お家繁盛・養蚕や五穀豊穣と、農村にとって深い結びつきがあるのです。
それほど大切な祠なのですが、村は打ち続く災害や不作・疫病などで、すっかり見捨てられてしまっていたのです。
 ところが---この朽ちた祠に「福の神」がすんでいたのです。
神様のご紹介ですから、少なくともご尊顔を拝します、といきたいのですが、いうほうが気恥ずかしくなってしまうようすで--。
 血色悪く干からびたパンのような頬。しなびた黒豆をチョコンチョコンとつけたような目。チョコッとつまんだ程度の鼻。手入れなど一度もしたことがないドジョウひげ。まさに、貧相の決定版の御尊顔。
 さて着ているものときたら、たぶん清潔・神聖な白衣と思われますが、さまざまなぼろきれを不細工に縫い付けてある。
あばら骨が丸見えの姿は、枯れ枝にぼろきれ、というかんじでございます。

 枯葉がふんわりとたまった小春日和。
昼ねを楽しんでいる福の神は、たたき起こされました。

          つづき




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