棚からぼた餅--岩淵龍王丸

信州の山郷での暮らしと、絵本と無縁になってしまった大人に向けた創作絵本や、芸術活動をお話します。

105-珍訳源氏-娘の結婚

2009-10-08 09:03:49 | 物語・絵本・童話
先にお話したように、玉かずらには縁談の山。玉かずらは様々なわずらわしさから、いっそうのこと宮中に上がってしまい、全てのしがらみから逃れようと考えたようです。
養父の源氏殿はよからぬ虫が起きだして、心穏やかでなく、かといっ私に相談も出来ない。16歳の姫の苦しみはいかばかりであったろう。
 求婚者のなかに、ふうたいは貴族とも思えない、モジャモジャな黒ひげの大男・右大将がいました。姫は、見かけは怖いそのおとこの誠実さと心の広さを見抜き、平凡だが慎ましやかな生活を選んだのです。
それを知った全ての者が、およそ考えられなかった結婚だけにビックリ。
秋には、それは元気な男の子を出産いたしました。
私は複雑でした。数奇な運命に報いてやるためには、華やかな貴族社会で人生をおうかしてほしいと願っていただけに・・・。
いやいや・・。苦労をしてきただけに、貴族社会の駆け引きの愚かさを感じたのでしょう。正直、上流貴族社会に育った私が、姫の選択の正しさがわかったのは、ずっとあとのことです。


105-珍訳源氏-玉かずらの成人式

2009-10-07 07:27:43 | 物語・絵本・童話
玉かずらは源氏殿に引き取られ、申し分のない日々をすごしながら、父である私がなぜ迎えに来ないのか、ぐっと涙をこらえていたという。
 源氏殿は玉かずらの裳着の式(もぎの式・女子の成人式)に、腰結(こしゆい)の大役を私にやらせ、そこで、一切を明かすつもりだったらしい。
何も知らない私は招待をうけても、娘の雲居の雁と源氏殿の息子・夕霧とのきにいらぬ縁談話かとおもい、面会に応じていなかった。
しかし、源氏殿は我が母上に全てを打ち明けてくれてから、全てがよい方に展開しだした。
その頃は、私と源氏殿は、恋しあう子供たちの思いをかなえてやるような配慮もなく、己の権勢の張り合いに、彼らを巻き込んでいたのだった。
私は亡き父・左大臣の遺言の通り、我が一族の繁栄かばかりでなく、貴族社会全体の繁栄が善政であると勤めてきたが、やはり、光源氏を頂点とする源氏家の力は、つねに気になってきた。
正直、私は源氏殿にはどうしても勝てなかった。太政大臣という帝の臣下として最高位についた今だこそいえるが、長い長いコンプレッスクだったかもしれない。マーそれが私のバネになったことは確かだ。
 しかし、本来は子供の頃からの親友。互いの自尊心など、将来ある若者たちに差し障りこそあれ、何のいいこともないことを十二分に承知fはしていたのですが・・・。
ひとまず、・玉かずらの成人式は盛大におこなわれ、流転と苦難に満ちたつぐないをしたのです。

104-珍訳源氏-娘に会えた

2009-10-06 07:08:38 | 物語・絵本・童話
      夕顔の花

(37歳)の人生の中で、源氏殿(31歳)に心から感謝することがおきました。
今までくどくどとお話をしてきました、夕顔との間に出来た我が娘「玉かずら」と再会できたことです。
しかも、私が始めて夕顔にであったときのように控えめでありながら、ほのかに光る高貴な美しさです。
苦労をしながらも磨き上げられた輝きをそなえた姫でした。
おさらいみたいに成りますが、私の愛した姫君を「夕顔」となずけたのは源氏殿の発想です。
まさに茜色が潜んだ夕暮れの光の中に、ボーーと白く輝く夕顔の花そのものでした。
私の妻の嫉妬から逃れるように、忽然といなくなってしまった親子。
手を尽くして所在を尋ねていたのですが、光源氏殿が密かに引き取って育て上げてくれていたのです。

103-珍訳源氏-世代の交代

2009-10-05 07:31:45 | 物語・絵本・童話
秋風が立つ7月夜、源氏殿は東の花散里の君(桐壺帝の女御で、源氏のよき話し相手)にでかけました。
萩の葉ずれの音が哀れ深くきこえるころ、かがり火が怪しく照らす中に、源氏殿の実子である夕霧と、私の長男の柏木と弟の弁の少将の3人の若君と、玉かずらの姫らが、演奏会をしていました。
実の姉としらない、我が息子・柏木は恋しいおもいを音曲にこめたのです。
源氏殿は見事な演奏に若者たちが、雅に育ったことをうれしく思いながらも、時の流れに寂しさを覚えたのです。
なんといっても、次の年は源氏殿の40歳の祝賀です。

私は当然、この場にいたわけではアリマセンが、ご想像ください。
貴族ならばこそかもし出される雅な空間なのでしょうか。
決してエリート意識で申し上げるのではないのですが、このような貴族的時間を持ちたいものです。どんなにお忙しくとも、こんな時をもてることは自信と誇りになっていくものです。

102-珍訳源氏-近江の娘

2009-10-04 09:45:25 | 物語・絵本・童話
娘のうわさは源氏殿にも伝わり、身元もよくよく調べないで引き取るとは、軽率なことだと思ったようです。
そのおり思い出したのが20年ちかい以前の宿直のおりの「女談義」。
私が下賎の女と遊んだことを面白おかしく話したことでした。
光源氏殿は当時の私-頭中将の大人ぶりに、知らぬ世界にうらやましさを覚えたことを思い出し、苦笑いをされた。
そして、話の娘-玉かずら-を引き取っていることは、まだ黙っていようときめたといいます・・・。

源氏殿の本心は、輝くばかりの美しい夕顔の娘・玉かずらに、養父の域を越えかねない39歳の男盛りの自分と戦っていたのです。
源氏殿に引き取られた玉かずらの姫君(わたくしと夕顔との間に出来た撫子の姫のこと)は、源氏殿が色香を向けてくるのにとまどい、父親(私のこと)はなぜ迎えに来ないのかと、うわさに聞いた、妹に当たる近江の姫がうらやましく思ったと後に知りました。
なんとも回りくどい説明になりましたが、娘は私に迎えに来るのを待っていたのです。

101-珍訳源氏-娘探し

2009-10-03 09:08:52 | 物語・絵本・童話
        
そんな最中の夏、近江の国に私の娘だという者おり、さっそく引き取りました。
合ってみると小柄でかわいらしく愛嬌がある。
確かに私と似たところがあり、それほど悪くはない。まーーこの子ならよかろうと感じたが、口を開いたとたん、がっかりしてしまった。方言丸出しの上に、早口で教養もまるっきり感じない。
私は苦労させた償いに、女房として身近においておこうかと思っていたが、いかにせんどうにもならない。
救われるのは、己の分をわきまえているということで「水汲みでも、おまるの始末でも何でも致しますから、どうか置いてください」と、いわれたときにはかわいそおになってしまった。娘の弘徽殿の女御にお願いし、物笑いの種にならない程度に、躾けていかなくてはと思ったのです。

100-珍訳源氏-娘探し

2009-10-02 08:11:32 | 物語・絵本・童話
私も女御遊びについては、源氏殿を批判できません。あちこちに子を宿してしまったと思いますが、それにしても思い出すのは、撫子の花をそえた手紙を最後に、忽然と消えた「夕顔」と、顔も見ていないが当時三才の娘のことでした。
そうです。今までお話をしてきた、源氏殿が「玉かずら」と愛称した姫のことです。
源氏殿とそのような関係になっていたとは、まったく知りませんでした。
夢占いをしてもらうと「殿の姫君は立派に成長され、人の子になっております」とでた。
手を尽くし調べ上げても解らず、源氏殿も知らないという。実は「玉かずらの君」としてお屋敷にいられたのですが・・・。

99-珍訳源氏-私・内大臣の娘探し

2009-10-01 08:18:18 | 物語・絵本・童話
この珍訳源氏物語の語り部といいますか影の主役である私は、源氏殿より6歳うえの45才。ご承知かもしれませんが、母は先の桐壺帝の妹・大宮で、父は左大臣という名門。やがてはその最高位につくのですが・・。
内大臣の源氏殿に続く高官。実質的には為政の一切を司っていたといっても過言ではありませんでした。

源氏殿の若君・夕霧殿と、我が娘・雲居の雁が恋仲に中であることはわかっていたのですが、私と源氏殿とがどうも昔のようにしっくりいかなくなっていたのです。
権力・財力を得ますと、なんとしても守り続けたい。もしそれを脅かすものがいたら、たとえ幼馴染であっても蹴落としていかねばなりません。盲欲のまえに人間の心のもろさを十二分に承知しながら、ご時世に流されていったのです。

長女の弘徽殿(こきでん)の女御を、后へと昇格させるのを目ろんでいたのですが、源氏殿の養女・先の斎宮さまが先に押されてしまい、面白くなかった。
そんなことを察していたのか、私の娘-雲居の雁が懸命にこらえているのは、不憫ですがわかってはいたのです・・。

68-珍訳源氏-源氏の目論見

2009-09-30 09:35:41 | 物語・絵本・童話
そんなことをしながらも、源氏殿は玉かずらの姫に言い寄っていくのでした。
感のいい葵の上さまは、源氏殿の心のうちを見破って、縁談を進めておりました。

いいよる求婚者のなかで、特に源氏殿が嫌っていた無骨者の髭黒の大将の妻となり、尚侍(ないしのかみ)となって宮仕えをしたのです。平凡ながら幸せな一生を過ごしました。
幼少の頃から辛苦を味わってきた方だけに、貴族社会の浮き沈みや人間の性がなすもろもろのことをお考えの上、見栄えだけでない人柄の本質をのぞまれたのでしょう。
知らなかったとはいえ、我が娘でありながら何もしてあげれなかったことが悔やまれて成りませんが、結婚後は影から応援を致しておりました。
まいどくどいようですが、これらのことを私が知ったのはズーーーと後日のことです。私と娘(玉かずら)は再会し、源氏殿とわだかまりもとけたのです。

さて、隠し子はなにも光源氏殿ばかりではアリマセン。次回は私のことをお話いたしましょう。


67-珍訳源氏-源氏殿の目論見

2009-09-29 07:40:33 | 物語・絵本・童話
玉かずらの姫の評判は大変なもので、たくさんの求婚者がおしよせました。
源氏殿の腹違いの弟・兵部卿の宮さまは、3年前に奥方を亡くしておりました。
この弟が玉かずらにホノ字だと知ると、なにお思ったのか源氏殿は、姫を弟の兵部卿にめあわせるのでした。

姫はそんな養父の心根がわからなく、さして興味もない兵部卿に、薄絹の几張をあいだに、お見合いをすることにしました。
夜のことです。源氏殿は集めた蛍を袂に隠し、姫の部屋に潜んでいました。
時をえたとき、蛍を放せば、薄絹の向こうにこの世と思えない姫が浮かび上がっています。
兵部卿の思いは一気にのぼせ上がり、寝ても覚めても忘れられない。頂点にたっしてしまったのです。
源氏殿は計画が成功し、満足でした。
私の頃の時代は、未婚の女性がスッピンで殿御とお会いすることはありませんでした。
先の話の-末摘花の巻-ウワサにつられ忍んでみればモノスゴイブスだった。そんなことがおきたのです。
それにしても源氏殿の演出は心憎いものです。

ryusun

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絵本と無縁になった大人に

子供たちに向けたというより、内なるものを呼び覚ます大人への絵本