徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「私の中のあなた」―愛の優しさに溢れて―

2009-10-10 07:15:00 | 映画

愛の優しさを、白血病の少女とその家族を通して描いた作品だ。
ニック・カサヴェテス監督の、アメリカ映画だ。
家族とは何か。
愛情とは何か。
生きるとは何か。
さまざまな問題を問いかけながら、この作品は決してシリアスな演出にこだわっているわけではない。
悲しい物語なのに、ときにはユーモラスで笑顔と明るさがある。
原作は、ジョディ・ピコーの大ベストセラー小説だ。

2歳だった娘のケイト(ソフィア・ヴァージリーヴァ)は、白血病に冒されていた。
それを知ったとき、母サラ(キャメロン・ディアス)と父ブライアン(ジェイソン・パトリックは、失意のどん底に落ちた。
担当医師ドクター・チャンス(デヴィッド・ソーントン)が密かに提案した、「ケイトの生命を救う、新たな子供を遺伝子操作でもうけること」が、残されたひとつの希望だった。
ケイトに生きてほしい。
そうして、次女アナ(アビゲイル・ブレスリン)は、“創られて”生まれてきたのだった。
その想いは、家族みんな同じだと母親は信じて疑わなかった。

ケイトの病状は、どんどん悪化していく。
医師に覚悟を決めるよう告げられても、サラはそれを受け入れられなかった。
腎臓を移植すれば、ケイトの生命は助かると、その一念にしがみついていた。
ところがある日、アナは「もう、姉のために手術を受けるのは嫌よ。自分の身体は自分で守りたい」と、両親に訴えたのだ。
病気と闘いながらも、幸せだった家族に訪れた突然のできごとであった。
そのアナの決断の裏に、何があったのか。
アナのついたひとつの“嘘”が、愛の結晶となって、家族を結びつけていくことになるとは・・・。

カサヴェテス監督は、実生活でも、心臓病を抱えた娘を育ててきたのだった。
経験した人だからこそ知っている心情を、彼は実に優しいタッチで描いている。
アナは、ドナー提供をやめることで、姉が死んでしまってもいいのか。
母親のサラは、どこまで妹に無理を押しつける権利があるのか。
ひとりの子供を助ける目的のために、別の子供を産むことは、倫理的に許されるのか。
そうした問題を提起しつつ、映画は、死を目前にした家族を結ぶ家族愛を描写していく。

母親サラを演じる、ハリウッドのキャメロン・ディアスがいい。
いつもの、明るいイメージとは全く違う役柄への挑戦だ。
ただ、ドラマは「生」「愛」「家族」という、いずれも大きな主題を盛り込みすぎているせいか、中途半端な感じもある。
それに、遺伝子操作で産まれてきた妹の設定というのも無理があって、どうも現実的とはいえない。
ニック・カサヴェテス監督アメリカ映画「私の中のあなたは、難病を取りあつかったシビアな物語だが、単なるお涙頂戴ものではないところが、救いといえば救いである。
生と死の意味を、真底から理解しようとするのは、いつでも難しいことのようだ。