ZENZAIMU(全財務公式ブログ)

本ブログは全財務労働組合中央本部及び地区本部役員が持ち回りで掲載しています※PC版表示にすると背景がおしゃれになります

持続可能性

2019-01-21 12:58:40 | 主張

中央本部溝口です。

1月に入って寒さもピークを迎えつつあり、ダウンを着ている人をよく見かけますが、最近とあるワッペンが気になって、一度気になると、やたら目についてきて、そのワッペンが急に増殖したような気がしてならない。

そのワッペンには「CANADA GOOSE」と書かれている。

当方の認識では今年、急に増殖したような気がしているが、調べてみると日経トレンディが昨年1月に特集しており、日本への進出は2017年11月とのこと。さすが日経トレンディ、先見の明が冴えわたっている。

それはともかく、流行に鈍感、ブランド物の価値など到底理解も出来ないセンスしか持ち合わせていない当方は、的外れにも、ワッペンを見るたびに、急激な需要の増加でカナダのグースが乱獲されていないか、絶滅の危機に瀕していないか、日々心配が募るのであった。(だからといって何か行動を起こすわけではないが。)

前回のブログ当番で長々持論を展開して以降、特筆すべきこともない穏やかな年末年始を過ごし、大して書きたいこともないので、今回は、徒然なるままに、カナダのグースが乱獲されていないか調べてみることにした。

調べてみると、というかグーグル検索で上の方に出てきた検索結果をちらっと見てみると、やはりCANADA GOOSEに限らず、世界的にダウンの需要は増えており、需要増に対応するための、動物虐待ともとられかねない羽毛の採取方法もあるようである。ライブ・ハンド・ピッキングと呼ばれる採取方法では、生きたままのグース(ガチョウ)やダック(アヒル)から羽毛を手でむしり取ることで、1匹から3~4回羽毛を採取することができるらしい。欧米では、動物愛護の観点から観て、こうした採取方法を問題視する声も少なからずあるようだ。

このような状況を踏まえてか、CANADA GOOSEは公式サイトで以下のように謳っている。

私たちは、すべての動物は生きている間はもちろん、死んだ後も人道的に扱われるべきだと考えており、製品に使用する動物性素材を倫理的で責任ある方法で調達、使用することに強い責任感を持っています。意図的な動物虐待や飼育放棄、不当な苦痛や傷害を故意に与える行為を決して許しません。

カナダグースは最近、ファーとダウンの両方の包括的なトレーサビリティプログラムを開始しました。このプログラムの目的は、不正取引、意図的な虐待や不当な危害を加える行為の対象となっていない動物からダウンおよびファーを採取し、サプライチェーン全体で素材を完全に追跡・遡及可能にすることを徹底することです。

カナダグースはカナダの羽毛加工販売会社のFeather Industries Canada社からのみダウンを購入しており、検査機関による検査に合格し、カナダおよび世界各国の衛生基準をクリアした低刺激性のダウンを使用しています。

さらにFeather Industries Canada社の公式HPを見ると、「About Us」⇒「Sustainability」⇒「Complete By-product」に以下のとおり明言されている。

「Feathers and Down themselves are a by-product of the meat industry. No animal is ever used specifically for its feathers, and we at Feather Industries have strict policies regarding our feather procurement and the humane treatment and use of animal products (See our corporate policies here).

要するに、当方の理解では、食肉用グース等の副産物としての羽毛しか使ってません、言い換えると、羽毛のためにグースを乱獲したりしていません、ということなんだろうとお見受けした。

以上、興味本位でざっと調べた結果であるが、現代の先進的な企業というのはここまで徹底したポリシーに沿って活動してるんだなと感心したとともに、今となってはトレーサビリティもない、ライブ・ハンド・ピッキングにより採取されたかもしれない、安物のダウンを纏っている身としては、これまでの無自覚、無知を恥じ、せめて大事に着ることを心掛けたいと、気持ちを新たにした次第である。

労組のブログなので、ここから無理やり労組の話に展開して参りたい。

前述のFeather Industries Canada社公式HPでは羽毛の調達ルートに関する考え方を「Sustainability(持続可能性)」の項目に位置付けて記載しているように、昨今の企業は、多様な観点から、ビジネス・モデルの「持続可能性」について考慮する必要がある。

私が学生だった頃は、いわゆる「Corporate Social Responsibility(企業の社会的責任)」なる考え方が企業に浸透しつつあった頃で、経営学系の授業でもよく取り扱われた概念であるが、企業が社会の中で生き残っていく、つまり事業の持続可能性を維持していく上で、企業には、社会の一員として果たすべき責任がある、という考え方の下、社会貢献のために一定のコストを拠出することが求められ、企業のIR情報等にはCSR活動の内容が大きくPRされるなど、CSR活動を、中長期的に企業価値を維持していくために必要なコスト(短期的な財務リターンはいったん度外視)と捉えていた企業が多かったように思う。

私は2009年に学校を卒業し、以降、日々飲酒に明け暮れる不毛な10年を送ることになり、学問とはだいぶ疎遠になってしまっていたが、知らぬ間に学問の世界は日進月歩、絶えず進化を続けているようで、2011年には、マイケル・ポーターが「Creating Shared Value(共通価値の創造)」なる概念を提唱していたらしい。

CANADA GOOSEを例にとって説明すると、「社会にとっての価値(生態系の保存)」と「企業にとっての価値(持続可能な製品素材の調達、強固な競争基盤の確保)」が同時に成立するとき、それを「共通価値」と呼び、自社の経営資源、強みを活かして、こうした「共通価値」を創造することが「Creating Shared Value」の考え方である。この「共通価値の創造」は「企業の社会的責任」とは似て非なる概念であるそうだが、CANADA GOOSEの事例では、「企業の社会的責任」を果たすことで、「共通価値の創造」につながっており、この記事の論旨においては「共通価値の創造」と「企業の社会的責任」を区別する必要はないようにも思えるが、「共通価値の創造」は「企業の持続可能性」を模索する上で、より幅広いアプローチの仕方があることを示唆しているように思う。

極論かもしれないが、これからの社会では「共通価値の創造」を実現できる企業こそが生き残ることができて、そうでない企業は多かれ少なかれ自然と淘汰されていくのではないだろうか。(いつの時代においてもフリーライダーは一定数存在し続けるとしても。)

労組に関しても、労組は企業ではないが、社会で存在していくためには、存在価値がなければ存在してゆかれない。

公務労組は「社会にとっての価値(公共サービスの質の維持)」「労組にとっての価値(組合員にとってのメリット)」に共通する価値を見出し、創造していくことができるだろうか。