YS Journal アメリカからの雑感

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タタモータース、ナノの減産 (追記あり)

2010-05-18 09:32:00 | アメリカ自動車業界
今年一月に、Lilacさんとナノと電気自動車を巡って、楽しい議論をさせて貰った。結論は、ずっと先にならないと出ない息の長い話ではあるが、生産が始まったばかりのナノの減産のニュースを目にした。初年度25万台生産の予定であったが、12万5千から15万台位になるとサプライヤーに通告しているそうだ。

Lilacさんは、インドや新興国でナノが売れる言う前提があり、私も否定はしていない。しかし、減産が販売不振の結果だとすると、インド(他の新興国も同じだと思うが)ですら、屋根付き4輪オートバイのマーケットは、初めから無かったか、急速にセグメントが小さくなっているのではないだろうか。最低限の装備の車には、結局誰も乗りたくないということだろう。

未だ一年も経って無いの性急な結論であるが、売れる車は多少技術的な問題があっても最初から飛ぶように売れるものなので、今後、急激に売れ出す事は無いと思う。

怪我の功名的ではあるが、日本メーカーが手を出さなかったのは、正しかったのだ。

(どこかで書いた様な気がするが)、トヨタアメリカのR&Dの社長から、ナノの登場の数年前に、最低限の機能を備えた車のルノーと共同研究で、価格的には最低でも5千ドル(50万円)を超えてしまう結果になったと聞いたことがある。トヨタは、この研究を元に中国、インド、ブラジルを主なマーケットとして、既存の技術、そして緩い品質基準で、カローラクラスで一万ドルの車を出そうとしていた。(このプロジェクトはどうなったのだろう。記憶だと2012年くらいの立ち上げ計画だったので進行中か?)

自家用車は感情的で、少し見栄を張った買い物なのだろう。屋根付き4輪オートバイに乗るくらいなら、オートバイに家族皆がしがみ付いていたほうが、堂々としてられるのだろう。

もしトヨタの一万ドルCarプロジェクトが(進行中で)成功すれば、新興国購買層の感情的な許容下限を探ることになりそうだ。

電気自動車は、状況がはっきりするのにまだまだ時間が掛かるだろう。日産のリーフ、GM Volts (発電機としてのエンジンは乗っているが)の行方に引き続き注目である。これらの電気自動車も、まだまだ内燃機関自動車の延長上にあるので、電気自動車普及するかどうかの結論は、私の生きているうちに出ない可能性が高い。

日本では、もう何ヶ月もプリウスが一番売れている車との事で、既にハイブリッドが主流といっても過言ではないであろう。ヨーロッパもディーゼル、そしてハイブリッドが中心となっていき、北アメリカ、南アメリカ、アフリカは、ガソリン車の時代が続きそうだ。中国、インドも暫くは、ガソリン車だと思う。

馬力やスピードを求めなくなった結果、車のイノベーションはグラマラスではなくなった。ナノは、破壊的な価格であったが価値が見出されず、電気自動車は性能の点で、イノベーションではないと思う。

電気自動車の普及については懐疑的なので、改めて考えてみたい。

追記:5-23-10
トヨタの低価格車プロジェクトは EFC (Entry Family Car)。先ず、インドで「エティオス」で今年の暮れ立ち上げるようだ。価格は一万ドル(90万円)を切るレベルの想定で、年間7万台の販売を予定しているとの事。ちょっと慎重すぎる様な気がする。社内的には、15-20万台位を念頭においていると思う。このプラットフォーム、最初の構想ではブラジルなどへの展開を考えていたが、予定通り展開しているのだろうか?

トヨタとしては、この価格レベルが4輪自動車の最低レベルであると考えているのだと思う。既にある枯れているが確立されている技術を使って新興国のエントリーレベルを攻める戦略を5年以上も前に考えているとすると、やっぱりトヨタの実力は凄い。

今日の WSJ に燃えるナノの写真が出ていた。まだ、出て一年も経っていないのに、既に車両火災が2件出たという事で、無料検査を実施するとの事。販売はますます厳しくなりそうだ。