YS Journal アメリカからの雑感

政治、経済、手当たり次第、そしてゴルフ

Liberty and Tyranny 内容紹介(3)分別と革新

2009-09-22 11:24:03 | Liberty and Tyranny Mark R. Levin
建国の父たちは、既に独立宣言の中で、統治する事(政府)に関して、人々の尊厳、権利を束縛する不埒な変化が起こる危険性を予言している。

そして、分別こそがそれらの変化を食い止めるものであると、考えていた。分別とは、知性から導かれた判断をするための最高の美徳である。

改革としての変化は、統治のする事(政府)のあり方を守り改善する物と考え、新しい概念の導入としての変化は、建国の考えから逸脱する物で、実験以外の何物でもないと規定した。

保守(Conservative)は、変化そのものを拒絶はしないが、原理を伴わず、結果的に人々の幸せを脅す変化に対しては、激しく拒絶する。

一方、統制主義者は、自分自身を含めて今ある状態に不満であることから現実的でない理想郷をを目指し、平等の名のもとに、常に変化を訴える。

建国の父たちは、平等を、各個人が自由で、自分自身の裁量で、合法的に、繁栄を求める事を事前な権利であると理解していた。又、人それぞれが同じではないという意味でのの不平等は、自然と考え、個人個人はユニークな存在であると考えた。

統制主義者は、画一的な経済的、社会的な結果的平等を、平等と解釈している。彼らは、教育の場、メディアを利用し、この考え方を広めようとする。そして、以下に経済の基本が健全で強固であっても、不況や恐慌を教訓に持ち出し、脅しを掛ける。そして、不況、不況の時は、自由経済より大きな政府が必要だと主張する。

英国の哲学者 C.S. Lewisは言う。全ての専制政治のもとでは、弱者救済の名のもとで、激しい圧政が行われる。善良で道徳的なお節介やきより、強欲な貴族の支配のもとでやっている方が、幸せである。強欲な貴族は、満足したり寝たりする事もあるが、人々のためと言いながら、人々を苦しめる輩のやる事は終わりがないからである。

Liberty and Tyranny 内容紹介(2)自由と専制

2009-09-17 01:10:00 | Liberty and Tyranny Mark R. Levin
1. On Liberty and Tyranny 自由と専制

保守(Conservatism)とは、アメリカ建国精神に基づいた個人の生活、社会の在り方、政府の役割の理解である。個人の尊厳、自由を神から与えられた権利とする。節度ある社会とは、信仰による道徳心のある判断を出来る精神的存在としての個人が、不完全ながらも運用するものである。このような社会では、他人への権利の尊重が義務として存在する。故に、個人は、自分の幸福、家族の幸福に責任を持っており、社会の一員として地域への貢献の義務がある。このような社会では、個人財産と自由は分離不可能な物であり,幸福を追求し自由で安全であるために、個人財産は守られなければならない。法律が、政府の役割を規定し,社会の不完全性を補うために設定されるのである。保守(Conservatism)にとっては、このような仕組みで構築された社会自体が、社会自身を守り、より良くなる事を内包しているのである。

一方で革新(Liberal それも最近のModern Liberal)は、これらの建国精神を拒む事で、政府が上記で考えられる社会に優先すると考えている。個人や社会の不完全性を問題にする事で、理想郷(ユートピア)を掲げて実現を図ろうとする。これは革新ではなく、統制主義と定義出来る。

建国の父達は、強力な中央政府が自由を脅すものという事を理解していた。少数に権力が集中すると、無政府状態や独裁に向かうと考えていた。そこで最終的には憲法という形で、国家規模での繁栄を目指す方針となった。憲法で、連邦政府の権力は制限され、連邦政府内でも権力は三権分立となり、権力は各州ひいては市民に属する事となった。建国の父達は、憲法の改定の必要も理解しており、その手段も規定した。憲法改定には、両議会の3分の2以上の承認し,4分の3以上の州の批准が必要となった。過去に27回の改定があり、そのうちの10回が憲法が出来てから直ぐ行われている事からも、憲法が容易く改定出来ないようになっている。

しかし、1930年代の大恐慌時代に、統制主義者は建国の父達が考えた社会のあり方を基本から覆す事に成功した。フランクリンルーズベルト大統領と議会多数を得ていた民主党は、ニューディール政策の名の下で、憲法の精神を踏みにじった。最初は最高裁判所がニューディール政策を憲法違反であると反発した。ルーズベルト大統領は、憲法改定をするのでなく、最高裁判事の総取っ替えで乗り切ろうとした。結局はこの企み失敗に終わるのだが、ルーズベルト大統領の統制主義に賛同する判事を次々に任命する事で、最高裁判所は、事実上憲法のチェック機能は失われた。

連邦政府はもの凄い勢いで、法案や関連省庁を作り出し経済をコントロールをし、ひいては個人の自由も浸食し始めた。ルーズベルト大統領は、同時に、この政策の一環として、自分自身と民主党の支援基盤を作り上げた。(例えば、組合)この政府と民主党の持ちつ持たれつの関係は今日まで続いている。大恐慌は第二次世界大戦によって終結するのであるが、決してニューディール政策のお陰ではなく、逆にこれが経済復活を遅らせていた。

ニューディール政策のインパクトは、政策の問題ではなく、建国の原理と憲法で規定されている連邦政府の権力制限を破壊した事にある。ルーズベルト大統領自身も、ワシントン大統領以来の2期の慣例を破り、4期大統領を務めている。(これはその後の憲法改定で2期までとされた)結果として、連邦政府は、国内最大の債権者、債務者、雇用主、消費者、地主、保険業者、年金管理者となったのである。

統制主義者の底なしの統制への欲望がある。常に、政府による救済唱えて扇動している。理想郷を追い求めるために、政府のやることは、際限が無いのである。

建国の父達の想定は、政治的に中立な個人にあった。この人々が自由に生きるて限り、能動的で独立をしていると考えてその仕組みを構築した。そこで統制主義者は従順で依存性の状態を作ろうとする。方法は、経済制裁や抑圧である。それも一気にではなく少しづつである。そのペースは早くなって来ており、保守と呼ばれる人の中にも、長年の統制主義の拡大で、柔らかな専制を許容する人もでて来ている。政府のやる事の中で、保守の考え方を守ろうという考え方である。そうしてだんだんに取り込まれるのである。

保守主義Conservative)は、決して政府自体を卑下はしない。専制を卑下するのである。保守主義(Conservative)は、正に憲法が連邦政府が効率的であるために、様々な権力への制限が必要である事つまり建国の精神、憲法を信奉しているのである。少しでも統制主義に隙を見せると、彼らはその隙を突いてくる。

保守主義の信奉者は、自由は一度失われると、取り戻す事が不可能である事を理解している。保守(Conservatism)とは専制に対する解毒剤である。なぜなら保守(Conservatism)の原理こそが、建国の原理であるからである。

Liberty and Tyranny 内容紹介(1)目次

2009-09-16 10:36:49 | Liberty and Tyranny Mark R. Levin
1週間前に紹介した Liberty and Tyranny の内容を紹介して行きます。今年の出版ですが、既にミリオンセラーになっております。アメリカ建国精神に溯って、数十年に渡る革新派の自由への浸食の歴史と現状分析をし、最後に、アメリカがアメリカらしくあるために保守回帰のためのマニュフェストを提言しております。

まずは、目次から。

1. On Liberty and Tyranny 自由と専制
2. On Prudence and Progress 分別と革新
3. On Faith and the Founding 信仰と基礎
4. On the Constitution 憲法
5. On Federalism 国家主義
6. On the Free Market 自由市場
7. On the Welfare State 福祉国家
8. On Enviro-Statism 環境統制主義
9. On Immigration 移民
10. On Self-Preservation 自己保守
11. A Conservative Manifesto 保守のマニュフェスト

英語の本(日本で翻訳が出るとは思いませんが、もし出たら是非読んでみたい)ですし、アメリカ建国史や哲学史の知識も日本語でも限られてますが、本質的な間違いだけはしないように心掛けていきます。

目次から少し脱線しますすが、なぜこの本をこんなに熱心に紹介するのかを記しておきます。

保守回帰を提言する本の内容紹介をするくらいなので、私自身、保守系の考え方に賛同する物です。昨年までは、政治にあまり興味もなかったのですが、昨年の大統領選そしてオバマ大統領就任を経て、リベラルそれも激しく左傾化して行くアメリカに不安を感じるとともに、結局永住する事になったアメリカが自分の憧れていたものとズレていく危機感を持つようになりました。日本でどのように紹介されているか分かりませんが、オバマ大統領と議会で過半数を占める民主党に草の根レベルで激しい反発が起こっております。この本は、その理論武装の一端をになっております。それが、ミリオンセラーになった理由でもあります。

又,アメリカの保守回帰が、日本の未来に指針(モデルでは無い)を与えてくれる予感がしています。保守の本質とは、自由の重みとは、考えていただくきっかけになる事を祈りつつ進めて行きます。

書評:Liberty & Tyranny

2009-09-08 18:42:40 | Liberty and Tyranny Mark R. Levin
今年出版された政治関係の本では、抜群の売り上げです。著者はMark Levinで、保守系のRadio Talk Show Hostとして有名です。

過去にも、政治ものでは裁判官を取り上げたベストセラーなどあり、犬愛好家としての本もあるようです。元々は弁護士であり,レーガン大統領のスタッフとして働いた事があります。本人の弁では、12歳からの筋金入りの保守との事です。

内容としては、現在のアメリカの政治状況を「柔らかな専制政治」と定義して、個人の自由を重んずるアメリカ建国の理念と憲法からズレてきているかを分析して、最後に保守としてのマニュフェスとを提案しています。自由主義で資本主義の権化であると思われているアメリカさえ、様々な革新的(福祉重視)政策により、本来建国時には政府が介入しない(出来ないよう規定されている)事が蔓延っていて、その傾向は強まってるとの認識です。

悲しいかな私にアメリカの建国の歴史の知識が乏しいので、保守理念の解釈が深まらないのが残念なのですが、タイトルでもあるLiberty(自由)とは、そしてTyranny(専制)とは何かを深く考えさせてくれます。

私見では、今後のアメリカが保守回帰に振れると思っていますが、その中で重要な本として記憶されると思います。

詳しい内容についても今後紹介する予定です。