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車の家電化

2010-01-22 10:44:15 | アメリカ自動車業界
人気の高いMBA留学ブログ:My life in MIT Sloan の、車の家電化についてのフォローアップです。

Lilacさんとの議論は、「電気自動車の普及が日本車メーカーにどうのような影響があるか」です。彼女の論旨は次の通りです。「家電化という言葉に引っ張られては危険。車を組み立てる複雑な製造ラインがあるので、日本メーカーのコスト削減、品質管理、組織、文化等々の総合的優位性は揺るがない。確立されたブランド力もプラスになる。但し、モジュール化でに利益が部品メーカーに移る可能性が高い。又、モジュール部品への新規参入も容易となる。」

私の立場は、車の家電化は、文字通りの解釈で、モジュール化が進み、コモディティ化が進む。よって、日本メーカーの優位性が急速に失われる。

電気自動車の車体は、内燃機関自動車の延長線上には無い

究極の電気自動車は、4輪駆動、4輪操舵である。つまり車体の4隅に添付の写真(ミシュラン)のような駆動、停止、操舵、サスペンションが入ったタイヤ・ホイールがつくと思われる。現実的には、前輪が停止のエネルギーを活用しやすいので、FFになると思われる。リアにもサスペンションが必要で、エネルギーの効率を上げるために、同じような機能を持ったタイヤ・ホイールがつくと思う。

車の4隅に重たいタイヤ・ホイールがつくので、乗用車であってもトラックのような梯子フレームとなる。車体もフレームにすると、複雑なモノコックにしなくても強度が比較的簡単に出る。つまり、モジュールとなったタイヤ・ホイールをフレームにくっ付け、後は外側を覆えば車になるのである。例えば、NASCARなどのストックカーでは、この手法が取り入れられている。

フレームに、タイヤ・ホイール、内装、インパネ、ドア、外装パネル、バッテリーを組み付ける事で製造が可能となる。用途に合わせていくつかのフレームサイズがあれば、乗用車は全てカバー出来る。最大のすり合せ技術である車体(モノコック)、NVH (Noise, Vibration, Harshness)から解放される。

フレームの標準化は、電気自動車が普及するのに不可欠

電気自動車の最大の欠点は、短い航続距離であろう。従来のガソリン車(ハイブリッドを含めて)並の300-400マイル(500キロ以上)の容量があり、且つ、高速フル充電(5分程度)の出来るバッテリーが理想であるが、最後まで技術的なネックになると思う。バッテリーを標準化させ、ガソリンスタンドならぬバッテリースタンドで、空バッテリーを満タンバッテリーと交換する解決策が考えれる。

標準化された重いバッテリーをさせるためにもフレーム構造は最適であり、標準化されている事が必要となる。(大容量、急速充電のバッテリーが開発されたとしても重くならざるを得ないと思う。よってフレーム構造が必要)

電気自動車は普及するか?
アメリカ市場では、日本,アジア、ヨーロッパに完全に遅れて、最後の最後まで(30-40年)普及しないと思う。最大の理由は、電気自動車向きの小型車の需要が限られている事である。(アメリカ市場での超小型車の将来性については、デトロイトオートショーを参照)
日本とヨーロッパでは、普及する可能性がある。電気自動車が普及すると考えると、家電化起こる事を上記の様に想像出来るのだが、本当に普及するかどうかは、個人的には非常に懐疑的。よって、下記の日本メーカー戦略も今ひとつ歯切れ悪し。

車の家電化から離れて、全体を眺めてみる。

日本メーカーの戦略は?
グローバルマーケットを、車の家電化は日本(他のアジア市場も急速に追いつく可能性もあり)とヨーロッパを中心に普及、アメリカ(南北、ついでにアフリカも)は内燃機関の自動車がまだまだ継続、インドを代表とする人口密度の高い発展途上国は屋根付き4輪オートバイ(タタ的)の拡大、と大雑把に3つに分けて考える。

1.電気自動車については、組み立てに特化したスリムな組織とし、モジュールは部品毎に子会社化
2.ガソリン、ディーゼル、ハイブリッドの開発、生産はアメリカに集中する
3.屋根付き4輪オートバイ(タタ的)には手を出さない

現状のままいくと、日本メーカーはそれぞれ独自で電気自動車の開発を進めて、もし、私が考える様な標準化されたフレームで電気自動車が普及するとなった時は、一気に置いて行かれる様な気がする。モジュール化を不可避と考えて、グローバル標準をリードするというアプローチを考えておく事が必要だと思われる。