YS Journal アメリカからの雑感

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オバマ、悲痛な軍へのメッセージ

2014-09-23 07:35:26 | 中東問題
アメリカによるシリア国内にあるイスラム国への空爆が始まった。

一番驚いたのは、アラブ諸国、サウジ、アラブ首長国連邦、ヨルダン、バーレーンが参加している事だ。アラブ諸国との連携が密かに進行していたようだ。

イスラム国に対する腰の定まらない発言や声明から憶測すると、オバマが舞台裏でアラブ諸国と連携を進めていたとは到底思えない。又、元オバマ政権閣僚からのオバマ批判、アメリカ軍幹部のオバマと矛盾するコメント等を総合して考えると、オバマが執拗にアメリカ地上軍の投入をしないと強調している真の意味が見えてくる。

オバマが大統領に就任して以来、アメリカ軍は不承不承従ってきたが、中東での軍事状況が悪化してきてホワイトハウスの世迷言に付き合っていられない状態になっていたのだ。

イスラム国への対応では、シリアの扱いを巡って対立があり、軍がオバマを押し切ったのであろう。軍がここまでやらざるを得ないのは別の意味で大問題であるが、それほどまでにオバマの外交、軍事戦略は酷かったのだと思う。

オバマが地上軍投入しないと繰り返すのは、中間選挙へ向けたアメリカ市民に対する政治的なアピールではなく、アメリカ軍に対する切実なメッセージだ。もうこれ以上は軍の言いなりにはならないと言うオバマの悲痛な叫びなのだ。

Sykes-Picot Agreement (サイクス・ピコ協定)

2014-09-19 20:36:56 | 中東問題
以前取り上げた Glenn Beck は、活動の場を自分自身で築き上げたインターネットメディアに移行している。(The Blaze)

最近はサテライトラジオでたまに聞くだけになってしまったが、今週は運転する事が多く、偶然にもイスラム国の特集テレビ番組の前宣伝に当たった。

Glenn Beck は大胆にも、イスラム国の根本的問題を "Sykes–Picot Agreement" (サイクス・ピコ協定)にあると断定している。

話は第一次世界大戦に遡る。連合国(イギリス、フランス、ロシア等々、アメリカも加担している)は、オスマントルコ帝国が押さえてい通商ルートを確保する為に、アラブ人に国家設立を約束しオスマントルコ帝国への反乱を支援する。(映画『アラビアのローレンス』が正にこの辺の事情を描いている)一方で、連合国側は大戦後のオスマントルコ帝国の分割を秘密裏に協議していた。この分割を上手く運用するために、いろんな王家を傀儡にし人工的な国境を設定して複数の国を作り、お互いに牽制し合う様にしたのだ。これらの傀儡のトップがアサド、カダフィらの独裁者なのである。

図らずも「アラブの春」は、これら傀儡政権の消滅過程であり、結果的に広大な空白地帯が出現した。そして、その空白にアラブ大国を目指す集団、つまりイスラム国が必然的に出現したというのだ。

Glenn Beck の結論は、現在の中東に正解や特効薬は存在しない。歴史を正しく認識して、その時々の最良策を打つしかないというものだ。

オバマ政権が重い腰を上げて取り組み始めているシリアの穏健反政府組織への軍事訓練や武器供与は、基本的に間違っている。対イスラム国ではなくアサド政権打倒に使われた挙げ句、最終的にはイスラム国に渡る可能性が高いと思われる。一年前、アサドに対して Red Line を通告しながら、結局何もしなかったオバマ政権は、国内外の信用を失ったが、究極的には正しい選択をしていたと思われる。ここに来て、弱腰批判に耐え切れないのとアメリカ軍の地上戦投入を避ける為に、間違った方針を打ち出している。

又、オバマ政権はイスラム国はテロ組織でムスリムではないと、トボケた事を言っているが、アラブの悲願としてイスラム国は傀儡政権の末裔を打倒する義務感があり、その延長にはイスラエルは勿論、パレスチナの殲滅すらある。イスラム国にとってはオスマントルコ帝国の領土が自分たちのものなのである。

アメリカ、イギリス、フランス、そしてロシアは、過去の清算の意味も込めて(もしくは懐古的に)、ここは徹底的にイスラム国を叩いて置くべきであろう。サウジ等傀儡生き残り国家にも積極的な協力への圧力を掛けるべきだ。シリアで手を結ぶのは反政府軍ではなくアサド政権だ。軍事的にも隣国であるトルコも引っぱり込まなければならない。

どちらにしろ、中東問題への介入は、悪い選択と最悪の選択の間にしかないのだが、オバマにはそんな戦略も歴史認識も国際的信用も、そして一番肝心なやる気がないのだ。


特番は観ていないが、エッセンスはこれ。

"The 100-Year-Old Agreement You Need to Know About to Understand What’s Driving the Islamic State"

以前にも告白している様に、中東の事は全く分からない。しかし、日本の外務省中東専門家だって間抜けな事を言ったりする位なので、情報源の多様性とクロスチェックが欠かせない。Glenn Beck の分析はひとつの大きな側面として的を得ている。シンプルな解決策が無いと明言している謙虚さが、信憑性を高めていると思う。


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"Restoring Honor 8/28" (8-30-2010)
"Glenn Beck" (8-3-2010)

Mixed Messages

2014-09-14 18:20:06 | 中東問題
イスラム国(ISIS もしくは ISIL)への対応について、先週オバマ大統領は、積極的な対テロ展開を行うとの声明を発表した。アメリカ人ジャーナリスト二人の殺害ビデオが流布した事で、アメリカ世論も対テロへの関心が高まってきており、概ね好意的に受け止められている。

但し、攻撃は空爆のみで、地上戦への軍投入はない事、アメリカ単独ではなくイスラム諸国を含む連合体で対応する方針を打ち出している。

ここまでもイラクではイスラム国への空爆を行っている。よって、大きな違いは、イスラム国の首脳が居ると考えられているシリア国内への空爆を行う事と、シリアの反政府軍への軍事訓練と武器提供を行う事である。

オバマ政権は、イスラム国の急激な台頭について完全に対応を間違い続けている上に、後手に回っている。その上、今回の声明でも、過去の見解と正反対の方針が打ち出されており、オバマ声明の意図を巡りやや混乱状態になっている。

声明を聞きながら思ったのは、まず声明発表自体が政治的であるという事、自分の手の内を宣言する愚、兵力の逐次投入による泥沼化の心配(ベトナム戦争の悪夢)、そして、オバマが有言実行するのかという根本的な疑問である。(声明の中でも、数年も掛かるともコメントしており、最初から遂行責任の回避を決め込んでいる)

イスラム国問題の根が深いのは、イラクからのアメリカ軍撤退、シリア問題でのヘタ打ちにだけで無く、イランのヒズポラ支援とイスラエルーパレスチナ戦争が複雑に絡んでいるからだ。

オバマは「アラブの春」とか独裁者追放とか、アメリカのスーパーパワーをオモチャの様に使ったため、中東はひっちゃかめっちゃかになってしまった。

今でもアメリカ軍がイラクに静かに駐屯していれば、随分違った状況であったであろう。覆水盆に返らずとは、正にこの事だ。

アメリカの厭戦気分に訴えて大統領になったオバマは、政治的に戦争が出来ないという解釈が多いが、アフガン等での空爆にはやたら積極的で「私は人を殺すのが得意だ」とか言うジョークを飛ばす位だから、自分にとって無責任な人々への攻撃には頓着がない。

一方で、無神論者のオバマは、心の底から死が怖いのであろう。死が必然である軍隊に対して、最高司令官として自分の信念、覚悟、使命をキチンと受け入れた上で毅然とした命令が出せないでいる。だから、残虐な3万人規模のテロ集団との戦いに空爆だけで何とかなるという幻想に捕われているのだ。間違えてマレーシア航空機を撃ち落としても平然としらばっくれているプーチンとは役者が違う。

オバマの外交政策の失敗、特に中東でのミスは、世界中に長い間禍根を残すであろう。


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"イスラエル、再びシリア空爆" (11-6-2013)
"シリア中間総括" (9-6-2013)
"Credibility on the line" (9-5-2013)
赤勝て白勝て大統領" (8-22-2013)

イスラエル、再びシリア空爆

2013-11-06 10:02:22 | 中東問題
予想通りであるが、オバマ政権にとってシリア問題の事はすっかり過去の出来事になっている様だ。そうでなければ、イスラエルがロシア製ミサイル SA-125 がヒズボラに渡るのを阻止する為にシリアの港町 Latakia を空爆したなんて口を滑らす訳が無い。(参考記事はこれ

アサド政権ですら政府施設での爆発は認めているものの、イスラエルによる空爆とは言っていない。

未だ、ロシアが何も言っていないのが不気味だが、アメリカが何も出来ないのを見通してシリアを利用してイスラエルに揺さぶりをかけ、せっせと中東での立場を強化している。イランにしろ、ロシアと親密というわけでは無い様だが、アメリカがイランへの経済制裁を行っている影響で、武器輸入をロシアに頼る関係になって来ている。

大局的に見ると、ロシアがイランを含む反イスラエル諸国との関係が深まれば、原油輸送でホルムズ海峡を通らざるを得ないインド、中国、日本にも睨みを利かせる事が出来る。

今更ながらだが、アメリカはシリア問題で取り返しのつかないミスを犯したのでは無いか?

一方で、イスラエルはその後も坦々と自国防衛の為にギリギリの軍事行動を隠密裏に行っているのだが、アメリカがあっさりリークするので怒り心頭であろう。余計な事を言う癖に、アメリカはシリアでは何も出来ない立場に自分で嵌まっており、オバマ政権は軍事行動を伴わない外交の成功と間抜けな自画自賛までしているのだ。

プーチンあたりは、オバマが永遠に大統領である事を間違いなく期待している。


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"シリア中間総括" (9-6-13)

U.S. to Suspend Most Financial Aid to Egypt

2013-10-22 10:46:44 | 中東問題
アメリカ政府がシャットダウン中だったために話題にならなかったが、WSJ の記事 "U.S. to Suspend Most Financial Aid to Egypt" によると、アメリカ政府はエジプトへの支援を削減する事を決定した。

従来の $1.5B (1500億円)からの削減幅は報道されていないが、対テロ費用だけが例外とのことなので大幅削減と思われる。アメリカ政府にとっては大した金額ではないのであるが、エジプト、特に親米的であった軍への心理的な悪影響は避けられず、中東全体に長期的に大きな影を落とすだろう。

この支援削減は、オバマ政権の中東政策においてどのような位置付けなのであろう。対テロでは、軍を撤退させながら、無人機での攻撃には積極的であったりして、兎に角分かり難い。

確実に言えるのは、日本にとっての中東問題、つまり石油輸入の安全性確保のための負担が増えていく事であろう。

シリア中間総括

2013-09-06 21:29:50 | 中東問題
先週はメキシコ出張、夜はやることがないのでホテルでずっとテレビを見ていた。英語チャンネルはニュースと映画しかなく、面白い映画がなかったので必然的にニュースばかり、いつもの Fox News だけでは無く、CNN International, BBC も併せて観る事が出来た。

今一番のトピックはやっぱりシリア関連で、G20開催が重なったこともあるしオバマ政権の迷走があるので、大騒ぎだ。

自分なりに現時点での全体像が掴めた気がしてきたので、ここで一度まとめておこう。そして暫くは成り行きを見守る事にする。

まず何でこんなにもこんがらがっているのかを考えてみよう。オバマ政権が対応を間違えた影響が、アメリカ国内だけでなく世界を混乱させているのが私なりの結論だ。

伏線は、昨年8月のオバマ大統領の "Red Line" 発言に遡る。大統領選の最中で、ロムニーが勢いを増していた時期のコメントである。オバマは選挙キャンペーンの一環として、化学兵器絡み、リベラルらしい人道的な考慮を示しながら、テロに対してタフな大統領を強調する気持があった。(本心では無く、只のリップサービスとして)

一方で、シリア内戦が始まって2年、始終ドンパチやっているわけでは無いが、シリアとは40年も交戦状態にあり一番正確な情報を持っているイスラエルが、今年に入って4回シリアを空爆している。アサド政権が、イランから供給された武器をイスラム系テロ組織であるヒズポラに渡るのを阻止する為だ。ヒズボラは元々シリアとイランの支援を受けており、反イスラエルを強く打ち出しているテロ組織である。シリアでもアサド政権側で戦っているとの情報がある。

イスラエルとしては、アサド政権が化学兵器をシリア自国民に使用するとかの人道的な理由ではなく、自国防衛の一環としてヒズボラを介してレバノン等に武器が流れない様にする為に限定的な軍事介入をしていたのである。

アサド政権が内戦をやりながらそんな事が出来るのかと思うのだが、イランが支援している事と、劣勢になったらテロ組織や隣国も巻き込んでイスラエルを攻撃して泥沼化させる意図がある。歴史的にも危なくなった中東の独裁政権は、矛先をイスラエルに向ける傾向があるそうだ。

又、シリアが内戦で収まらずイスラエルに攻撃を仕掛けた場合、アメリカが何らかの形で介入せざるを得なくなる。それはアメリカの中東でのポジションとしては最悪で、シリアの後ろ盾であるイランに対し、最大の懸念である核兵器開発阻止の選択肢が狭まるので、アメリカはイスラエルの限定的軍事介入に協力する事を決めたのだと思われる。

2007年にシリアの核施設をイスラエルが攻撃しており、アメリカは核拡散の防止と将来のイランの核施設攻撃の参考にしていると言われている。また、アメリカ軍がイラクから撤退した事でイランのシリア支援が可能になった事もあり、アメリカとしてはイスラエルに借りがある状態になっている。

イスラエルも、シリア内戦が長引き段々と自分たちだけは重荷になってきたのでアメリカの応援を頼んだのだろう。

イスラエル首相との仲が悪いオバマであるが、リビアでの失態もありテロの拡大には敏感になっているので、イスラエル協調を決定したのであろう。

但し、大っぴらにイスラエル支援の為にシリアに対して軍事介入をするとは言えないので、化学兵器の使用を理由にしたのだ。アサド政権へのメッセージだとか、反政府を利する為ではないとか、アサド政権を倒すつもりでないとか、支離滅裂で歯切れが悪いのは、本当の事を言えないからだ。オバマが8月31日の声明で軍事介入に緊急度はなく明日でも、一週間後でも、一ヶ月後でも効果があると言ったのは本当なのだろう。つまり、その間に化学兵器が使用される事など念頭に無いのだ。(将来、この辺の発言の辻褄合わせにもオバマ政権は苦労しそうだ)

シリア内戦での正解はなさそうだが、イスラエルにしてもアメリカにしても、シリア内で化学兵器が使われようがそんな事には基本的には関心がなくて、だらだらと内戦が続き、テロ組織自体の潰し合い、アサド政権への支援をし続けるイランの消耗が、この時点での最適解だと考えているのだろう。

アメリカは、リビアでカダフィを殺した時の様にフランスを矢面に立てて、静かにイスラエルを支援すれば良かったのだ。アサド政権が化学兵器を使用した事で、図らずも錦の御旗を手にし、つい力んでしまったのだろう。

特に、ケリー国務長官の舞い上がりぶりはこちらが恥ずかしくなる位だ。8月30日の力強い記者会見では今にもトマホークを発射する勢いだった。隠密行動を取りたいイスラエルにとっては考えられない展開になってしまったので、アメリカに対して文句が出たのだろう。どんな了簡で騒ぎを大きくしているのだ、と。

オバマ政権としてもまずいと思い、連邦議会への合意を得ると言う奇策で時間稼ぎに走ったと言うのが現状であろう。

アメリカ国内、国際社会ともに冷ややかなのは、オバマ政権のアサド政権への非難と軍事行動計画に統一性が無くからだ。化学兵器使用という人道的な理由での軍事行動というのなら、部隊をシリアに投入して(Boots on the ground)化学兵器の確保出来る作戦が示されない限り、誰も納得出来るはずがない。

突然オバマ大統領に責任を押し付けられた形になった連邦議会の対応も情け無い。オバマ大統領は議会の賛成がなくても、戦争(とは言っていないが)を始める権限があると強弁し、もし否決されても行動するといっているので、採決自体がナンセンスになっているので、堂々と放棄すれば良い。

現在、議会がどちらに転ぶかは混沌としているが、もし承認されてもオバマは行動を起こさない可能性が高い。化学兵器の使用を止めさす為の行動と言い張る限り、トマホークと空爆のみで製造設備、保管場所等を徹底的に破壊するつもりなら、シリア市民を大きく巻き込む事になるし、化学兵器を安全に確保するつもりなら軍隊を進攻させなければならない。

どちらもオバマはやりたく無いので、今頃、一所懸命軍事行動を取らなかった場合の言い訳を考えている事であろう。表舞台では、オバマ大統領が議会工作、ケリー国務長官が同盟国の説得に回っているが、付き合わされるアメリカ市民、各国外務官僚も良い迷惑だ。(今週火曜日に、オバマ大統領の国民に向けての演説が予定されている)

いい訳でなく、善後策をきちんと検討して欲しいものだ。

今更だが、オバマ政権の外交能力は余りにも酷過ぎる。今頃イスラエルとサウジ等の親アメリカの中東の国々の首脳は苦虫を噛み潰したようになっているだろうし、イランは高笑い、ロシアは面白半分にアメリカをおちょくっている。

アメリカが行動に出るなら、ロシアはミサイル防衛システムをシリアに提供すると発言しているが、これはオバマに軍事介入を思いとどまらせる為のネタを提供してやっているのだろう。これでロシアにも借りを作る事になってしまう。オバマが任期中は外交で世界をリードする事は不可能になりそうだ。

それにしても、アメリカの政治家、メディアも、オバマの不手際(それは当たっているのだが)を非難するばかりで、しっかりとした分析が全く提供されない。

中東問題に関しては自分も含めて、結局、誰も分かっちゃいない、と謙虚に考えるしかなさそうだ。


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"結局、誰も何も分かっちゃいない (関連新聞記事追加 2-15-11)" (2-11-11)

Credibility on the line

2013-09-05 05:58:57 | 中東問題
"my credibility is not on the line. The international community’s credibility is on the line. And America and Congress’s credibility is on the line because we give lip service to the notion that these international norms are important. "

これらは、昨日、外遊先スウェーデンでの記者会見におけるシリアへの制裁(軍事)行動を米国連邦議会に承認を求めている事に対する質問へのオバマ大統領のへの回答コメントだ。

「私の信頼性が試されているのではなく、国際社会、アメリカと連邦議会の信頼性が試されているのだ」と真剣な顔をして、大真面目に、恥ずかしげも無く、のたまわったのだ。


"I didn’t set a red line; the world set a red line. The world set a red line when governments representing 98 percent of the world’s population said the use of chemical weapons are abhorrent and passed a treaty forbidding their use even when countries are engaged in war. "

オバマ自らが発言した Red Line(化学兵器使用の一線)についても、自分が引いた訳ではないと言っている。


アメリカ議会は、国家としてのアメリカ、アメリカ大統領(オバマ個人ではなく)発言の信頼性を損なわないようにするために、シリア制裁を承認する方向に傾いているが、予断は許されない。(オバマ政権は、議会の承認が得られなくても行動を起こすと、全く矛盾した事を今でも言っている)

シリアに関しては、既にオバマ大統領の信頼性は失われているで、泥縄対応するよりで戦略を練り直した方が良さそうだ。


日本も他人事ではないのだ、何をするか分からない独裁者が近くにいるし、シリア問題の後ろにはイランがおりホルムズ海峡、石油輸送の問題がある。

赤勝て白勝て大統領

2013-08-22 22:27:35 | 中東問題
エジプトとシリアがどんどん大変な事態になっている。

オバマの外交音痴が世界に混迷をもたらすと言い続けてきたが、特に中東外交の下手打ちには目も当てられない。

一年前、イスラム同胞団のモーシーがエジプト大統領になった時には、民主選挙で選ばれたと支持を表明していた。

モーシーが追放されイスラム同胞団の粛清が行われている現在のエジプトは、間違いなく軍によるクーデターである。しかし、オバマ政権は公式に軍によるクーデターとは呼べない。理由は単純で、軍事クーデターであると表明するとエジプトへの支援(大半が軍事支援)が法的に出来なくなるからだ。

その一方で、エジプト軍との合同演習の中止を発表し、支援の延期、打切りを検討していると報道されている。

「アラブの春」などと浮かれ気分でアメリカの外交を展開しているので、こんな事になっている。

シリアについても、アサド側が化学兵器を使用の一線( Red Line )を超えたら覚悟があると脅したものの、いざ化学兵器が使用された証拠が出てくると、調査と称して結論を先延ばししている。

一方で、反政府同盟に物資支援を行っている。

イスラム同胞団は原理主義でアメリカが支援する組織ではない。シリアの反政府同盟もハマスを含む怪しい輩が混じっており、軍事物資等を供給しているのは間違っている可能性がある。

リビアもカダフィを追い出したものの、アメリカ大使が殺される事態になった。

エジプトはこの期に及んだら、アメリカとして軍をサポートして事態を早く沈静化させるしか無いだろう。暴力はダメなんて、トボケた事を休暇の途中で言っている場合ではないのだ。

エジプトでイスラム同胞団が生き残れば、周辺国への影響は計り知れない。だからサウジアラビアやイスラエルはオバマ政権の優柔不断に業を煮やしてエジプト軍の支援を打ち出している。これらの国は、中東全体にイスラム同胞団等の原理主義者が跋扈する事を恐れているのだ。そして、スエズ運河の運行に支障をきたす事、ガザ地区のテロ部隊(ハマス)に軍事物資が容易に渡る様になる事を心配しているのだ。

オバマ大統領そして政権も、冷静な現状認識に基づいた確固たる方針がないからフラフラしてしまうのだ。対立のある外交問題は、運動会を見にきた近所のおばちゃんが応援するのとは訳が違うのだ。

「イスラム教の預言者ムハンマドを冒涜する映像をきっかけとした反米デモ」という大嘘

2012-09-14 22:20:51 | 中東問題
リビアで殺害された外交官の到着式典で、クリントン国務長官が堂々と発表していた。ホワイトハウスでも報道官が同じことを言っていた。

反米デモの流れで、領事館にランチャーが打ち込まれるような事はない。それも9月11日なのだ。

式典ではオバマ大統領も声明を出していたが、オバマからもヒラリーからも、政権としての悔いの言葉は無かった。

ユーチューブで流れたマイナーな映画の予告編で、大使と領事館職員3人が死ぬような事態になるわけがない。今日、非公開の諜報ブリーフィングが連邦議員に行われたが、ブリーフィング後リビアの領事館襲撃は計画的なテロの可能性が高いとのコメントが続出していた。

オバマの中東政策は完全に失敗したのだ。それをこんなくだらない大嘘の言い訳で誤魔化そうとしている。4つの棺桶を前に、国務長官として同じことを繰り返すヒラリーの(もし、2016年の大統領選を考えているのなら)将来も暗い。

9-11 のタイミングでもあり、事前に不穏な動きの情報もあったとされているのにセキュリティー強化を怠ったオバマ政権の怠慢のために命を落とした人々は浮かばれない。それどころか侮辱されていると言っても過言ではない。

反米デモは中東のあちこちで燃え上がっている。そして今日も、オバマ大統領は選挙キャンペーン、資金集めに大忙しだ。


追記:

ユーチューブがホワイトハウスの映像削除の要請を断って、今でも映像を見れるということだったので、覗いて見た。何のことはない超低予算で、出来が悪く、取り上げる価値もない映像だ。(冒涜するというより、出来悪いコメディー)オバマ政権の人々は観ていないのかも。このくらいの映像で暴動が起こるのなら、イスラム教関連の冗談を言う時は死を覚悟した方がよさそうだ。

偶然な訳がない

2012-09-12 21:24:09 | 中東問題
9月11日にリビアでアメリカ領事館が襲われアメリカ大使が殺害された。エジプトでは大使館が襲撃された。偶然ではないだろう。

それなのにオバマ大統領はリビアの人々がアメリカ大使館の人々を助けた事を褒め、始まって日が浅い民主主義を支援すると間抜けなコメントを出している。大使が殺害されているのだから、戦争を辞さないくらいのコメントを出す必要があるだろう。(犯人を司法に掛けれると、これまた痴情殺人へのコメントの様なことを言っている)

エジプトについても、まずエジプトのアメリカ大使館が、原因とされたモハメッドを侮辱する映像の事を謝罪する声明文を出している。

イランの核開発、混迷の度合いを深めるシリア、孤立を強いられるイスラエル、昨年のアラブの春以来、中東はざわついており、何が起きてもおかしくない。そんな時に、このタイミングで、こともあろう自国の大使が殺害されたのだ。もし、状況の見通しと何らかの外交、軍事上の準備がされていないのなら、対策を緊急に練る必要がある。

それなに、本日もオバマ大統領は予定通りラスベガスで選挙キャンペーンを行っている。

Bluff

2012-03-04 00:48:44 | 中東問題
"I think that the Israeli government recognizes that, as president of the United States, I don't bluff." アメリカ大統領が雑誌のインタビューで、こんな情けないコメントをしないといけないのだ。

軍事行動を辞さない事が、脅しではないと念押ししているのだ。わざわざこんな間抜けな事を言うのは、逆にイランに安心感を与える結果になるだろう。

イスラエルがイランの核施設を爆撃する決断をしても事前にはアメリカに通告しないといっているらしいが、オバマ政権をオバマ大統領の発言等を考えると、当たり前だ。(イスラエル空軍がイランに行くためには横切るイラクの制空権は、昨年暮れにアメリカ軍が撤退したのでイラクが管理しているのだろうか?)

対イラク戦争を "a distraction" と表現するのも不適当な気がする。

アメリカは財政問題を抱えているので戦争をしたくない、出来ないのではなく、オバマがやりたくないだけだ。

オバマの発言とか、心理状態については、私のような素人でも手に取るように分かるので、イランは高笑いをしているだろうし、イスラエルは、ため息をついていることだろう。

それなりの強気を見せつつ、アメリカの厭戦気分を大統領選に上手く利用したいオバマであるが、3年も同じパターンなので、誰も Bluff には騙されなくなってきている。そんな事を潜在的に理解しているので、アメリカ大統領の権威まで使って、脅そうとしているのだ。

パレスチナの国連加盟申請

2011-09-25 09:02:27 | 中東問題
日本の報道では、人権的な立場でパレスチナ人に同情している感じであるが、ちょっとネイーブ過ぎる。遠い国の事で、宗教絡みなので、なかなか興味が湧かないトいう事もあるので、お座なりになるのは仕方ないとは思う。

イスラエルはパレスチナ国家を認める気があるのに、パレスチナにイスラエル国家を認める気がないという基本的な問題がある。特にハマスが支配しているガザは、今でもイスラエルにロケット弾での攻撃を繰り返している。一方、イスラエルはガザに向かって無差別な攻撃は行っていない。

アメリカが拒否権を使ってでも阻止しようとしているのは、イスラエル滅亡を掲げている団体を国家として認めるわけにはいかないからだ。オバマも就任当初から青臭い事を言っていたが、従来のアメリカの方針を変えるわけにはいかないという所であろう。

また、現在のパレスチナの繁栄の一部はアメリカからの支援による所も大きい。毎年 $5B(約3800億円)のお金が注ぎ込まれている。(アメリカが拒否権を行使しなければならない場合は、打ち切られる可能性が高い)

日本は、利害関係が少ないのでハッキリした立場を表明していないようだが、今でも常任理事国を目指すのであれば、もっと上手く立ち回るべきであろう。アメリカと違う立場を取るのも手であるが、基本的には間違った戦略なので、その後の中東外交に行き詰まる事になるであろう。(もし、中東外交方針があるとすればだが)

今回、中国、ロシアは、申請に賛成の意向の様だが、対アメリカという事と、アラブ諸国へのおべっかだろう。(分かる様な、分からない様な)

アメリカの方針が少しフラフラした事で、パレスチナがちょっとその気になったという事であろう。もし、アメリカが拒否権を行使する事になったら、アメリカやイスラエルでのテロが増える可能性が高いだろう。

オバマ大統領 中東政策演説

2011-05-20 06:39:29 | 中東問題
演説の途中から観ていたのだが、退屈でウトウトしていて、全く内容を把握出来なかったが、非常に重大な発表をしている。(相変わらず長い(50分)が、演説の映像はこちら

なんと、イスラエルに1967年の第三次中東戦争(六日戦争)以前の国境まで下がれと提案している。

今日金曜日、イスラエル首相との会談があるのだが、タイミングと言い内容と言い、最高なのか、最低なのか、まともなのか、的外れなのか、新しいのか、焼き直しなのか、新戦略なのか、既定路線なのか、全く判断が出来ない。

現在の中東状況が、六日戦争 (Six Days War) によって形作られたという認識があり、この本でも読んで(未だ買ってもいないし)、そのうち勉強しようと思っていたが、こんなところで出てくるとは。

エジプト騒動の総括、クーデターをお考えの自衛隊幹部に告ぐ

2011-02-13 12:28:13 | 中東問題
騒動なのか、争乱なのか、動乱なのか、適当な言葉が無いが、ムバラクが辞任した事だし、分からないとは言いったものの、この辺で総括しておこう。

私も、結果を見れば、今回の騒ぎは、エジプト軍によるクーデターと考えるのが、一番自然だと思う。

エジプト暴動で分かる日本のインテリジェンス風景』のエントリーで、紹介した極東ブログの『エジプト争乱、後半戦について』が、一番的確に状況を説明していると思う。(アメリカ政府の関与に関しては、ちょっと違和感があるのだ、大勢に影響なし)

同じく紹介した中東の窓でも『エジプト情勢(今後の内政)』として総括してある。野口雅昭さん、今回も自ら、「とんでもない見当違いの意見であることは間違いない」と確信しているが、本当にその通りだ。この人、自分に外交とか諜報とかの能力が無いのをわきまえいて、本当に謙虚で正直な人だ。多分、現役外交官の時に何らかの状況分析、予想を行って、全く外した事があるのではないかと思う。その事を覚えているのだろう。(改めて、日本の外務省は役立たずだと思ってしまう。優秀でなかったから外に出た(出された)のかもしれないが、それなりのインテリジェンス能力があったと思った佐藤優は芸能人に成り下がり、天木直人は余りに間違った狂った事しか言わないので、人気が落ちて、益々過激な事を言う悪循環に陥っている。中身が伴わないと、元外交官で食って行くのは難しそうだ)

今後、中東の各地に今回のエジプト争乱の影響が及ぶのだが、エジプトと同じ様な展開をする国は無く、結末も全然違ったものになるだろう。民主化への純粋な願望があるのかもしれないが、結局、誰かに利用されるだけで、お国事情の違いがあり、エジプト軍のような確固たる力を持った組織が存在してないと、偶発的な出来事が多くなり、どのような展開、結末になるのかは、誰も予想出来ないであろう。

今回の騒ぎを軍によるクーデターと考えると、クーデターを考えている自衛隊幹部にとっては、非常に参考になるケーススタディーであると思う。

日本で、世界が注目する様な何らかの大規模な反政府デモが発生したときに、勝手に(政府による出動要請でも良いのだが)鎮圧に出動する。但し、国民への発砲は絶対にしない。デモが盛り上がりに盛り上がったと時期を見計らって、アメリカ大統領から時の首相に辞任要請の電話をホットラインでしてもらい(勝手にするかも)、首相以下行政府のメンバーには、米軍のヘリコプターで沖縄に逃げてもらい、軍の最高幹部会が臨時に行政を牛耳るのである。議会は、もちろん停止状態。

下準備としては、アメリカ軍とのパイプを太くしておくのが肝心かと。国連軍などでこっそり戦闘に参加して、自衛隊はやれるんだという事を見せつける必要がある。また、戦車などの兵器も、わざわざ国産体制維持のために高いコストで日本企業からの購入等を止め、アメリカからドンドン輸入をする。日本の財政改善にもなり、一石二鳥である。このような活動を10年位続けているうちに、日本でも反政府の機運が盛り上がり、機が熟すであろう。

このエジプトの影響で、中東辺りに国連軍が展開する可能性が高くなるので、アメリカ軍との協力もし易くなる。

日本の政治家の皆さん、エジプトの騒ぎは、遠い国の話として考えていたら、ダメですよ。

結局、誰も何も分かっちゃいない (関連新聞記事追加 2-15-11)

2011-02-11 12:19:44 | 中東問題
ムバラク大統領は、今日のスピーチで、大方の予想や報道を裏切って(?)、辞任するとは言わなかった。

ホワイトハウスも「信じられない」という驚きに包まれていたらしい。CIA も国務省もアメリカ軍も軍需産業企業体も、インテリジェンスという意味では、お手上げ状態の様だ。

この後のセリフ、このブログで三度目の登場となりますが、やっぱり、デモの真っ最中にラクダに乗った人が登場してからは、素直に分からないと言う方が、正解のようだ

日本も次に基地問題ででも、反米デモする時には、動物もしくは奇抜なもので登場すれば、アメリカのインテリジェンスを錯乱出来るかも。ラクダに乗るのは伝統があるので、対抗するには、金太郎にあやかり熊でしょうか?(難しいそう)後、私の乏しい想像力で考えれるのは、竹馬くらいでしょうか。

追加(2-15-11):朝日新聞の記事

以下は、記事の一部。ラクダの行方が心配です。

 カイロのタハリール広場では2日、ムバラク派がデモ参加者を襲撃。馬やラクダに乗って突進したのは、ギザの御者たちだった。アブドさんによると、ムバラク派の地元議員が「デモが続けば観光が打撃を受ける。やめさせるために協力を」と説得して回ったという。アブドさんの友人もラクダに乗って参加した。

 「やむにやまれぬ気持ちだったんだ。おれたちも食わなきゃならない」とアブドさん。その後、友人とは連絡が取れず、当局に拘束された可能性がある。ラクダの行方も分かっていない。