YS Journal アメリカからの雑感

政治、経済、手当たり次第、そしてゴルフ

原油相場

2016-01-25 12:34:34 | 化石燃料、エネルギー関連
こんな時期なので、原油相場の方向性を考察しておこう。

大原則として、石油も商品なので需要と供給で決定する。石油はいろんな特殊要素がある製品(コモディティー)ではあるが、その原則から逃れる事は出来ない。

まず、需要。

2000年中頃から続いた上げ相場が崩れたのは、需要(及び需要の伸び)が弱った事が原因であろう。中国を始めとする新興国の停滞、先進国の頭打ちのダブルパンチであろう。

そして、供給。

シェール、オイルサンド等の開発、産油制限しないOPECのお蔭で、この2年で10%増加している。

保管キャパが一杯になってきているので、これ以上の供給は出来なくなる可能性が高い。よって、石油相場は底を迎えていると思う。

今後の需要であるが、2035年には現在の1.3倍位になると予想されているが、このくらいの増加なら供給側は軽くこなしていけるので、この先20年位は程よい相場が続くのではないだろうか? (1980年にバレル$100を付けたが、この高値を更新したのは2008年のリーマンショックの直前)

第一次石油ショック後の供給には大規模な投資が必要であった。しかし、シェールで手軽に供給が増やせるようななったし、現存の油田が干上がる事もなさそうである。よって、需給のバランスは暫く崩れそうにない。よって、比較的狭いレンジでの推移になるだろう。

第一次石油ショック以後ずっと石油は枯渇すると脅されているが、私の生きている間は大丈夫そうだ。心配なのは、大幅に値下がりした手持ちのエネルギー関連ファンドの方だ。

株相場との関連が言われているが、弱含みの石油需要からすると景気が後退しているので、株価は下がって当たり前だと思う。但し、長期的には安め安定の石油は景気の大きな下支えになるだろう。


Does the oil price meet the invisible hand?

2014-12-01 01:45:55 | 化石燃料、エネルギー関連
原油価格が暴落している。

先週の OPEC 総会で減産合意が出来なかった事で更なる下落となった。今年7月バレル $116 のピークから 40% 近くさげている。

原油価格が下がる度、価格維持のため OPEC は減産してきたが、合意に拘束が無いので真面目に減産してきた最大の産油国サウジアラビアがその度にマーケットシェアを失ってきている歴史があるので、その気がなかったようだ。

しかし、今回のサウジの意図は違うとの噂がある。アメリカのシュールオイル開発を阻止するつもりだとう言うのだ。サウジの採掘コストはバレル $10、シェールオイルは $70 と言われている。(カナダのサンドオイルは $50)相場を崩してシュールオイル開発、投資意欲を砕こうというのだ。

話としては面白いが、真実味は乏しい。結局、アメリカを含めて産出量が増えたのに需要が思ったほど増えていないのだ。結局、供給と需要だ。OPEC の産出量は世界全体の3分の1しかないのである。合意できなかった減産量は OPEC の 1% 、総産出量の 0.3% でしかない。

だが、原油価格が下落したことで、世界各国にいろいろな影響が出そうだ。

中東で一番困るのはイランだろう。経済制裁は甘くなってきているが、肝心の原油が安ければ外貨獲得の目算が狂う。外貨獲得で言えば、ロシアやベネズエラの経済も混乱しそうだ。

輸入国の日本や中国は一息つけるかも。

アメリカでは、ガソリンが安くなった分だけ消費に回るお金が増えるので、大歓迎。但し、この価格帯だと来年以降のシェールオイルへの投資は激減となる見通しだ。アメリカのオイル業界は21世紀になっても、ブームエンドバストのサイクルから逃れられない運命なのだろうか?

さて、全く個人的な話だが、バレル $80 を切った辺りで底だと思ったので、活況の株式とは全く関係なく下落しているエネルギー関連ミューチュアルファンドを一か月ほど前に購入したのだが、先週金曜日の原油一段安でこちらも下落。さて、どうなることやら。

Food vs Fuel

2012-08-14 11:00:21 | 化石燃料、エネルギー関連
アメリカは、世界のとうもろこしの40%を生産している。そのうちの40%がバイオ燃料の原料になっている。つまり、アメリカだけで全世界のとうもろこし生産量の16%を燃料にしているのだ。

今年は、アメリカ中西部の旱魃で大幅な減産が予想されており、このままバイオ燃料用としてもとうもろこしを浪費(?)すると、より厳しい価格高騰となりそうだ。

国連と食料関係の国際機関は各国に対して、バイオ燃料の義務付けを廃止して欲しいと要請を出している。

アメリカは、毎日80万バレルのバイオ燃料を使用しており、これは石油消費の5%に相当する。義務付けだけではなく、オクタン価調整や排ガス規制対策としても利用されている。補助金で、中西部の田舎に巨大なプラントが数多く建設され、今まで何もなかったド田舎の貴重な就職先になっていたりするので、問題は更にややこしいなっている。(バイオ燃料自体にも継続的に補助金が支出されている)

バイオ燃料への補助金は、農家への豊作貧乏対策の一面もあったのだが、例え豊作であっても、食料を燃やすより、石油、天然ガス等を掘ったほうがまともだと、私は思う。

うちの電気代

2012-05-08 04:53:35 | 化石燃料、エネルギー関連


エネルギー問題やら原発問題やらを偉そうに書いているのに、自分がどの位エネルギーを使っているのか良く知らないかったので、取り敢えず、自分ちの電気代を検証。電力会社(というか、まとめてガスもやっている様だが)は、DTE Energy

家族構成は、私、妻、小学生の娘2人の4人。コンドですが、約 2,000 sft (約55坪)+フルベースメントのスペースがあり、ダクトを家全体に回してある典型的な冷暖房システム。お湯と暖房はガス、冷房は電気。コンロは全て電気だが、テレビは一台だし、過激な家電製品は無い。

添付してある写真(クリックすると巨大になる)は、一年中で最も電気を使わない4月の電気代の内訳、使用量は 532 KWH で $85.11。内訳を見ると、いろんなチャージが着いているが、KWH 当り $0.16 (80円換算で約13円)。

使用量は冷房を使う夏場が多く、一日当り 34.9 KWH、月換算で $1,082 KWH。一日当りの年平均は 23.5 KWH、一年で 8,578 KWHの電気を家族で使用している。

電気代が高いのか安いのか、使用量が多いのか少ないのか、全く見当がつかない。情けない。

では、電気代の内訳に戻ると "Power Supply Charges" と "Delivery Charges" に別れている。発電と送電と言う事だろう。発電分が $44.28、送電分が $40.83。

発電の方が2つに分かれているのは、安い方が夜間分と言う事だろうか。"Renewable Energy Plan Surcharge" が $3.00、知らないうちにとられている。

送電の方の "Other Delivery Charge" には、核廃棄物処理費用も含まれているとの但し書きがある。(DTE Energy の原発発電割合は 20%)

因に同月のガス代は $62.05、使用量は 62 CCF (6,200 cubic feet) (約176㎥)。暖房を使う冬場は、この約 1.5 倍くらいになる。

$147.16 これがうちの先月の光熱費。(上下水道代はコンドの組合費(Association Fee)に含まれている)

ついでに光熱費の英訳は utility cost、通常は utility だけで通じる。

Fracking

2011-12-10 17:43:08 | 化石燃料、エネルギー関連
日本語でもシェールガスのニュースを頻繁に見る様な気がする。

アメリカでは、この10年でアメリカ国内の生産量は5倍でになっているし、莫大な埋蔵量があるし、石油に比べて価格も安定的に安くなっているので、エネルギー自立の可能性と相まって、経済的にも政治的にも良いこと尽くめな感があるのだが、採掘が環境に及ぼす影響に対する懸念が出てきている。

の問題である。

固い岩盤に閉じ込められたシェールガスの存在は以前から知られていたが、フラッキングと呼ばれる技術が開発された事で、一気に採掘が進んだ。(NY Green Fashion というサイトの記事『水道の蛇口からガスが出る?水圧破砕法(ハイドロ・フラッキング)によるシェールガス開発の危険性』、採掘方法や問題点、上手くまとまっている)

基本的には、2つの問題がある。

まず飲み水の問題。アメリカの田舎は上水施設の普及が低く、井戸水の所が多い。天然ガスが存在する岩盤は、その井戸水の水源より遥か深い所にあるのだが、当然水源をパイプが通る事になる。因果関係はハッキリとはしていない様だが、汲み上げた水から、フラッキングに使用される化学薬品が検出されるとしている。(『米ワイオミング州の水汚染はフラッキングに関連か』(オリジナル記事は、"EPA Ties Fracking, Pollution" (12-9-11))


また、天然ガスが溶け込む事があり、蛇口から出る時に気化して(?)、ライターを向けると火をを吹いたりする事がある様だ。

このイラストの "Aquifer" が、帯水層と呼ばれる地下水がある所。(これを見る限り、化学薬品が漏れ出したり、天然ガスがとけ込んだりするのは難しそうだ)



もう1つは、フラッキング用の水の確保の問題。テキサス州とかの南部で乾燥地帯では、フラッキング用の水の確保自体が問題になっている。採掘井戸1本当たり 6M Gallon (1,585 ㎥)の水が必要である。因に、640エーカー(1 square mile)で20万ドル(約 1,600 万円)のコーンを育てるのに 407M Gallon (107,516 ㎥)が必要らしいが、これだけの水があれば、$2.5 B (約 2,000 億円!!)のガスがとれるそうだ。

水の争奪戦が激しくなると予想されている。

また、フラッキングに使われた水は、ガスと一緒に上がってきて再利用されるのだが、循環する度に化学薬品の濃度が高まることや地表で漏れだす事の心配もある。

この化学薬品の開示は(企業秘密扱いという事で)義務付けられておらず、懸念を拡大する要因になっている。(上のリンク記事で、『ブッシュ政権時の2005年に制定されたエネルギー政策法により、(飲料水安全法の)規制から水圧破砕法を除外する旨の改正が加えられたのです。
当時副大統領だったのは、天然ガス掘削設備を製造するハリバートン社の元CEO、ディック・チェイニーであり、現在この法律は「ハリバートンの抜け穴」とも呼ばれています』とあり、怪しげな展開になりそうである)

オバマ政権、パイプライン建設許可を保留

2011-11-26 06:44:06 | 化石燃料、エネルギー関連
ニュースとしては少し古くなったが、今月初旬に、オバマ政権は、カナダアルバータ州からアメリカのメキシコ湾(テキサス州)に石油を送るパイプラインの建設許可の判断保留を決定した。

ルートの環境アセスメントが不十分であるという理由であるが、判断を2013年に下すらしいが、2012年の大統領選挙を睨んでの環境団体の票離れを恐れた判断と噂されている。どちらにしろ許可される事は確実視されているので、政治的な判断に間違いないであろう。(それにしても、政治的というのもお粗末なくらいである。自分の選挙のためだけである)



カナダは、産油量がどんどん上がってきている。特に内陸部のオイルサンドから分が増えており、パイプラインの拡充は急を要している。

カナダの原油生産量はアメリカの約半分、クエートに匹敵する。そのうち、50%がオイルサンドからだ。

メキシコ湾(アメリカ)がダメなら、太平洋だという事で、カナダの西海岸へパイプラインの計画も本格化しそうな雰囲気がある。「アメリカがダメなら中国だ」というカナダの脅し文句も、その途中にある日本としては寂しい限りである。

カナダと中国(というかイギリス続きで、香港経由という印象が強いのだが)の関係を考えると、利害関係も一致するし、アメリカとしてモタモタしている場合では無い。(日本も中国に負けている場合ではない)



オバマも「アメリカの次世代に、(パイプラインで環境が破壊される事で)汚い水を飲ます事は出来ない」などど、チンピラアジテーターみたいな事を言っている場合ではないのだ。

北米大陸の石油は、アメリカが地の利を活かして、安定、低価格での供給を確保し、中国には、中東、アフリカで、汗をかいて貰う様にしなくてはならないだろう。

THERE WILL BE OIL

2011-09-19 06:45:34 | 化石燃料、エネルギー関連
WSJ 記事の見出し "There Will Be Oil" は、映画 "There Will Be Blood" からのパクリだと思うのだが、いつもの様にそのセンスに感心する。(映画を観ていないのだが、テキサスの石油採掘が背景になっている様なので、尚更)

Review セクションで、明日発売開始予定の Daniel Yergin の最新著作 "The Quest" の要約風なエッセイを、自身が書いている。

内容的には、油田開発の技術革新で、採掘量だけでなく将来採掘可能な埋蔵量予想も増えているという事だ。数年前に話題になった、Hubbert Peak として知られる石油採掘量が頭打ちになる懸念は、暫くは無いらしい。

Daniel Yergin の著作と言えば、"The Prize"(「石油の世紀」), "The Commanding Heights"(「市場対国家」)は、必読といても良いだろう。(と言いつつ、「石油の世紀」日本語でしか読んでおらず、英語版は手付かず、"The Commanding Heights" は積ん読状態)

買う事は間違いないと思うが、キンドルと新刊との価格差($1.09)が大してないので、本の方を買ってみようかと思う。


過去の関連エントリー

「20世紀は電気の時代」????? (1-31-11)

「20世紀は電気の時代」?????

2011-01-31 00:15:47 | 化石燃料、エネルギー関連
定期購読している週刊エコノミストの冒頭に、「経営者」編集長インタビューがある。今週は、三菱ケミカルホールディング社長の小林喜光氏であった。インタビュー自体は、普通に面白かったのだが、インタビュアーの一言として、『「20世紀は電気の時代」は、誰もが納得だろう。」21世紀は何か。ある人に言わせれば「光の世紀」となる。この方(小林喜光氏)「化学の世紀」と。』ある。

編集長インタビューなので、インタビュアーは内野雅一という事になると思うが、プロフィールはイマイチはっきりしないが、評論家としてテレビなどにも結構出演している様だ。(毎日新聞の記者だった?)

問題は、「20世紀は電気の時代」は、誰もが納得だろう。」という出だしだ。石油という物質に対して、化学という概念なので、まずアウト。電気、光というのは、微妙である。(石油も精製、合成など化学の一部ではあるが)科学的な考察が前提にあるのかもしれない。だとすれば、説明不足だし、表現が甘過ぎる。提灯記事の王道で、『この方(小林喜光氏)「化学の世紀」と。』定義する相手に迎合するために、無理矢理持ってきたのかもしれないが、この程度の見識で編集長をしているのであれば、週刊エコノミストの内容も、これまで以上に気をつけて読まなければならないだろう。

隔週で掲載される、冷泉彰彦の「論調米国」については、過去にも疑問を呈しているし、(本人に対しても、これとかあれとか)、その他、アメリカ絡みの記事には納得出来ないものが多くなった気する。映画評論「シネマ館」で副島隆彦の名前をみた時もビックリした。

では、20世紀は、どう定義出来るのだろうか。私は絶対に
「石油の世紀」
しかないと思う。

20世紀を理解するための(個人的ではあるが)推薦図書として、その名もズバリ「石油の世紀」(日本語訳を読んだ後、原書の "The Prize" も購入したものの積んだまま)がある。この本の影響をもろに受けている事は否定出来ないが、「20世紀を電気の時代」と括る事は、余りにも乱暴であろう。

石油のエネルギー源としての地位は相対的に低下するだろうけど、プラスチック等の化成品等の原料として、そして忘れてはならないのは、飛行機、船、自動車などの燃料として、末永く利用されるであろう。電気自動車だって実用性は怪しいのに、実用レベルで空を電気で飛ぶのは、不可能そうだ。

石油というのは、産業史をみても、政治史、戦争史を見ても、20世紀の主役であろう。エジソンの電球発明でランプ燃料としての需要が危ぶまれた時に、フォードが自動車の大量生産を始めた。スターリンはバクー油田の労働争議で頭角を現し、戦艦の燃料が石炭から石油に転換されることでイギリスがドイツに優位になり、日本はアメリカからの輸入を断たれた事で真珠湾攻撃となった。ラクダに乗って暮らしている人々の土地に豊富な埋蔵量があり、イスラム教を信じていたりするから、これ又ややこしくなるのである。

「20世紀を電気の時代」と強弁してもその3分の2は火力であり、炭化水素として括れば、電気のエネルギー源としての重要性は、21世紀になっても高まるばかりである。余りにも表層的過ぎる。19世紀半ばからの現代までの日本の歴史、江戸時代後半の漂流民から始まる日米関係さえも、石油抜きには考えられない。

「20世紀は電気の時代」は、誰もが納得だろう。」にここまで文句を言う事も無いのかもしれないが、いろんな意味で編集長のインテリジェンスを疑いたくなる様な一言であった。不用意な一言では済まされないと思う。