YS Journal アメリカからの雑感

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ゴヨウの松 (訂正追記あり)

2010-05-05 12:06:10 | 非常に個人的な昔話
「ゴヨウ松」と記憶していたので、てっきり「御用の松」だと思っていたのだが、どうも「五葉松」が正しく、「の」は単に語調を整えるために入っていたようだ。

小学校までは、毎夏お盆に、母が実家に里帰りしていた。今でこそ、車で小一時間で行けるのだが、当時は、バス、汽車を乗り継ぎ半日掛けて、途中でみのりのかっちゃんに遭遇したり、大都会宇和島に立ち寄ったりして、結構な小旅行であった。

母の実家は、その地方ではそれなりに豊かな家であった。土佐、長宗我部の家来の末裔だったらしい。母は小学校の時(戦後間もない頃)にイギリス製の自転車を持っていたらしい。里帰り中は、蚊帳を張って寝るのだが、何とその蚊帳は、”絹”で出来ていた。自分ちの化繊の蚊帳とは、格段に感触が違うのを覚えている。

私の記憶の中では、母の実家は専業農家なのであるが、祖父は元々銀行員であった。(曾爺さんも銀行員だったと聞いた様な気もする)今考えると、満州鉄道の株、預金封鎖、農地解放で、昭和から戦後に掛けて歴史に翻弄された可哀想な地方の資産家であったと思う。

お蔵には鼓があったり、座敷には、名人戦で使われそうな碁盤や将棋盤があった。曾爺さんは、碁や将棋が上手かったらしいが、教わる機会もなく、里帰り中に五目並べと金転がし位しかやらなかった。それでも碁石の感触は覚えていて、これ以上の碁石に触った事はない。(碁をやらないので、偉そうな事は言えないのであるが)

その実家の庭に、高さ3メートル位の「五葉の松」があった。母の祖父、私の曾爺さんが大切に育てていた。子供心にも、枝振りの良い印象が残っている。母から聞いた話では、樹齢二百年でその当時(昭和30年代後半)に、静岡のお金持ちから5百万円で売ってくれという話があったそうだ。

高さ3メートルで枝振りが良く、面白い様にねじ曲がっている五葉松の盆栽を想像してみてもらえば、やんちゃ盛りの男の子にとっては、ジャングルジム以外の何物でも事は理解頂けると思う。

そうです、私はその当時5百万円の値の付いた「五葉の松」で木登りを覚えたのだ。さすがに曾爺さんも怒る訳にいかず、諦めていたそうだ。(ちなみに、私は父方の直系の長子長男で、母が長女だった事もあり母方の初孫、典型的な Spoiled Kid であった)

という訳で、私の木登りは自慢出来ると意味も無く自負している。

曾爺さんが亡くなった後、手入れがされず、その後、松食い虫にもやられて、数年前に伺った時には、伐採されて無くなっていた。母の実家でもこの松の写真を見た事が無いので(なぜか田舎の家族写真は家が背景である。多分、どの家も南向きで順光になるからか?)幻の様な思い出である。

追記訂正 5-16-10

地元にいる弟から指摘があり、値段の件では、母の実家と母方の祖母の実家の五葉の松をごっちゃにしていた様だ。私が木登りをしたのは、ただ単に枝振りの良いゴヨウの松だったとの事だ。木登り自慢も竜頭蛇尾、ちょっと寂しい。