もしオバマが落選していれば、自分の予想が大当たりとなり、無意識に希望的観測が入った独り善がりな見方が正しかったと増長する所であった。オバマ再選で、自分自身と保守系メディアに対して懐疑的になった事で、今後もう少しアメリカ政治を冷静に観察出来る気がする。
いろんなエントリーで散発的に書いて来ているが、自分なりにオバマ政権の第一期を総括しておこう。
一言で言えば、無能政権がピッタリであろう。政権運用能力、現実的な法案作成能力の欠如が著しい。
オバマ政権の第一期は、民主党が連邦両院の過半数を持っていた前半(上院が絶対過半数を持っていたが、マサチューセッツ州上院議員テッドケネディーが死去により一票足りなくなった)と、2010年中間選挙での歴史的敗北で共和党が過半数をしめ、ねじれ状態になった後半に分かれる。
大型景気刺激策 (
American Recovery and Reinvestment Act of 2009)、ObamaCare、金融改革法案 (
Dodd–Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act) の大きな法案は前半に可決しており、後半は目立った成果が無い。
まず、大型景気刺激策であるが、法律が成立したのが2009年2月17日、大統領就任から一ヶ月も経っていない。よって、大統領が法案自体に大きく関わってはいない。2008年リーマンショックのドサクサで民主党のやりたい放題法案であった。特筆すべきは共和党の賛成票が皆無であった。
ObamaCare は、審議途中でマサチューセッツ州上院議員テッドケネディーが死去した。補欠選挙で共和党が議席をとった事で民主党は上院の絶対過半数を失い、通常の法案可決手続が出来なくなった。そこで既に可決していた上院案を下院で修正する事も出来ず不完全なまま可決され、歪なまま法律となった。国民健康保険制度(日本とは違うが)は民主党の長年の夢で有り、民主党が、大統領と上下院で過半数を持っている非常に稀な状況での出来事である。最終的には強引で巧妙な議会運営手腕にお陰で法案可決がなった。
就任当時から、法案に無駄が有ればチェックして拒否権を使うと綺麗事を言っていたが、大型景気刺激策そして皮肉にも ObamaCare の内容を理解していない事は、当人の法案に対する不勉強と行政の長としての真剣さに欠けるを如実に物語っている。
金融改革法案についても、当初は共和党賛成が一票も無かったが、両院協議会での修正案追加で3人の共和党議員(メイン州2議員とマサチューセッツ州議員)が賛成に回った事で成立している。
こうやってみると、オバマ政権の前期は、民主党両院議長 (Nancy Pelosi, Harry Reid) の政権と言っても過言ではないであろう。下院で過半数を失ってからは、結局何も出来ていないのである。民主党が上院で過半数を持っているので、リーダーである Harry Reid が審議優先権を悪用し、下院で成立した法案の審議さえしないという異常事態が続いており、オバマはこれを放置している。
移民法改正、財政改善については、2010年中間選挙後に大統領キャンペーンのリップサービスだけで、ホワイトハウスの予算案、今回の Fiscal Cliff の顛末をみても、真剣に考えているとは到底思えない。一方で、Excutive Order と呼ばれる大統領命令を頻繁に出しているが、これは自分の支持団体へのおべんちゃらの域を出ない。(但し、環境問題等では、経済への実害が出ている)
あとは同性愛者間の結婚であったり、銃の規制に、口当たりの良い事を場当たり的にしているに過ぎない。
オバマは、イリノイ州上院議員を数年、上院議員4年の経験しか無く、政権運用経験は無く、連邦レベルの議会についても経験がなさ過ぎた。この事は余り騒がれていないが、やはり決定的だ。
第一期は前半は大統領の職務が何だか分からないなかで、民主党の絶対優位を悪用した手練手管の両院議長 (Nancy Pelosi, Harry Reid) に勝手にやられ、後半は議会のねじれ状態で運営がままならなくなり、何もする努力もしないまま再選のキャンペーンに熱中したというのが、単純であるが本質的な構図だと思われる。
2010年中間選挙後に目立った法案は、ブッシュ減税の延長と国債発行額の上限アップだけである。オバマはブッシュ減税の失効を目指していたが、中間選挙の敗北と再選を睨んで、ブッシュ減税の延長措置と財政削減の内容を先送りにして共和党との妥協をしている。これが Fiscal Cliff の要因である。
ホワイトハウスは議会に予算案を提出する義務が有るが、2013年度予算は余りにふざけた内容で上院で一票の賛成もなかった。民主党議員でさえ反対する程の惨憺たるものであった。
Fiscal Cliff をめぐる騒動は、今後最低でも2年間続く状態を暗示している。オバマには、本質的な意味でアメリカ再建、特に財政再建については、何一つ考えていないのである。よって、共和党が真摯な議論をし、妥協案を示しても、関係無いのである。やる気がそもそも無いのだ。
再選でオバマ政権はあと4年続くが、今後2年は過去2年と同じく予算や国債残高上限問題で危機的状況が何度も発生するであろう。2014年中間選挙でも議会ねじれ状態が解消しなければ、あとの2年も同様になるであろう。
オバマは再選された事で、決定的に史上最悪の大統領の汚名を着るのだ。