YS Journal アメリカからの雑感

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日経 経済教室『ものづくり』再論 トヨタ問題の含意

2010-03-26 09:36:38 | 新聞、雑誌から
日経新聞で3月15日から18日までの4回連載で、一連のトヨタ問題を『ものづくり』の視点から論じたシリーズである。

△ 第1回 技術開発 消費者とともに 吉川 弘之
◯ 第2回 強すぎる品質の呪縛解け  畑村 洋太郎
X 第3回 複雑化が組織能力を超越  J・P・マクダフィー 藤本 隆宏
◎ 第4回 システム思考の革新急げ  木村 英紀

たったの4回連載なのに、玉石混交の珍しいシリーズであった。(私なりの評価を付けている)

△とXは、問題を観念的だけに考えているので、対策に具体性が無く、ゆえに顧客(海外を含む)に視線を向ける事で、設計や製造を突き詰め、問題を解決しようという提起である。これらの考えの延長線上に今回の問題があった訳だから、タコツボをより深く掘る事で問題解決につなげようという考えである。

一方、畑村氏は、消費者視点ではありながら、製品の出来ではなく、消費者の利便性からの見直しを提言しており、絶対品質を目指す事に今回の問題点を求めている。機械と人間にインターファエイスについての考察の初歩が示されており、高度化する機械とそれに追いつかない人間にジレンマに対する問題提起がある。

木村氏は、増大する「複雑さ」(機械そのもの、ユーザーとのインターファイス)に対応するシステム技術の遅れを問題の本質として捉えている。結論として、日本の工業技術が「匠の技」に頼るものと規定し、未だに個人の技と経験に依存していると指摘する。(『ものつくり敗戦』が面白そうだ)

まさに、『ものづくりの国際経営戦略』の書評の書評で感じていた事である。

肝心のトヨタ問題は、普通(?)に大型リコールの道程を辿っており、販売への長期的な影響、意味不明のカリファルニアのクラスアクション訴訟などは、後処理的に残ってはいるが、事態としては沈静化してきている。

トヨタがタコツボ的にやっているのか、日本の工業技術史から紐解いてやっているのかは、未だ見えてこないが、やっぱりトヨタらしくハイブリッドな対応なのではないかと思う。5-6年後に登場するフルモデルチェンジの車種が答えとなるのだろうが、その頃、この一連の問題の事を誰が思い出すのだろうか?(私は蛇の様に執念深く観察し続ける予定)


余談:今回のトヨタ問題を日本叩きだという論調があったが、既に的外れであった事はハッキリしている。(実は、深く沈降して着々と次の手が準備されているというパラノイヤもいるだろうなー。)悲しい事に、アメリカにおける日本の相対的地位は、低下の一途である。自惚れている場合ではないのである。