YS Journal アメリカからの雑感

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今年2月までの自動車販売数と生産台数を眺めてみると

2010-03-09 13:00:47 | アメリカ自動車業界
先週アメリカの2月自動車販売数の発表で、フォードの大躍進とトヨタの苦戦にばかりが注目されたが、数字をじっくり見てみると、アメリカ経済と自動車産業の先行きが心配になってくる。(以下の統計数字は全て、Automotive News より引用)

最近やっと景気の最悪期を脱したというニュースが増えており、自動車業界でも楽観ムードが広がりつつあった。

まず、生産台数を見てみよう。今年2月までで、1,955,180 (年換算: 11,731,080)昨年比で 62% と順調な滑り出しである。このペースが続けば、年間1200万台も見えてきくる。この生産台数は、大不況以前の生産台数にせまる数字だ。楽観ムードを醸し出すのに申し分無い。

一方で、2月までの販売数であるが、1,479,456 (年換算: 8,876,736)昨年比で 10% しか伸びていない。2月は稼働日が少ないとか、北東、中西部で豪雪があり、販売数が伸び悩んだと言う説もあり、今のところこんなもんだという認識のようだ。どちらにしろ、生産台数との差 475,724 台はそのまま在庫になった事になる。

アメリカの自動車在庫台数は、昨年暮れで約百万台と言われていた。約1ヶ月強の在庫日数で、通常2ヶ月と言われているアメリカでは、非常に少ない数字であった。しかし、たったの2ヶ月で1.5倍になった計算である。

私の知っている日系一次サプライヤーが、4月以降の生産数を心配していたが、販売数と在庫数を見てみると、その恐怖感がひしひしと分かる。在庫が積み上がってきている以上、販売数を超える生産はしないばかりか、下手をすると在庫を絞る為にそれ以下になる可能性もある。

年初から生産が順調なので、Bullwhip 効果と思われる、原材料等の逼迫が顕著化しており、インフレ気味になっている。このままで行くと原材料の値上がり後に、需要がどんと減るということが起きそうだ。このまま販売数が伸びないと、昨年何とか乗り切ったがバランスシートが傷んでいるいるところは厳しい事になりそうだ。

自動車部品サプライヤーの中には、車も所詮消耗品なので、いつかは買い替えなければならないので需要が上向く事との希望的観測を持った楽観的な人が多いが、昨年に続いて今年の販売数を見るにつけ、需要の回復には思ったより時間が掛かりそうだ。

例えば、修理部品や修理工場の商売が好調と言うニュースも目にするし、自分の回りのでも、車の発祥地のそれも郊外でありながら、そして冬にも拘らず、自転車や徒歩の人が増えた様な気がする。

ミクロ的なシェアシフトは、例のトヨタの件があるので注目しているが、マクロ的なところでは景気回復の力無さとパラダイムシフト(一時的なものであると信じたいが)に気をつけながらモニターする必要がありそうだ。

ちょっと浮かれポンチになっていた事を大反省。