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与論の教育は「島立ち」のための教育

2013-12-14 | ■教育
少し前ですが、ある雑誌(「教育ジャーナル」)で、鹿児島県与論町の教育がシリーズで紹介されていました。与論町のある与論島は、鹿児島県の最南端、沖縄本島からわずか28kmのところに位置する隆起珊瑚礁の島です。人口は約5,400人。こども園が3園、小学校3校、中学校と高校が1校ずつ。

与論の教育は、高校を卒業して島を離れる(「島立ち」というそうです)子どもたちにどんな力を育てるかに尽きるという。その根幹となる「与論町教育憲章」を読んでみましたが、これほどまでに独自性のある教育憲章を私は見たことがありません。

たとえば、第1条はこうです。

1 与論町の総ての幼小中高生及び大人は、時・場・相手に応じ、方言・共通語・英語・ギリシャ語・その他の外国語・手話等で、心のこもったあいさつを交わします。

与論町では、子どもから大人まで誰でも「心のこもったあいさつ」を交わします。まず、「方言」で、というところがまず面白い。こどもたちには毎月18日に意識して“ユンヌフトゥバ”(与論の言葉)を使うように奨励しているそうです。で、「方言」の次に「共通語」が来て、「英語」が来て、ふむふむ…なぬ、ギリシア語?? なぜギリシア語? きっと深いワケがあるのでしょう…。さらに、「手話」が記載されていることにも驚かされます。

子どもたちの学力については、

3 与論町の総ての小中学生は、「思イドゥ運命」のことわざに学び、自分の特技・特性に基づく将来の夢を書いて思いを込めて語り、その実現のために自ら予習・復習に励み、学期毎・年次毎に学力を高めます。

いきなり登場する「思イドゥ運命」という与論ことば。“ムイドゥヌサリ”と読むのだそうです。「思イドゥ運命」というのは、「思い願うことは、その人の運命である」という意味。こうなりたいとかこうしたいと願うことは、すでにその子の運命なのだから、自信をもって取り組みなさいということです。与論に古くから伝えられてきた“ムイドゥヌサリ”をもとに、自分の夢に向かって勉強しなさいというメッセージ。う~ん。深いなあ!

ふるさとを大事に思う心を持ってほしいという願いは、次の条文にも表れています。

6 与論町の総ての小中高生は、与論町民憲章を暗唱し、与論町民歌を歌詞を見ないで歌え、与論音頭が踊れます。

7 与論町の総ての小中高生は、与論の自然を愛し、与論の文化(方言・三味線・島唄・ エイサー等)を積極的に学び、郷土与論に誇りを持ち与論の発展に尽くします。


与論では、中学校卒業までに民謡、エイサー、三味線、指笛、太鼓、手踊りのうちから3つ以上を身につけさせるのだそうです。こうして「郷土与論」への誇りを根付かせた上で、「島立ち」させるのですね。

一方で、島のある小学校では、ユンヌフトゥバを話し言葉として受け継いでもらうために、タブレット端末を利用して発音を覚えるという試みをしています。文化の伝承にICTを効果的に活用しています。

「島立ち」とは単に学校を卒業して島を離れるということではありません。島を出てから、つまり社会人となってから役立つ力をちゃんと身に付けた上で送り出すということ。その際に必要なのは、「自分はやればできるんだ」という自信です。くじけそうになった時に、「思イドゥ運命、請ドゥ 幸運」(“ムイドゥヌサリ、フイドゥ ウブン”)、つまり「思い願うことがその人の夢となり、請い願うことがその人の幸運につながる」と自分に言い聞かせる。まさに、与論でしかできない教育ですね。しかも、これは「与論式キャリア教育」でもあるわけです。こういうところに見習わないと。

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