goo blog サービス終了のお知らせ 

カクレマショウ

やっぴBLOG

参加型学習に「こだわる」

2013-12-17 | └社会教育
雑誌「社会教育」の2013年12月号に、RE Learning(リ ラーニング)代表の秦野玲子さんが「学習方法から考える大人の学び─私が参加型学習にこだわるわけ─」という論文を寄せています。



公民館職員をしていた時に出会った参加型学習。大人の学習者が、話し合いや共同作業などの学習活動を通して「気づき」「学び合い」「ふりかえり」といったプロセスを経てお互いの持つ力を引き出し合う学びのスタイルです。そこでは、大人の「経験」を否定することなく、学習資源として生かすための学習方法が行われます。秦野さんは参加型学習の効果に注目し、公民館の講座にいち早く取り入れてきました。

ただ、当時は参加型学習という新しい学習の形に違和感を持つ方も多かったらしく、秦野さん自身が研究者となられてからも、大人の学習者が必ずしも参加型学習に賛同してくれない場面に遭遇します。「結局、この後のやり方は自分で考えろということだろうが、出来ないから困っているんだ、どうすればいいか教えてくれ。でなきゃ、あんたは何のために来たんだ。」(p.18)こういったヒドい声を浴びながらも、秦野さんは謙虚に反省します。

「実は学習の進め方と支援者の有り様そのものが経験の否定であり、『おじさんの怒り』は、参加型学習に馴染みのないおとなの学習者が時折示す当たり前の反応で、そこに配慮が足りなかった学習支援者である私の問題だったのです。」(p.19) そして、「『知識を伝授する講義型の学習ではないこと』『新しい学習方法で違和感を持つのは当然であること』を丁寧に説明すること」で「最初の段階のとまどいや不安を少しでも減らす」ことに努めます。(p.20)

なるほど、今でこそ、「ワークショップ」の名のもとに、グループでの話し合いや付箋を使った作業などごく当たり前のように行われていますが、それでもなお、このように「丁寧に説明する」ことは必要なのではないかと思います。いきなり当然のような顔で「さあ、付箋に自分の意見を書いてグループで共有しましょう」ではなく、なぜそのような方法で学習を進めるのか、きちんと説明して、すべての学習者に納得してもらった上で行われなければならないのです。それは、学習支援者としてのファシリテーターの最低限の役割だと思います。また、チラシや実施要項で、そのことを事前に知らせておくことも忘れてないけませんね。

さて、秦野さんは、「私が参加型学習にこだわるわけ」として2点挙げています。一つは、「記憶に残らないのがもったいない」という点。一方的に話を聴くだけの学習方法では、やはり忘却率も高い、ということでしょうか。主体的に学習に参加して、考え、議論したプロセスのほうが印象に残るのは確かでしょうね。もう1点は、「せっかく学習者が持っている力や経験、知識、技術を活かさないともったいない」という点。これは、秦野さんの長年にわたる参加型学習の実践経験からにじみ出てくる言葉ですね。「もったいない」というのは、参加型学習の場で、多くの人が自身の経験をもとに意見を出し合い、それに共感する人々がつながって、お互いにエンパワメントし合い、活動を始めた…という場面を何度も見ていらっしゃったからこそ感じられることなのでしょう。

秦野さんが最後に書かれているように、私も、もしそういう機会があれば「ふりかえり」にしっかり時間を取るような組み立てにしてみるぞと固く決意いたしました!

参加型学習は確かに数年前に比べたらごく普通に行われるようになってきてはいますが、まだまだ違和感を持つ人も多いことも確かです。学校教育における導入も含めて、この違和感を少しずつなくしていくためには、秦野さんのように参加型学習に「こだわり」を持って取り組むことが大切だなあと改めて気付かされました。

最新の画像もっと見る

1 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

コメント日が  古い順  |   新しい順
ありがとうございます (秦野玲子)
2013-12-17 22:46:27
 いつも丁寧に読んでくださって、温かい目で解説してくださることに感謝です。
 これからも「もったいない」を道連れに丁寧に取り組んでいこうと思います。
返信する

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。