パブロ・ピカソ(1881-1973)の本名は、よく「長い名前」の例として引き合いに出されます。「パブロ、ディエゴ、ホセ、フランシスコ・デ・パウラ、ファン・ネポムセーノ、マリア・デ・ロス・レメディオス、クリスピン、クリスピアノ、デ・ラ・サンティシマ・トリニダード」(Pablo, Diego, José, Francisco de Paula, Juan Nepomuceno, María de los Remedios, Crispin, Cripriano, de la Santísima Trinidad)。先祖や聖人の名前がつなげられた結果、こんなに長くなったのだとか。ここまでが「名」で、さらに、父方と母方の姓がついて「ルイス・イ・ピカソ」(Ruiz y Picasso)。ピカソ自身は、最初、父方の姓を使って「パブロ・ルイス」と名乗っていましたが、いつのまにか母方の姓を名乗るようになって、「パブロ・ピカソ」になったというわけです。ありふれた「ルイス」に比べたら、「ピカソ」という姓は、スペインでも珍しいのだそうで。
ピカソがその91年間の生涯に遺した作品は、素描や挿絵を10万点を超えるとも言われています。「最も多作な画家」としてギネスブックにも記されています。たとえばフェルメールが遺した作品数30数点に比べたらまさにケタ違いの多さです。
「ピカソの大きな作品宇宙」。結城昌子著『ピカソ 描かれた恋』(小学館)にそんな表現がありました。ピカソといえば、一見訳のわからない「キュービズム」(立体主義)の作品が思い浮かびますが、彼の作品は、自身の年齢や時代背景によっても作風が様々だし、また、絵画(油絵、素描)だけでなく、版画(エッチング)、彫刻、コラージュなどその表現手段も実に多様で、それは本当に、「作品宇宙」としか言いようがありません。
さて、そんな膨大なピカソ作品のうち、5,000点を所蔵するのがパリ国立ピカソ美術館。同館の改修に伴う世界巡回展の一環として、東京・六本木の国立新美術館とサントリー美術館で、同時にピカソの展覧会が開催されています。歩いて5分の距離にある二つの美術館が、それぞれにテーマを設けて(前者が「巨匠ピカソ 愛と創造の軌跡」、後者が「巨匠ピカソ 魂のポートレート」)、ピカソにアプローチ。ピカソのこれだけの作品を見られる機会は滅多にありません。両方見られる共通券はありませんが、どちらかのチケットを別の方で見せると200円割引してくれます。チケットはおそろいでかわいい。
「新」では、「愛と創造の軌跡」とうたっているだけあって、約170点の作品を、ピカソの生きた時代を区切って見せてくれます。片や「サントリー」では、ピカソの作品群の中でも特に数が多い、「ポートレート」作品を中心とした約60点を展示しています。どちらもすばらしく見応えのある展覧会でした。ピカソの作品は「心で見ろ」とよく言われますが、「心で見ろ」とあえて言われなくても、向こうから心を鷲づかみにされるような作品ばかりでした。絵の前に立った時に、いろんな意味で、「なんだこれは!」と心の中で叫ばずにはいられない感覚。「なんだこの形は!」とか「なんだこの色遣いは!」とか「なんだこの表情は!」とかね。そして、しばらくじっと見ていると、絵の中に吸い込まれていくような、不思議な感動が湧いてくる。…やっぱり「宇宙」だ。ピカソの作品は。
『ピカソ 描かれた恋』は、タイトルどおり、ピカソの「作品宇宙」になくてはならない存在だった、8人の女性とピカソとの関係を追っています。ピカソにナマで触れたあとでこの本を読むと、ますます楽しめるでしょう。ちなみに、著者の結城さんは、『ピカソの絵本・あっちむいてホイッ!』という子ども向けの楽しい絵本も書いています。キュービズムは子どもにはわかりにくいという人もいますが、私は子どもの方がピカソの絵をもっと自由に楽しめるのではないかと思います。先入観なしでは見られない大人に比べたら、心の中に真っ白なキャンバスを持っている子どもたちこそ、まっすぐな目でピカソを「理解する」ことができるのではないでしょうか。逆に言えば、ピカソ自身が、子どもの感覚をいつまでも忘れることはなかった。こちら側からの視線では見えないはずの、向こう側にある「目」をこちら側の目と並べて描いてしまうなんて、子どもの発想でなければできないことですよね。
ピカソとキュービズム、ピカソと戦争、そしてピカソと恋愛…。ピカソをめぐってはそれこそいろいろな視点からとらえることができます。今回の2つの展覧会で見た作品を中心に、これから何回かに分けて考えてみたいと思っています。
ピカソがその91年間の生涯に遺した作品は、素描や挿絵を10万点を超えるとも言われています。「最も多作な画家」としてギネスブックにも記されています。たとえばフェルメールが遺した作品数30数点に比べたらまさにケタ違いの多さです。
「ピカソの大きな作品宇宙」。結城昌子著『ピカソ 描かれた恋』(小学館)にそんな表現がありました。ピカソといえば、一見訳のわからない「キュービズム」(立体主義)の作品が思い浮かびますが、彼の作品は、自身の年齢や時代背景によっても作風が様々だし、また、絵画(油絵、素描)だけでなく、版画(エッチング)、彫刻、コラージュなどその表現手段も実に多様で、それは本当に、「作品宇宙」としか言いようがありません。
さて、そんな膨大なピカソ作品のうち、5,000点を所蔵するのがパリ国立ピカソ美術館。同館の改修に伴う世界巡回展の一環として、東京・六本木の国立新美術館とサントリー美術館で、同時にピカソの展覧会が開催されています。歩いて5分の距離にある二つの美術館が、それぞれにテーマを設けて(前者が「巨匠ピカソ 愛と創造の軌跡」、後者が「巨匠ピカソ 魂のポートレート」)、ピカソにアプローチ。ピカソのこれだけの作品を見られる機会は滅多にありません。両方見られる共通券はありませんが、どちらかのチケットを別の方で見せると200円割引してくれます。チケットはおそろいでかわいい。
「新」では、「愛と創造の軌跡」とうたっているだけあって、約170点の作品を、ピカソの生きた時代を区切って見せてくれます。片や「サントリー」では、ピカソの作品群の中でも特に数が多い、「ポートレート」作品を中心とした約60点を展示しています。どちらもすばらしく見応えのある展覧会でした。ピカソの作品は「心で見ろ」とよく言われますが、「心で見ろ」とあえて言われなくても、向こうから心を鷲づかみにされるような作品ばかりでした。絵の前に立った時に、いろんな意味で、「なんだこれは!」と心の中で叫ばずにはいられない感覚。「なんだこの形は!」とか「なんだこの色遣いは!」とか「なんだこの表情は!」とかね。そして、しばらくじっと見ていると、絵の中に吸い込まれていくような、不思議な感動が湧いてくる。…やっぱり「宇宙」だ。ピカソの作品は。
『ピカソ 描かれた恋』は、タイトルどおり、ピカソの「作品宇宙」になくてはならない存在だった、8人の女性とピカソとの関係を追っています。ピカソにナマで触れたあとでこの本を読むと、ますます楽しめるでしょう。ちなみに、著者の結城さんは、『ピカソの絵本・あっちむいてホイッ!』という子ども向けの楽しい絵本も書いています。キュービズムは子どもにはわかりにくいという人もいますが、私は子どもの方がピカソの絵をもっと自由に楽しめるのではないかと思います。先入観なしでは見られない大人に比べたら、心の中に真っ白なキャンバスを持っている子どもたちこそ、まっすぐな目でピカソを「理解する」ことができるのではないでしょうか。逆に言えば、ピカソ自身が、子どもの感覚をいつまでも忘れることはなかった。こちら側からの視線では見えないはずの、向こう側にある「目」をこちら側の目と並べて描いてしまうなんて、子どもの発想でなければできないことですよね。
ピカソとキュービズム、ピカソと戦争、そしてピカソと恋愛…。ピカソをめぐってはそれこそいろいろな視点からとらえることができます。今回の2つの展覧会で見た作品を中心に、これから何回かに分けて考えてみたいと思っています。
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