
居酒屋チェーンの「和民」は、この7月から使い捨て割り箸を廃止して、プラスチック製の箸に切り替えているそうです。飲み屋のつまみはやっぱ割り箸だろう!と強く思っている私にとっては、やれやれ、という感じです。「和民」には行くことがないのでどうでもいいんですけど。これがよく行くラーメン屋とかそば屋だったら、絶対許せないところです。そばをプラスチックの箸で食べさせるなんて、たいがいにしろ、てなもんです。
また、テレビで紹介されていましたが、別の居酒屋チェーンでは、やはり割り箸に代えて、「置き箸」を始めたのだとか。好みの「マイ箸」を持参して店に置いてもいいし、店で選ぶこともできるのだとか。やれやれ。
こうした、「外食産業で割り箸を使わない動き」というのは、「割り箸は森林破壊につながる」という、短絡的で(=わかりやすい、とも言える)、しかも根拠の薄い主張がその根本にあります。1990年頃にも、同じような動きがありました。当時は、東南アジアの「熱帯雨林の破壊」が問題とされたのですが、根拠が確かでないことが明らかになって、割り箸廃止運動は、一時の「ブーム」として終わりました。
そして、最近、またぞろ割り箸廃止論が登場、というより「ブーム」の復活です。今回の端緒は、昨年(2006年)、中国が、将来、割り箸の対日輸出を停止するというニュースが報じられたことでした。…中国? そう、日本の割り箸のほとんどは、今や中国製なのです。
現在、日本で消費される割り箸の量は、年間250億膳にのぼるといいます。たまげた数字です。人口1億2,500万人とすれば、一人当たり200膳! 毎日外食をする人なら、確かに1日に1膳以上は使っているかもしれません。しかも、割り箸は基本的に「使い捨て」されるものですから、ゴミの量も消費量と同じ分量が出るわけです。250億膳もの箸のゴミというのも、想像を絶する量です。
日本は、その年間250億膳の割り箸の98%を輸入に頼っています。しかも輸入先の99%は中国。要するに、日本人が使う割り箸のほとんどは、中国産なのです。日本の割り箸需要を支えているのは、ファミレスやファストフードといった外食産業と、コンビニの弁当や総菜といった「中食」産業ですが、中国からの輸入は、こうした産業の伸びと平行して増えてきています。その理由は、中国製の割り箸の価格が安いこと、これに尽きます。低価格の中国産割り箸が入ってこないとなると、業界にとっては死活問題。
中国の輸出停止の理由は、「森林保全」のためということでした。日本人が使っている割り箸が中国の森林を「破壊」している…。「和民」などの外食産業が、割り箸廃止に踏み切ったのは、こうした「環境問題への配慮」ももちろんあるのでしょうが、いつかは現実のものになるかもしれない中国産の割り箸の輸出停止を見越してのことなのかもしれません。
しかし、考えてみれば、割り箸は、本来日本で生まれたもののはずです。割り箸は、かつてはもちろん完全自給できていた製品でした。ならば、中国産の割り箸が使えなくたって、国産のものを使えばいいのでは…と思うのですが、ところがどっこい、中国産と国産では値段があまりにも違いすぎる。たとえば、奈良県吉野地方の割り箸は、安価な中国産と差別化する必要もあって、「高級割り箸」という分野に特化して生産を続けてきました。今更安い割り箸は作れないし、作ったとしても、なお中国産の価格には届かないということでしょうか。
中国では、最近では、輸出用だけでなく、国内の割り箸の需要も増えているのだとか。その背景には、来年に迫った北京五輪があります。使い捨ての割り箸を使うことによって、「清潔さ」をアピールしようというわけです。確かに、中国が本格的に割り箸を使い始めたら、「森林破壊」は加速度的に進みそうなイメージはあります。でも、本当に中国で「森林破壊」が「割り箸のせい」で進んでいるのか。ちょっと待てよ…と立ち止まって考えてみたくなるのでした。
2007年6月10日付け毎日新聞の書評欄で、「路上観察学会」会員でもある建築家の藤森照信氏が、『割り箸はもったいない?─食卓からみた森林問題』(田中淳夫著、ちくま新書)という本を紹介しています。著者は、国産割り箸の産地である奈良県生駒市に住む森林ジャーナリスト。本当に割り箸は日本や外国の森林を「破壊」しているのか? 森林の減少という事実はあったとしても、それは「割り箸」だけのせいなのか? 「割り箸反対の動き」をいろいろな視点から検証してくれる本です。
この本を参考にしながら、「割り箸問題」を何回かに分けて綴ってみたいと思います。
『割り箸はもったいない?─食卓からみた森林問題』≫Amazon.co.jp
また、テレビで紹介されていましたが、別の居酒屋チェーンでは、やはり割り箸に代えて、「置き箸」を始めたのだとか。好みの「マイ箸」を持参して店に置いてもいいし、店で選ぶこともできるのだとか。やれやれ。
こうした、「外食産業で割り箸を使わない動き」というのは、「割り箸は森林破壊につながる」という、短絡的で(=わかりやすい、とも言える)、しかも根拠の薄い主張がその根本にあります。1990年頃にも、同じような動きがありました。当時は、東南アジアの「熱帯雨林の破壊」が問題とされたのですが、根拠が確かでないことが明らかになって、割り箸廃止運動は、一時の「ブーム」として終わりました。
そして、最近、またぞろ割り箸廃止論が登場、というより「ブーム」の復活です。今回の端緒は、昨年(2006年)、中国が、将来、割り箸の対日輸出を停止するというニュースが報じられたことでした。…中国? そう、日本の割り箸のほとんどは、今や中国製なのです。
現在、日本で消費される割り箸の量は、年間250億膳にのぼるといいます。たまげた数字です。人口1億2,500万人とすれば、一人当たり200膳! 毎日外食をする人なら、確かに1日に1膳以上は使っているかもしれません。しかも、割り箸は基本的に「使い捨て」されるものですから、ゴミの量も消費量と同じ分量が出るわけです。250億膳もの箸のゴミというのも、想像を絶する量です。
日本は、その年間250億膳の割り箸の98%を輸入に頼っています。しかも輸入先の99%は中国。要するに、日本人が使う割り箸のほとんどは、中国産なのです。日本の割り箸需要を支えているのは、ファミレスやファストフードといった外食産業と、コンビニの弁当や総菜といった「中食」産業ですが、中国からの輸入は、こうした産業の伸びと平行して増えてきています。その理由は、中国製の割り箸の価格が安いこと、これに尽きます。低価格の中国産割り箸が入ってこないとなると、業界にとっては死活問題。
中国の輸出停止の理由は、「森林保全」のためということでした。日本人が使っている割り箸が中国の森林を「破壊」している…。「和民」などの外食産業が、割り箸廃止に踏み切ったのは、こうした「環境問題への配慮」ももちろんあるのでしょうが、いつかは現実のものになるかもしれない中国産の割り箸の輸出停止を見越してのことなのかもしれません。
しかし、考えてみれば、割り箸は、本来日本で生まれたもののはずです。割り箸は、かつてはもちろん完全自給できていた製品でした。ならば、中国産の割り箸が使えなくたって、国産のものを使えばいいのでは…と思うのですが、ところがどっこい、中国産と国産では値段があまりにも違いすぎる。たとえば、奈良県吉野地方の割り箸は、安価な中国産と差別化する必要もあって、「高級割り箸」という分野に特化して生産を続けてきました。今更安い割り箸は作れないし、作ったとしても、なお中国産の価格には届かないということでしょうか。
中国では、最近では、輸出用だけでなく、国内の割り箸の需要も増えているのだとか。その背景には、来年に迫った北京五輪があります。使い捨ての割り箸を使うことによって、「清潔さ」をアピールしようというわけです。確かに、中国が本格的に割り箸を使い始めたら、「森林破壊」は加速度的に進みそうなイメージはあります。でも、本当に中国で「森林破壊」が「割り箸のせい」で進んでいるのか。ちょっと待てよ…と立ち止まって考えてみたくなるのでした。
2007年6月10日付け毎日新聞の書評欄で、「路上観察学会」会員でもある建築家の藤森照信氏が、『割り箸はもったいない?─食卓からみた森林問題』(田中淳夫著、ちくま新書)という本を紹介しています。著者は、国産割り箸の産地である奈良県生駒市に住む森林ジャーナリスト。本当に割り箸は日本や外国の森林を「破壊」しているのか? 森林の減少という事実はあったとしても、それは「割り箸」だけのせいなのか? 「割り箸反対の動き」をいろいろな視点から検証してくれる本です。
この本を参考にしながら、「割り箸問題」を何回かに分けて綴ってみたいと思います。
『割り箸はもったいない?─食卓からみた森林問題』≫Amazon.co.jp
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