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カクレマショウ

やっぴBLOG

H.F.セイント『透明人間の告白』は超面白い!─その1

2006-02-17 | ■本
新潮文庫の帯に「《本の雑誌》が選ぶ30年間のベスト30 1位!」とあったのにつられて読んでみました。

ある得体の知れない研究所で起こった事故に巻き込まれ、「透明」になってしまったニック・ハロウェイ。彼をつけ狙うのは、「透明人間」を国家的陰謀に利用しようとする機関。行き場所をつけ狙われ、逃げるしかないニック。しかし、彼もまたスリリングな反撃に転じる。勝つのはどっちか…。

「24」を見るのと並行して読んでいたため、なんだかストーリーが入り交じってしまうこともありましたが、これは「帯」にたがわず、最高に面白い小説です。

何より、「透明人間」になってしまうことへの想像力がいかに貧困だったかということを思い知らされた感じがします。そんなの想像してどうすんだよ!と突っ込まれそうですが、しかし、「想像してみる」ことは大事なことですよね。

例えば、透明人間が何を着ているか。想像してみましょう。透明になっても寒さは感じるわけですから、素っ裸でいるわけにはいきません。かといって、「目に見える」服を着るわけにはいかない。昔の映画にあったように、顔や手に包帯を巻いているわけにもいかない。ニックが戯れに「仮装」としてそんな「透明人間の格好」をする場面は楽しかったですけど。なんと、この本では、「透明な服」を着ているのです。彼が透明になってしまった時、人間の肉体だけでなく、「物」も一緒に透明になってしまったのです。彼が身につけていた物、彼がいた部屋、そこにあった机や椅子、彼がいた建物。すべてが透明になってしまった。だから彼は透明な服を着ていることができたのです(ちゃんと洗濯もしています)。ニックは、研究所を逃げる際、できるだけ多くの「透明な物」を持ち出しますが、これには本当に感心しました。あとで何に役立つかわからないけど、透明人間には「透明な物」が必要なんだと彼はちゃんとわかっていたのです。私だったらそんなことは思いもよらないでしょう。

しかし、読み進んでいくうち、それらが透明人間の必需品だということがだんだんわかってきます。透明人間が「透明じゃない物」を手に持っていること自体が、異様なわけですから。「手に持って」いても、それは空中に浮かんでいるようにしか「見えない」! 彼は透明な拳銃を持ち出すのですが、もしそれが透明じゃなかったら、銃がひとりでに弾を放つという、見てはいけない光景になってしまうのです。

驚くべきことに、彼は、自分で「透明な物」を作ることにさえ成功します。「作る」というのは語弊がありますね。「加工する」です。たとえば一張羅の透明な服に加え、彼は冬の寒さに備えるために透明なコートを作ります。研究所から持ち出した透明なカーテンを切って、縫うのです。はさみや針はともかく、縫う時には「糸」も透明でなければなりません。彼は、やっとの思いをしながら、「見えない手」で「見えない糸」を針に通し、「見えないカーテン」をコートに仕立てていきます。その時彼が使ったある「ワザ」があります。さて、どうすれば「見えない糸」で「見えない布」を上手に縫うことができるでしょうか…?

全編そんな感じです。通常「見える物」が、存在はしているのに目には見えなかったら、という仮定の世界。別の角度から物を見ること、想像してみることの大切さをしみじみ感じますよ。

『透明人間の告白』>>Amazon.co.jp


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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (kazuou)
2006-02-19 14:18:10
はじめまして。

僕もこの作品、大変面白く読みました。透明人間になったら、実際の生活はどうなるか、というサバイバル的な面を、徹底的に描いているのがすごいですよね。

想像力の使い方が、うまい具合に働いた作品だと思います。

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Unknown (やっぴ)
2006-02-20 00:26:58
kazuouさん

コメントありがとうございました。



ブログ拝見しましたが、「想像力の使い方」が面白い作品をたくさん読んでおられるなと感心しました。いくつかピックアップして読んでみたいと思います。
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