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H.F.セイント『透明人間の告白』は超面白い!─その2

2006-02-18 | ■本
完全に「透明」なら目も見えないはず、とか、物理的に透明なのに物や人にぶつかるというのはオカシイ、とか、そもそも「透明」になってしまった原理が理解できない、とか、いろいろな見解があるでしょう。また、小説としても「くどい」、「展開が遅い」という批評もあるようです。

主人公ニック・ハロウェイは、証券アナリストです。彼は透明になってからも、彼を追う「機関」の誘惑に負けることなく、一人で生きていくことを決意するのですが、そのためには「住むところ」と「収入」が必要です。もともと住んでいた部屋には当然「機関」の手が伸びて追い出され、しばらく安住の地として暮らしていた社交クラブも存在がばれてしまい、結局、バカンスで長く借り主が不在となっているアパートを見つけ、転々とする生活を送ります。

「透明人間の実態」として最初にほぉーと思ったのは、食べた物が透けて見えるということでした。自分で食べた物が食道から胃、そして腸へと移動し、消化されていく様を見るのはかなりキモチ悪いでしょう。もちろん人前では決して食事ができない。食べた物が完全に消化されてからでないと外出もできない。なるほど。最初、彼が電話で食料品店に食べ物を注文して配達してもらうシーンにはなかなか笑えました。「なるべく透明な食べ物」という妙な注文をするのです。配達してもらう時は、必ず「シャワー中」ということに。苦労してます。

「収入」については、彼は証券アナリストという職業を生かし、電話をフルに利用して収入を得ることに成功します。この小説の舞台はおそらく1980年代なのですが、もしインターネットがあったならもう少し簡単に稼ぐこともできたでしょう。収入だけでなく、インターネットがあれば、透明人間として生きていくのもずいぶんラクになったはずです。なにせ、「顔」の見えないコミュニケーションができるのがインターネットですから。

インターネットの恩恵にどっぷりつかっている私たちこそ、もしかしたら「透明人間」なのかもしれませんね。見えるけど見えない透明人間。

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