カクレマショウ

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羊と人間

2015-01-01 | ■世界史

未年が明けました。日本では、中国から伝わった十干十二支(えと)の「未」をなぜか「ひつじ」と呼ぶようになりましたが、実はそれがどんな動物であるか、ほとんど知られていませんでした。「日本書紀」などには早くも羊の記述が見られますが、それ以降、江戸時代末期になるまで羊に関する記録はほとんど出てきません。日本では、確かに衣服の材料も、羊の毛から織る毛織物ではなく、むしろ麻、絹、木綿がメインでした。「4大家畜」(牛、馬、豚、羊)の中でも、日本人と羊との関わりは薄かったようですね。

世界史に目を転ずると、人間が羊を家畜として飼うようになったのは、今から8000~10000年前のことと言われています。羊は、小さくておとなしくて、群れで暮らす性質があったので、飼い慣らしやすかったのでしょう。最初は肉や毛皮を利用するために飼われていた羊ですが、紀元前3000年頃のメソポタミアで、毛を刈り取って織物が作られるようになりました。ローマ人によって羊の品種改良が行われ、より良質の毛織物が生産されていきます。中世から近世にかけてのヨーロッパの経済を支えていたのは毛織物工業でした。特に、15世紀のフィレンツェでは、毛織物の貿易で富をなした商人たちが、ルネサンスを支えました。その富は、のちに「資本」という言葉になります。「資本」は英語で“capital”ですが、この言葉も元々は、羊の頭数を意味するラテン語に由来しているのだとか。資本主義の原型は、羊にあったのです。

中国でも羊は実に重要な動物でした。その証拠に、「羊」の入った漢字がいくつもあります。例えば、「群」は言うまでもなく、「善」=「羊+言言」、「美」=「羊+大」、「義」=「羊+我」。善良で美しく、義に深いという羊のイメージは、洋の東西を問わず同じだったのですね。

キリスト教では、イエスは羊の群れを守る牧羊者にもたとえられます。「迷える子羊」(=信者)を導き救い出す”the Good Shepherd”(グッド・シェパード)。羊は、キリスト教だけでなく、ユダヤ教やイスラム教でも「善きもの」とされます。しょせん、私たち人間は、羊のようにか弱い生き物であり、「群れ」なければ生きていけない動物なのです。宗教の違いなど超えて、助け合って生きていかなければなりませんね。


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