カクレマショウ

やっぴBLOG

二つの月、二つの太陽

2010-01-10 | ■環境/科学
冬の夜空にひときわ目立つオリオン座。

昨年10月にはオリオン座流星群が活動のピークを迎え、この星座を見上げた人も多かったのではないでしょうか。


※写真は「yahoo!きっず星空」より

オリオン座は、ギリシア神話に登場する狩人、オリオンが右手に棍棒を振り上げている姿で表されます。真ん中の「三つ星」がオリオンの腰に巻かれたベルトに当たります。そして、右肩の部分で赤く輝くのがベテルギウス。三つ星をはさんでちょうど対角線上、オリオンの左足にある青白い星・リゲルと対をなしています。また、ベテルギウスは、こいぬ座のプロキオン、おおいぬ座のシリウスとともに、「冬の大三角」の一角をなすことでも知られていますね。

ベテルギウスまでの地球からの距離は600光年。地球から見れば、全天で9番目に明るく見え、その見かけの大きさは、太陽に次いで2番目に大きいのだとか。実際の直径は、太陽の1,000倍だそうです。ということは、ベテルギウスを太陽の位置に置き換えてみると、火星の軌道をはるかに超え、木星の軌道に達することになります。…でかい! 

こういう超巨大な星は、赤色超巨星と呼ばれます。太陽が誕生から46億年たっているのに対して、ベテルギウスはまだ数百万歳ですが、質量が重いため、すでに寿命に近い。最後は、「超新星爆発」を起こし、その後ブラックホール化すると言われています。

その超新星爆発の予兆がベテルギウスに見られるという記事が、今朝の朝日新聞第一面に載っていました。

根拠は、「表面の盛り上がりとみられる二つの大きな白い模様」が、ベテルギウスの画像
に見えることだと言う。また、「この15年で質量が20%ほど減ったという報告もあり」、それは、この恒星の終焉が近いことを意味しているのだそうです。つまり、恒星は末期を迎えると、ガスを放出するので質量が減り、表面も「梅干しのように」でこぼこになるということらしい。

これだけの巨大な星が爆発したら、さぞかしすごいことになるのでは…と、考えただけで恐ろしくなりますが、さすが宇宙は広い。地球とは距離が離れすぎているので、たとえばガンマ線にしてもそれほど強くないので、生命体への影響もほとんどないそうです。

それより、ベテルギウスが爆発した場合、地球からはちょうど満月くらいの大きさに見えるんだって。いつものオリオン座のあの位置に、月と同じくらいの星が煌々と輝く…。『1Q84』じゃないけど、月が二つある光景が現実のものになる。

もちろん、そのくらい大きくなれば、昼間でも見えます。…ってことは、太陽も二つあるみたいなものですよ! 

これってすごいことですよね。太陽のほかに、真っ赤な天体がもう一つ見えるなんて、いったいどんな光景なんだろう…。

ただ、ベテルギウスの爆発が「間近い」とは言っても、それはあくまで宇宙スパンでの「近い」ですから、何万年も先のことかもしれない。地球からの距離が640光年ということは、640年前に既にベテルギウス自体はもう爆発しちゃったのかもしれない。もしそうだとすれば、地球では、「今日」爆発を「見る」ことになりますよね。そうであってもおかしくない、と科学者も言っています。

さて、ギリシア神話では、オリオンにまつわる物語が二つ残っています。いずれも、月の女神アルテミスにまつわる話です。

一つは、アルテミスに恋をしたオリオンが、つい「俺は地上にいるどんな獣だって仕留められる」と豪語してしまったために神々の怒りを買い、彼らが送り込んだサソリに刺されて死んでしまったというもの。だから、今でもオリオンは、夏の星座さそり座が出てくると、こそこそと天から隠れてしまうのだというオチつき。

もう一つは、アルテミスの兄アポロンがオリオンの傲慢さに腹を立て、殺そうと企てる。オリオンが海を渡っている時に、アポロンは海上に突き出たオリオンの頭に金色の光を吹き付け、アルテミスに「いかにお前が弓の名手でも、波間に漂うあの金色のものを射抜くことはできないだろう」とそそのかす。アルテミスはまんまとそれに引っかかって、オリオンの頭をそれとは知らずに射抜いてしまう。

いずれにしても、オリオンの死をはかなんだアルテミスが、彼を天界に送って星にしたと言われます。オリオン座のシンボルとも言えるベテルギウスが、月の女神アルテミス、あるいは太陽神アポロンと並んで天で輝くというのも、何かの縁なのかもしれませんね。


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