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カクレマショウ

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「ブレードランナー ファイナル・カット」(その1)─バージョン違いで楽しめる映画

2010-01-11 | ■映画
"BLADE RUNNER: THE FINAL CUT"

2007年/米/117分
【監督】リドリー・スコット
【原作】フィリップ・K・ディック
【脚本】ハンプトン・ファンチャー デヴィッド・ウェッブ・ピープルズ
【撮影】ジョーダン・クローネンウェス
【特撮】ダグラス・トランブル
【デザイン】シド・ミード
【音楽】ヴァンゲリス
【出演】ハリソン・フォード/デッカード  ルトガー・ハウアー/ロイ
ショーン・ヤング/レイチェル  エドワード・ジェームズ・オルモス/ガフィ
ダリル・ハンナ/プリス  ブライオン・ジェームズ/レオン
ジョアンナ・キャシディ/ゾーラ  M・エメット・ウォルシュ/ブライアント
ウィリアム・サンダーソン/J・F・セバスチャン  ジョセフ・ターケル/エルドン・タイレル

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図書館で『「ブレードランナー」論序説─映画学特別講義』(加藤幹郎)という本を見つけました。パラパラとめくってみると、映画「ブレードランナー」のすべてのシーンを順に追いながら、独自の解釈を加えています。同時に、映画史におけるこの映画の位置づけや意義について論じている。

「ブレードランナー」。 私にとって、「未来世紀ブラジル」と並んで「近未来もの」として忘れられない映画。

久しぶりに無性にこの映画を見たくなり、そういえば、数年前に新しいバージョンも公開されてたよなあと思い出しつつ、TSUTAYAに向かいました。レンタルしたのは、その「ファイナル・カット版」。製作25周年を記念して、2007年にリドリー・スコット監督自身が新たに再編集したバージョンです。

ところが、見終わったあとで、ディスクをパッケージにしまおうと思ったら、ん?なんかもう1枚DVDがあるぞ…?! 見ると、これまでに公開された3つのバージョンがすべて収められている…! ファイナルカット版を見て、私が最初に見たバージョンも見たいなあと思っていたところだったので、ラッキーでした。

「ブレードランナー」が初めて世に出たのは1982年。最初は、ただただ「暗~い」映画、ということで、興行成績も全然振るわなかった。だって、その頃は「スターウォーズ」みたいな華やかなSF活劇まっさかりの時代ですから。同じSF、未来ものと呼ぶには「ブレードランナー」はあまりにもマジメすぎたのですね。

もしビデオやDVDがこれほど普及していなければ、「ブレードランナー」も今頃「幻の映画」になっていたかもしれません。この映画がじわじわとロングテールで人気を得てきたのは、ひとえにビデオ&DVDのおかげです。というのも、劇場公開版に満足していなかったスコット監督が、この映画のいわゆる「ディレクターズ・カット版」を1992年に発表、それがビデオやレーザーディスク化されて手軽に楽しむことができるようになった。すると、10年前の公開時のバージョンも見たいという人が増えて、そちらもリリースされる。こうして、「バージョン違いを楽しむ」という映画の見方が生まれたのです。他の映画でも、監督による編集版が作られるようになっていきました。

そもそも、映画って、プロデューサーとディレクター(監督)がいますけど、最終的な「編集権」を握っているのはプロデューサーの方なんですね。監督が演出して撮影し、編集したものを見て、最後に「公開版」を決定するのはあくまでプロデューサー。プロデューサーは「お金」を握っているわけですから、いくら監督が「いい映画」をつくっても、「もうからない映画」(観る人が少ない映画)であっては困るのですね。

これに対して、リドリー・スコット監督は、「自分が作りたい映画」に徹底的にこだわった。「監督とは指図するという意味だ」なんて言ってるくらいですから。撮影現場でも、主演のハリソン・フォードが嫌気がさすくらいの強いリーダーシップを発揮したらしい。

公開時にはそれでもしぶしぶプロデューサーの言うとおりのバージョンで了解したものの、やっぱりワシが作りたかったのはこんなんじゃないんや~!とばかりに、満を持して「最終版」として放ったのが、1992年の「ディレクターズ・カット版」なのです。

2007年の「ファイナル・カット版」は、「最終版」だったはずの「ディレクターズ・カット版」に更に手を加えたバージョンです。基本的には「最終版」をベースにしていますが、画像処理や音響面にデジタル修正が施されています。実際、このバージョンで、より画面がクリアになったなあと思いますし、これまで聞き取りにくかったセリフもちゃんと聞き取れるようになっています。

これまでの4つのバージョンを整理してみると、

1 米国オリジナル劇場公開版 U.S. Theatrical Cut (1982年)
1982年6月25日に米国で劇場公開されたバージョン(117分)

2 国際版<完全版> International Theatrical Cut (1982年)
 アジア及びヨーロッパで劇場公開されたバージョン(118分)
 ※日本国内公開は1982年7月10日

3 ディレクターズ・カット版<最終版> Director's Cut (1992年)
 監督による再編集バージョン(116分)
 ※日本国内公開は1992年10月

4 ファイナル・カット版 Final Cut (2007年)
 監督が製作25周年を記念して再編集したバージョン(117分)
 ※日本国内公開は2007年11月17日

1、2が公開版(プロデューサーによるバージョン)、3、4が監督によるバージョンということになります。細かい違いはたくさんありますが、大きくは次の3点だと思います。

(1) 公開版では、デッガード(ハリソン・フォード)によるナレーション(専門的にはヴォイス・オーバーと言うそうです)が数カ所入っているが、監督版ではすべて消されている。

(2) 監督版では、公開版になかった、デッガードの見る「ユニコーンの夢」のシーンが新たに付け加えられた。

(3) エンディングの違い。公開版ではハッピーエンドだが、監督版ではどうとでもとれるような結末としている。

この映画を見たことがない人には、まったくもってどうでもいいことでしょうけど、この3点の違いはとても大きい。この映画の見方だけでなく、主題さえ全然変わってくるので。

たとえば、エンディング。私は今回初めて監督版を見たわけですが、正直、公開版の結末を知っているので、そうでない終わり方には少し違和感を感じました。エンディング・ロールの背景、ヴァンゲリスのテーマ曲に乗って、上空からぐいぐいとらえた森や川の風景も、ものすごく印象に残っていたのですが、それも監督版にはありません。今回初めて知ったのですが、あのシーンは、「シャイニング」の冒頭で使われたものの別テイクだそうです。リドリー・スコット監督とすれば、別の監督が別の映画のために撮ったシーンを自分の映画で使うなんて、我慢ならんということだったのかもしれません。



冒頭で紹介した本も参考にしつつ、映画「ブレードランナー」について少し書いていきたいと思っています。

(続く…)

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