第二部 コゼット
第七編 余談(岩波文庫第2巻p.251~p.272)
第六編で修道院について熱く語ったユゴーは、なお書き足りなかったと見えて、「余談」というタイトルをわざわざ付してさらに修道院について述べます。例によってしばしストーリーと離れて、ユゴーの「修道院論」を拝聴しなければなりません。もちろん、「余談」らしく、すっとばして読んでもかまわないでしょう。
ユゴーは「歴史、理性、および真理の見地よりすれば、修道院制はしりぞけられるべきものである。」と断じます。
修道組合が大なる社会組織に対する関係は、あたかも寄生木(やどりぎ)の樫の木におけるがごとく、疣(いぼ)の人体におけるがごときものである。その繁栄と肥満とは、国の衰弱となる。
…「イボ」扱いです。修道院が誕生した初期の頃には、有益だったかもしれないが、19世紀の今日においては「排斥すべきもの」となっているとユゴーは言います。特にカトリックが強いスペインの修道院については、「特に陰惨である」として、その建物のありようをさんざんこきおろしています。
さらに、「哲学や世の進歩にかかわらず」、19世紀においても「修道院的精神」はいまだに頑固に残っているとして、それを「時代錯誤」と切り捨てます。
修道院を説くは沼沢を説くに等しい。その腐敗性は明らかであり、その澱(よど)みは不健全であり、その毒気は民衆に熱を病ましめ民衆を衰弱せしむる。
彼が嫌ったのは、「禁欲的閑居」でした。ですから、カトリックの修道院に限らず、彼の批判は仏教の托鉢僧やイスラム教の修行僧など、他の宗教のそれにも及びます。
この編の後半では、「無窮」つまり永遠なるもの、無限なるものをキーワードとして、やや難解な論証が続きます。要するに、修道院は「無窮」=神に祈ることを通して「至福」の境地に至ることを目指しているが、その方法は「犠牲」であり、それは「矛盾」であるとしているのです。
さて、ユゴーはこんなことまで言っています。
修道院は、ことに女の修道院は──なぜならば、現社会において最も苦しむものは女であり、。そしてこの修道院への遁世(とんせい)のうちには一の抗議が潜んでいるからして──女の修道院は、確かにある荘厳さを有している。
客観的な立場から、女性を社会の弱者として位置づけているユゴー。150年も前からそんなことを考えていた人がいたのです。
第七編 余談(岩波文庫第2巻p.251~p.272)
第六編で修道院について熱く語ったユゴーは、なお書き足りなかったと見えて、「余談」というタイトルをわざわざ付してさらに修道院について述べます。例によってしばしストーリーと離れて、ユゴーの「修道院論」を拝聴しなければなりません。もちろん、「余談」らしく、すっとばして読んでもかまわないでしょう。
ユゴーは「歴史、理性、および真理の見地よりすれば、修道院制はしりぞけられるべきものである。」と断じます。
修道組合が大なる社会組織に対する関係は、あたかも寄生木(やどりぎ)の樫の木におけるがごとく、疣(いぼ)の人体におけるがごときものである。その繁栄と肥満とは、国の衰弱となる。
…「イボ」扱いです。修道院が誕生した初期の頃には、有益だったかもしれないが、19世紀の今日においては「排斥すべきもの」となっているとユゴーは言います。特にカトリックが強いスペインの修道院については、「特に陰惨である」として、その建物のありようをさんざんこきおろしています。
さらに、「哲学や世の進歩にかかわらず」、19世紀においても「修道院的精神」はいまだに頑固に残っているとして、それを「時代錯誤」と切り捨てます。
修道院を説くは沼沢を説くに等しい。その腐敗性は明らかであり、その澱(よど)みは不健全であり、その毒気は民衆に熱を病ましめ民衆を衰弱せしむる。
彼が嫌ったのは、「禁欲的閑居」でした。ですから、カトリックの修道院に限らず、彼の批判は仏教の托鉢僧やイスラム教の修行僧など、他の宗教のそれにも及びます。
この編の後半では、「無窮」つまり永遠なるもの、無限なるものをキーワードとして、やや難解な論証が続きます。要するに、修道院は「無窮」=神に祈ることを通して「至福」の境地に至ることを目指しているが、その方法は「犠牲」であり、それは「矛盾」であるとしているのです。
さて、ユゴーはこんなことまで言っています。
修道院は、ことに女の修道院は──なぜならば、現社会において最も苦しむものは女であり、。そしてこの修道院への遁世(とんせい)のうちには一の抗議が潜んでいるからして──女の修道院は、確かにある荘厳さを有している。
客観的な立場から、女性を社会の弱者として位置づけているユゴー。150年も前からそんなことを考えていた人がいたのです。
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何とか4巻完全覚書めざしてがんばります。